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第3章 少女のSOSは、依頼となり、探偵を動かす。
74.勝てない相手と戦っても勝てないあなた達の必勝法は、勝てる相手に従うことじゃない?
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「あなた達の状況は、今、従っている人達に従っていても、全然良くならない。
今よりも悪くならないように、ずっと必死にならないといけない状況が続いていく。」
「虐げてくるだけの誰かに、ずっと従っているのは、辛くない?」
奈美と萃の会話に呆気にとられて、何も言わないでいる少女達。
「そこで、なんだけど。
従う相手を変えることは、もう試した?」
「従う相手、と、本気で言っているの?」
立ち止まった少女が、奈美と萃に確認してきた。
「これまで誰もあなた達を助けられなかったのは。
あなた達のしたことが、助けてくれる相手を探して、助けてもらおうとすることだったからじゃない?」
奈美の台詞に顔を見合わせる少女達。
「何が違うの?」
戻ってきた少女は、訝しげに尋ねる。
「あなた達を虐げてくる誰かに従っている状態のあなた達が、助けてもらおうとしたから、うまくはいくことはなかった、という話。」
「私達は、悪くないのに。」
立ち止まった少女が不満げに口を尖らせる。
「戦いは悪いとか悪くないとか、じゃないから。」
「食うか食われるか。」
「今、戦いって言わなかった?」
戻ってきた少女は、聞き間違いかと奈美と萃の台詞を確認した。
「戦って勝たないと、咀嚼されて、消化されて、そのへんの肥やしになる。」
萃は、食物連鎖の話をした。
「あなた達を助ける人は、あなた達を従えている誰かとあなた達の両方を相手にしないといけない。
あなた達を助けることに失敗してきた理由は、あなた達自身。」
「は?」
奈美のトークについていけず、立ち止まった少女は、は?を繰り返した。
「虐げてくる誰かに従うのを止めるとあなた達自身が決めて、あなた達を助けてくれる人に従うと決めたなら。
あなた達を助けてくれる人は、あなた達の相手をしなくても良くなるから、その分の負担が減る。」
萃が説明を始めると。
少女達は、顔を見合わせながらも、萃の話に耳を傾ける。
「あなた達を従えていた人にあなた達がプラスされた状態で、戦って勝つ方が、あなた達を従えていた人だけに勝つより勝ちにくくなるのは、おかしくない。」
「従う誰かを変更しても。
結局、誰かに従うことになるなら、今と一緒になる。」
戻ってきた少女は、悲観的な意見を出す。
「頭を押さえつけられて従うだけだったのが、従う誰かを選べるようになったんだから、これからは、選べば?」
「誰かに従い続けるなんて。」
立ち止まった少女も拒否感を漂わせた。
「強い者に従いたくないなら、虐げられながら従っているあなた達だけで勝てばいいだけ。」
「あなた達だけで勝てた?」
奈美と萃の追い打ちに、少女達は黙り込む。
「あなた達だけでは勝てなかったから、今、虐げられながら従っているんじゃない?」
「このまま何もしないで、虐げられながら従うだけの生活を一生続けたい?」
沈黙が流れる。
「どうやって、従う相手を変えればいいの?」
先に口を開いたのは、立ち止まった少女。
「今従っている誰かにどんな風に従っていたか、現状と事情を新しい相手に説明して、自分達を助けるとこんなにいいことがあると、新しい相手に訴えるのがいいんじゃない?」
「私達が従ったくらいで、私達が従った相手にいいことなんてあるわけがない。」
「どうして?」
「私達には、何もない。」
立ち止まった少女は、自信なげに目を伏せる。
「私達が従えば、いいことがありますから、助けてください、と助けてくれる人に言って、今よりも悪くなることは、ないとは言えない。」
戻ってきた少女は、一貫して用心深い。
「まるっと善意で助けてくれるのでなくちゃ、新しく従う相手を信じられないということ?」
奈美と萃は、顔を見合わせた。
「騙されたくなんてないから。」
萃は、小首を傾げてみせた。
「善意で助けてくれる人なんて、探してもいない。」
「そんなことは!」
「無辜の人達が、善意で助けるには、牡丹の庭中学校の校区の状況は悪すぎる。」
奈美は、人も死んでいる、と心の中で付け足した。
「善意は、長続きしない。」
なにはともあれ。
奈美と萃は、ポンポンと現状を伝えた。
「善意では、太刀打ち出来ない。」
「戦う強さは、善意じゃ作れない。」
「善ではなく、悪じゃないと勝てないということ?」
立ち止まった少女は、悪には悪をぶつけるの、と言いたげにしている。
「善意で助けてくれる人は、今あなた達が勝ちたい誰かに勝ってる?」
萃に尋ねられて、少女達は、返事に窮した。
「勝てない人の善意なんて、あなた達の状況をより悪くする。
あなたが全てに警戒している理由は、それじゃない?」
奈美に尋ねられた戻ってきた少女は、その通りだと頷く。
「それだけ、考えられるなら、警戒心を忘れないで、勝てる誰かに従ってみては?」
「勝てる誰かに従うのは、どうすればいいの?」
戻ってきた少女が乗り気になった。
奈美と萃は、ゆっくりと畳み掛けていく。
「知っていることを勝てる誰かに話して、判断してもらうのが一番早いと思う。
