《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

526.オレは、クロードと生きていくのにぴったりな形を見つけました。もう、オレは、クロードと並ぶことに自信を持てなくなったりしません。

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この世界に来てからのオレは、オレの方が年上なんだから、クロードを引っ張っていかないと、と思っていた。

オレがしっかりしないと。

クロードが安心できるように、オレがなんでもしないと。

そんな風に思い込んで、オレは、オレ自身を追い込み、オレがクロードといる意味を見失いそうになったりした。

クロードに
『好きだから離れたくない、日本に帰らないでほしい』
と言われたとき。

オレは。

帰りたい気持ちと、オレを引き止めるクロードと離れることを天秤にかけて、帰らない選択をしたけれど。

もし。

クロードに
『好きなだけ日本に帰っていい。』
と快く送り出されていたら。

クロードが懸念した通り、日本から戻ってこなかったかもしれない。

全身全霊で、クロードに引き止められなかったら。

オレは。

クロードにしてやれることがないオレが、クロードの側にいる意味があるのかな?

クロードの役に立てないオレが、クロードといても。

と考えて。

クロードといることに自信を持てなくなっていたかもしれない。

日本にいるなら。

オレには、不安にならなくて済む居場所があった。

家族も友人もいて、仕事もあって。

ただ、クロードだけがいない。

好きな人は、そこにはいないけど、恋を終わらせてしまえば、何不自由なく、生きていくことはできた。

そう。

きっと、日本に帰っていい、とクロードに言われて、日本に帰っていたら。

オレは、クロードとの関係を一方的に終わらせていたんじゃないかな。

オレ自身の、弱さに負けて。

クロードは、オレをよく見ていた。

オレの尻も含めて。

オレを丸ごと愛していたクロードは、オレより、オレのことを理解していたように思う。

オレは、今。

実感している。

クロードとオレは、オレが考えていた形を逆にするのが、うまくいくんだ。

クロードは、オレを引っ張ったり、守ったりする。

オレは、クロードの守りを信じて突き進んだり、クロードのところまで引き返したり。

オレとクロードは、クロードとオレが二人で生きていくのに、ちょうどいい形を見つけた。

クロードが、オレに見つけさせてくれた。

最近のクロードは、オレに合わせる様子を前面に出してくれるようになっている。

いつでも。

どんなときも。

オレが好きに動けるように、と。

クロードは、見守りに徹してくれていたんだな。

オレが、オレらしく、クロードと自然体でいられる形を見つけるのを。

クロードより年上だから、とオレがオレを追い詰めて、クロードから逃げ出したりしないように。

クロードは、オレに愛をしていると伝え続けた。

オレは、もう、日本を懐かしく思うことはあっても、クロードのいない日本に帰りたいと考えることはない。

オレが、この世界で、クロードと生きていく覚悟を決めたのは、今よりも前。

オレは、覚悟を決めてからも。

どうしても、日本にいたときのことを考えてしまっていた。

クロードは、そんなオレを丸ごと受け入れてくれていた。

でも。

もう、日本を思い返したオレが、日本はああだった、こうだった、と、この世界と日本の違いを並べて、日本を恋しがる頻度はぐんと下がると思う。

的の真ん中にストンと矢が命中したみたいに。

腑に落ちた。

オレは、この世界での生き方を見つけられた。

見つけて、確立できた。

この国際会議で。

クロードと一緒にいることに不安にならない生き方を覚えたオレは。

もう。

大丈夫だ。

今度は、オレがクロードを安心させたい。

肩肘張らずに、クロードと並んでいられるところを見せよう。

「大公妃とシガラキノは懇意にされていたようだが?

大公が溺愛されている大公妃は、お知り合いが少なく社交に不慣れなご様子。

ケレメイン大公国へのサーバル王国の王侯貴族の立ち入りを認めないということは。

大公妃が、気楽に友人と会うこともままならなくなる。

大公は、溺愛されている大公妃を一人で国外に出そうとはされまい。

サーバル王国の王侯貴族のケレメイン大公国への立ち入りを禁止しては、大公妃の交友関係が寂しいものになりかねないだろう。」
とサーバル王国の国王陛下。

オレは、クロードの膝をつついて、話しに加わる。

クロードは、オレに膝をつつかれても平然としている。

「話し中、失礼。

オレのことを持ち出されたから、オレが話すぞ。

オレは、シガラキノ様が女王に即位する日をケレメイン大公国で楽しみに待っている。」

サーバル王国の国王陛下は、あてが外れたと感じたかもな。

「オレとシガラキノ様が会いたがっていると考えるのは、早計だなー。

オレもシガラキノ様も、まだまだ、国の顔になるために国でやることがあるからさ。

シガラキノ様が、明日にでも即位すればいい、などと言わないぞ?

オレはな。」

サーバル王国の国王陛下は、オレがクロードにとりなすと予想したのかなー。

オレは、『ケレメイン大公国で友達のシガラキノ様に会えるようにしてほしい』なんて、クロードにお願いしたりしないぞ?

「今代のサーバル王国の国王陛下がこの場での解決を先送りするなら、オレの出す答えは一つ。

サーバル王国の国王陛下の代と次代の王太子が即位されて王にたつ期間と。

シガラキノ様が即位されて女王として、ケレメイン大公国との交渉に取りかかり、妥結して、国同士の取り決めとして定めるまでの期間の全てで。

ケレメイン大公国は、サーバル王国の王侯貴族の入国を拒否する。」
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