《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

693.クロードの胸の奥に秘めていた覚悟と言葉に出来ないままでいた思いは、もうクロードが一人で抱えなくてもいいのだとオレは主張します。

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「クロードがご両親を大切にしていて、ご両親から大切にされてきたのは察していたぞ。

クロードが、我慢することなく、感情のまま動いたことが、ご両親に関することだったのは。

クロードとクロードのご両親の互いの愛情の深さの現れだとオレは思っている。」

ぽとり、ぽとりと落ちてきた水滴が、オレの頬を濡らす。

クロードは、声を出さないままだ。

こみ上げる思いが言葉にならないのかもしれない。

「なあ、クロード。

今、ようやく。

クロードが大事に思うものへの大事だという感情を抑え込まなくてもいい環境になった。」

クロードは、声を出そうとしたけど、声にならなかった。

オレは、クロードのキラキラと潤いをたたえた瞳を見上げる。

「クロード。

クロードが気を許す人が増えたことは、悪くないぞ。

クロードが大事にしたいもの、オレやご両親以外のことも、これからは表に出していけるようになっていくんだからな。

誰かを警戒しなくてもよく、秘めた思いを自制し続ける必要がない時間が得られたのは、クロードにとって僥倖じゃないかな?」

「ヒサツグ。

私の大切に思うものを知られることは、私とケレメイン家の弱みになってきた。」
とクロード。

「うん。クロードは、弱みを見せないために必死に戦っていたんだよな。」

マウンテン王国の王城で、孤立しながらも、引きこもらなかったクロード。

クロードは、考えなしにマウンテン王国の当時の国王陛下の言いなりになっていたわけじゃないんだよな。

一人で孤独に戦っていたんだ。

クロードが守りたいものを守るために。

だから、クロードは。

オレというクロードの絶対的な味方が出来たときに、王城に行かないという行動に出た。

大丈夫だぞ、クロード。

話せ。

オレは、クロードと一緒に見て、感じて、戦ってきたからな。

「私は、隠さずにはいられなかった。

本当に大事にしたいものを隠していれば。

誰にも見つかることがなければ。

暴かれることがなければ。

私が本当に大事にしているものが私から失われることはない、と私は強く感じていた。」
とクロード。

クロードは、正しかったぞ。

今まで沈黙を守った甲斐があったな。

それはそれとして、今一度、答え合わせをしておこうじゃないか。

「ケレメイン公爵家の王都邸からオレが出られないようにしたのは、オレを失いたくないと思ったからなんだよな?」

ケレメイン公爵家の王都邸を出ようと回数を重ねるほど、玄関の扉を出ようとした途端に戻される部屋がクロードの部屋に近づいていったからなー。

オレを逃さないためのトラップの凄さに、なかなかの恐怖を感じたな。

「私は、失うことが恐ろしかった。

失い続けた後に手に入れたヒサツグを失わずにいるためなら、私は何でも出来た。」
とクロード。

うん。

なりふり構わずというやつだよな。

オレがクロードに憧れの目を向けるのじゃなく、年下として接していたからこそ、オレ達は噛み合ったんだな。

溺愛は、溺れるほどの愛と書くもんな。

クロードは、オレを溺愛しているんだから、このくらいするよな。

「オレを失いたくないという気持ちのままに突っ走ったクロード。

オレを頼るクロードを心配したオレ。

オレとクロードの相性が抜群過ぎないかな?」

クロードは、オレの顔中にキスの雨を降らし始めた。

クロード、オレはまだ話し足りないぞ?

「魔王による消失でクロードがケレメイン公爵になった日から失われていた時間だろ?」

「私は、再び手にすることが出来た。

諦めるしかないと思い諦めていた時間が私に戻ってきた。」
とクロード。

「感情をあらわにする場所と時間がクロードに戻ってきたんだ。

クロードの粘り勝ちだぞ?」

「ヒサツグ。私の勝利とは?」
とクロード。

「ケレメイン公爵になって以来、クロードはずっと自制してきた。

今日は、気の緩みからオレを傷つける発言をしてしまった自分自身に戸惑い、自分自身を許せない気持ちと、それでもご両親を慕う気持ちに掻き乱されていたよな。」

「ヒサツグの言う通り。

祝言のお祝いを聞いたとき。

私は、私の気づかないうちに、私の心の中のたがを外していた。

そこからは、自制が働かなくなっていた。」
とクロード。

「なあ、クロード。

クロードは、自分自身の気持ちややりたいことにずっと自制してきたから、歯止めがかからなくなったんだ。

これからは、今までのように自制しなくてよくなった気がする機会も増えていくんじゃないかな?」

「クロード、安心しろ。

自制が利かなくなっても、クロードにはオレがいる。

クロードの自制がきかなくなって失敗しても、オレが隣で、手八丁口八丁で煙に巻いてやる。」

「ヒサツグ。私のヒサツグ。私の愛する私の家族。」
とクロード。

「これからは、オレと一緒に他の人にも自制のきかないところを見せていこう。」

「ヒサツグ?」
クロードは、きょとんとした。

「クロードが自制しない部分を見せる相手は、オレだけじゃない。

オレとクロードには、親族が出来たよな。

カズラくんのことは、十分巻き込んで、女神様には天井を突破するくらいに巻き込まれた後だからな。」

オレが、クロードを見上げて、ニッと笑うと。

クロードは、満面の笑みになった。

よし。

「そういうことだからな、クロード。」

オレは、クロードのはだけたガウンの紐をといた。

「しよう?」
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