勝てる誰かが興味を持ったら、どんどん情報を出していけばいい。」
「あなた達は、勝ち馬じゃないから、誰も味方になろうとしなかった。」
「あなた達じゃ勝てなくても。
あなた達が新しく従う強い誰かが、今あなた達が従っている誰かに勝ったら、あなた達は勝ち馬に乗れる。」
今よりも悪くならないように、ずっと必死にならないといけない状況が続いていく。」
「虐げてくるだけの誰かに、ずっと従っているのは、辛くない?」
奈美と萃の会話に呆気にとられて、何も言わないでいる少女達。
「そこで、なんだけど。
従う相手を変えることは、もう試した?」
「従う相手、と、本気で言っているの?」
立ち止まった少女が、奈美と萃に確認してきた。
「これまで誰もあなた達を助けられなかったのは。
あなた達のしたことが、助けてくれる相手を探して、助けてもらおうとすることだったからじゃない?」
奈美の台詞に顔を見合わせる少女達。
「何が違うの?」
戻ってきた少女は、訝しげに尋ねる。
「あなた達を虐げてくる誰かに従っている状態のあなた達が、助けてもらおうとしたから、うまくはいくことはなかった、という話。」
「私達は、悪くないのに。」
立ち止まった少女が不満げに口を尖らせる。
「戦いは悪いとか悪くないとか、じゃないから。」
「食うか食われるか。」
「今、戦いって言わなかった?」
戻ってきた少女は、聞き間違いかと奈美と萃の台詞を確認した。
「戦って勝たないと、咀嚼されて、消化されて、そのへんの肥やしになる。」
萃は、食物連鎖の話をした。
「あなた達を助ける人は、あなた達を従えている誰かとあなた達の両方を相手にしないといけない。
あなた達を助けることに失敗してきた理由は、あなた達自身。」
「は?」
奈美のトークについていけず、立ち止まった少女は、は?を繰り返した。
「虐げてくる誰かに従うのを止めるとあなた達自身が決めて、あなた達を助けてくれる人に従うと決めたなら。
あなた達を助けてくれる人は、あなた達の相手をしなくても良くなるから、その分の負担が減る。」
萃が説明を始めると。
少女達は、顔を見合わせながらも、萃の話に耳を傾ける。
「あなた達を従えていた人にあなた達がプラスされた状態で、戦って勝つ方が、あなた達を従えていた人だけに勝つより勝ちにくくなるのは、おかしくない。」
「従う誰かを変更しても。
結局、誰かに従うことになるなら、今と一緒になる。」
戻ってきた少女は、悲観的な意見を出す。
「頭を押さえつけられて従うだけだったのが、従う誰かを選べるようになったんだから、これからは、選べば?」
「誰かに従い続けるなんて。」
立ち止まった少女も拒否感を漂わせた。
「強い者に従いたくないなら、虐げられながら従っているあなた達だけで勝てばいいだけ。」
「あなた達だけで勝てた?」
奈美と萃の追い打ちに、少女達は黙り込む。
「あなた達だけでは勝てなかったから、今、虐げられながら従っているんじゃない?」
「このまま何もしないで、虐げられながら従うだけの生活を一生続けたい?」
沈黙が流れる。
「どうやって、従う相手を変えればいいの?」
先に口を開いたのは、立ち止まった少女。
「今従っている誰かにどんな風に従っていたか、現状と事情を新しい相手に説明して、自分達を助けるとこんなにいいことがあると、新しい相手に訴えるのがいいんじゃない?」
「私達が従ったくらいで、私達が従った相手にいいことなんてあるわけがない。」
「どうして?」
「私達には、何もない。」
立ち止まった少女は、自信なげに目を伏せる。
「私達が従えば、いいことがありますから、助けてください、と助けてくれる人に言って、今よりも悪くなることは、ないとは言えない。」
戻ってきた少女は、一貫して用心深い。
「まるっと善意で助けてくれるのでなくちゃ、新しく従う相手を信じられないということ?」
奈美と萃は、顔を見合わせた。
「騙されたくなんてないから。」
萃は、小首を傾げてみせた。
「善意で助けてくれる人なんて、探してもいない。」
「そんなことは!」
「無辜の人達が、善意で助けるには、牡丹の庭中学校の校区の状況は悪すぎる。」
奈美は、人も死んでいる、と心の中で付け足した。
「善意は、長続きしない。」
なにはともあれ。
奈美と萃は、ポンポンと現状を伝えた。
「善意では、太刀打ち出来ない。」
「戦う強さは、善意じゃ作れない。」
「善ではなく、悪じゃないと勝てないということ?」
立ち止まった少女は、悪には悪をぶつけるの、と言いたげにしている。
「善意で助けてくれる人は、今あなた達が勝ちたい誰かに勝ってる?」
萃に尋ねられて、少女達は、返事に窮した。
「勝てない人の善意なんて、あなた達の状況をより悪くする。
あなたが全てに警戒している理由は、それじゃない?」
奈美に尋ねられた戻ってきた少女は、その通りだと頷く。
「それだけ、考えられるなら、警戒心を忘れないで、勝てる誰かに従ってみては?」
「勝てる誰かに従うのは、どうすればいいの?」
戻ってきた少女が乗り気になった。
奈美と萃は、ゆっくりと畳み掛けていく。
「知っていることを勝てる誰かに話して、判断してもらうのが一番早いと思う。
勝てる誰かが興味を持ったら、どんどん情報を出していけばいい。」
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