663 / 673
第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
693.クロードの胸の奥に秘めていた覚悟と言葉に出来ないままでいた思いは、もうクロードが一人で抱えなくてもいいのだとオレは主張します。
しおりを挟む
「クロードがご両親を大切にしていて、ご両親から大切にされてきたのは察していたぞ。
クロードが、我慢することなく、感情のまま動いたことが、ご両親に関することだったのは。
クロードとクロードのご両親の互いの愛情の深さの現れだとオレは思っている。」
ぽとり、ぽとりと落ちてきた水滴が、オレの頬を濡らす。
クロードは、声を出さないままだ。
こみ上げる思いが言葉にならないのかもしれない。
「なあ、クロード。
今、ようやく。
クロードが大事に思うものへの大事だという感情を抑え込まなくてもいい環境になった。」
クロードは、声を出そうとしたけど、声にならなかった。
オレは、クロードのキラキラと潤いをたたえた瞳を見上げる。
「クロード。
クロードが気を許す人が増えたことは、悪くないぞ。
クロードが大事にしたいもの、オレやご両親以外のことも、これからは表に出していけるようになっていくんだからな。
誰かを警戒しなくてもよく、秘めた思いを自制し続ける必要がない時間が得られたのは、クロードにとって僥倖じゃないかな?」
「ヒサツグ。
私の大切に思うものを知られることは、私とケレメイン家の弱みになってきた。」
とクロード。
「うん。クロードは、弱みを見せないために必死に戦っていたんだよな。」
マウンテン王国の王城で、孤立しながらも、引きこもらなかったクロード。
クロードは、考えなしにマウンテン王国の当時の国王陛下の言いなりになっていたわけじゃないんだよな。
一人で孤独に戦っていたんだ。
クロードが守りたいものを守るために。
だから、クロードは。
オレというクロードの絶対的な味方が出来たときに、王城に行かないという行動に出た。
大丈夫だぞ、クロード。
話せ。
オレは、クロードと一緒に見て、感じて、戦ってきたからな。
「私は、隠さずにはいられなかった。
本当に大事にしたいものを隠していれば。
誰にも見つかることがなければ。
暴かれることがなければ。
私が本当に大事にしているものが私から失われることはない、と私は強く感じていた。」
とクロード。
クロードは、正しかったぞ。
今まで沈黙を守った甲斐があったな。
それはそれとして、今一度、答え合わせをしておこうじゃないか。
「ケレメイン公爵家の王都邸からオレが出られないようにしたのは、オレを失いたくないと思ったからなんだよな?」
ケレメイン公爵家の王都邸を出ようと回数を重ねるほど、玄関の扉を出ようとした途端に戻される部屋がクロードの部屋に近づいていったからなー。
オレを逃さないためのトラップの凄さに、なかなかの恐怖を感じたな。
「私は、失うことが恐ろしかった。
失い続けた後に手に入れたヒサツグを失わずにいるためなら、私は何でも出来た。」
とクロード。
うん。
なりふり構わずというやつだよな。
オレがクロードに憧れの目を向けるのじゃなく、年下として接していたからこそ、オレ達は噛み合ったんだな。
溺愛は、溺れるほどの愛と書くもんな。
クロードは、オレを溺愛しているんだから、このくらいするよな。
「オレを失いたくないという気持ちのままに突っ走ったクロード。
オレを頼るクロードを心配したオレ。
オレとクロードの相性が抜群過ぎないかな?」
クロードは、オレの顔中にキスの雨を降らし始めた。
クロード、オレはまだ話し足りないぞ?
「魔王による消失でクロードがケレメイン公爵になった日から失われていた時間だろ?」
「私は、再び手にすることが出来た。
諦めるしかないと思い諦めていた時間が私に戻ってきた。」
とクロード。
「感情をあらわにする場所と時間がクロードに戻ってきたんだ。
クロードの粘り勝ちだぞ?」
「ヒサツグ。私の勝利とは?」
とクロード。
「ケレメイン公爵になって以来、クロードはずっと自制してきた。
今日は、気の緩みからオレを傷つける発言をしてしまった自分自身に戸惑い、自分自身を許せない気持ちと、それでもご両親を慕う気持ちに掻き乱されていたよな。」
「ヒサツグの言う通り。
祝言のお祝いを聞いたとき。
私は、私の気づかないうちに、私の心の中のたがを外していた。
そこからは、自制が働かなくなっていた。」
とクロード。
「なあ、クロード。
クロードは、自分自身の気持ちややりたいことにずっと自制してきたから、歯止めがかからなくなったんだ。
これからは、今までのように自制しなくてよくなった気がする機会も増えていくんじゃないかな?」
「クロード、安心しろ。
自制が利かなくなっても、クロードにはオレがいる。
クロードの自制がきかなくなって失敗しても、オレが隣で、手八丁口八丁で煙に巻いてやる。」
「ヒサツグ。私のヒサツグ。私の愛する私の家族。」
とクロード。
「これからは、オレと一緒に他の人にも自制のきかないところを見せていこう。」
「ヒサツグ?」
クロードは、きょとんとした。
「クロードが自制しない部分を見せる相手は、オレだけじゃない。
オレとクロードには、親族が出来たよな。
カズラくんのことは、十分巻き込んで、女神様には天井を突破するくらいに巻き込まれた後だからな。」
オレが、クロードを見上げて、ニッと笑うと。
クロードは、満面の笑みになった。
よし。
「そういうことだからな、クロード。」
オレは、クロードのはだけたガウンの紐をといた。
「しよう?」
クロードが、我慢することなく、感情のまま動いたことが、ご両親に関することだったのは。
クロードとクロードのご両親の互いの愛情の深さの現れだとオレは思っている。」
ぽとり、ぽとりと落ちてきた水滴が、オレの頬を濡らす。
クロードは、声を出さないままだ。
こみ上げる思いが言葉にならないのかもしれない。
「なあ、クロード。
今、ようやく。
クロードが大事に思うものへの大事だという感情を抑え込まなくてもいい環境になった。」
クロードは、声を出そうとしたけど、声にならなかった。
オレは、クロードのキラキラと潤いをたたえた瞳を見上げる。
「クロード。
クロードが気を許す人が増えたことは、悪くないぞ。
クロードが大事にしたいもの、オレやご両親以外のことも、これからは表に出していけるようになっていくんだからな。
誰かを警戒しなくてもよく、秘めた思いを自制し続ける必要がない時間が得られたのは、クロードにとって僥倖じゃないかな?」
「ヒサツグ。
私の大切に思うものを知られることは、私とケレメイン家の弱みになってきた。」
とクロード。
「うん。クロードは、弱みを見せないために必死に戦っていたんだよな。」
マウンテン王国の王城で、孤立しながらも、引きこもらなかったクロード。
クロードは、考えなしにマウンテン王国の当時の国王陛下の言いなりになっていたわけじゃないんだよな。
一人で孤独に戦っていたんだ。
クロードが守りたいものを守るために。
だから、クロードは。
オレというクロードの絶対的な味方が出来たときに、王城に行かないという行動に出た。
大丈夫だぞ、クロード。
話せ。
オレは、クロードと一緒に見て、感じて、戦ってきたからな。
「私は、隠さずにはいられなかった。
本当に大事にしたいものを隠していれば。
誰にも見つかることがなければ。
暴かれることがなければ。
私が本当に大事にしているものが私から失われることはない、と私は強く感じていた。」
とクロード。
クロードは、正しかったぞ。
今まで沈黙を守った甲斐があったな。
それはそれとして、今一度、答え合わせをしておこうじゃないか。
「ケレメイン公爵家の王都邸からオレが出られないようにしたのは、オレを失いたくないと思ったからなんだよな?」
ケレメイン公爵家の王都邸を出ようと回数を重ねるほど、玄関の扉を出ようとした途端に戻される部屋がクロードの部屋に近づいていったからなー。
オレを逃さないためのトラップの凄さに、なかなかの恐怖を感じたな。
「私は、失うことが恐ろしかった。
失い続けた後に手に入れたヒサツグを失わずにいるためなら、私は何でも出来た。」
とクロード。
うん。
なりふり構わずというやつだよな。
オレがクロードに憧れの目を向けるのじゃなく、年下として接していたからこそ、オレ達は噛み合ったんだな。
溺愛は、溺れるほどの愛と書くもんな。
クロードは、オレを溺愛しているんだから、このくらいするよな。
「オレを失いたくないという気持ちのままに突っ走ったクロード。
オレを頼るクロードを心配したオレ。
オレとクロードの相性が抜群過ぎないかな?」
クロードは、オレの顔中にキスの雨を降らし始めた。
クロード、オレはまだ話し足りないぞ?
「魔王による消失でクロードがケレメイン公爵になった日から失われていた時間だろ?」
「私は、再び手にすることが出来た。
諦めるしかないと思い諦めていた時間が私に戻ってきた。」
とクロード。
「感情をあらわにする場所と時間がクロードに戻ってきたんだ。
クロードの粘り勝ちだぞ?」
「ヒサツグ。私の勝利とは?」
とクロード。
「ケレメイン公爵になって以来、クロードはずっと自制してきた。
今日は、気の緩みからオレを傷つける発言をしてしまった自分自身に戸惑い、自分自身を許せない気持ちと、それでもご両親を慕う気持ちに掻き乱されていたよな。」
「ヒサツグの言う通り。
祝言のお祝いを聞いたとき。
私は、私の気づかないうちに、私の心の中のたがを外していた。
そこからは、自制が働かなくなっていた。」
とクロード。
「なあ、クロード。
クロードは、自分自身の気持ちややりたいことにずっと自制してきたから、歯止めがかからなくなったんだ。
これからは、今までのように自制しなくてよくなった気がする機会も増えていくんじゃないかな?」
「クロード、安心しろ。
自制が利かなくなっても、クロードにはオレがいる。
クロードの自制がきかなくなって失敗しても、オレが隣で、手八丁口八丁で煙に巻いてやる。」
「ヒサツグ。私のヒサツグ。私の愛する私の家族。」
とクロード。
「これからは、オレと一緒に他の人にも自制のきかないところを見せていこう。」
「ヒサツグ?」
クロードは、きょとんとした。
「クロードが自制しない部分を見せる相手は、オレだけじゃない。
オレとクロードには、親族が出来たよな。
カズラくんのことは、十分巻き込んで、女神様には天井を突破するくらいに巻き込まれた後だからな。」
オレが、クロードを見上げて、ニッと笑うと。
クロードは、満面の笑みになった。
よし。
「そういうことだからな、クロード。」
オレは、クロードのはだけたガウンの紐をといた。
「しよう?」
60
あなたにおすすめの小説
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います
黄金
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻!
だったら離婚したい!
ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。
お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。
本編61話まで
番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。
※細目キャラが好きなので書いてます。
多くの方に読んでいただき嬉しいです。
コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
【完結済】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜
キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」
平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。
そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。
彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。
「お前だけが、俺の世界に色をくれた」
蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。
甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる