《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

文字の大きさ
662 / 673
第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

692.『私はヒサツグの夫。妻であるヒサツグの全てになら喜んでその責を負おう』と言えるクロードの胸の内を掻き乱したものについて語りましょう。

しおりを挟む
「オレは、クロードのオレへの愛を疑わない。

クロードは、オレを愛しているよな?

オレもクロードを愛している。

それだけじゃないぞ。

オレは、クロードに愛されている俺自身のことも好きだ。

クロードには、オレに愛されているクロード自身を愛してほしいな。」

「だが、ヒサツグ。私は。」
とクロードは、目を伏せた。

クロードが、クロード自身を許せないでいる理由は、分かる。

クロードのそれは、オレのせいでもある。

「クロード。

クロードは、オレとは違って、失敗しないように生きる必要があったよな?

ケレメイン公爵になってからずっと。

英雄クロードになったときも。

ケレメイン大公になってからも。」

「私の足場は、常に非常に不安定だった。

踏み外しては、何も守れなかった。」
とクロード。

クロードは、初めて今までの覚悟を吐露してくれた。

「クロード、今まで、ごめん。

オレや周りがカバーできるから、クロードの失敗ぐらい平気だ、と、オレは今日まで言ってやれなかった。

クロードにも、他の人にも。

オレは、クロードが失敗しないことを前提に考えたり動いたりしていた。」

「ヒサツグは、私といるために取り組んでいた。

私とヒサツグの目的は一つだった。」
とクロード。

そうは言ってもな。

クロード、オレは今、後悔しているぞ。

「明日目覚めたときもクロードと一緒の朝を迎えられるだろうか、と、綱渡りの日々を過ごしていたのは、オレとクロードと両方だったのにな。

クロードは、オレに不安を抱かせななかった。

オレは、クロードなら失敗しないと思い込んでいた。

クロードだって、ずっと不安を抱えていてもおかしくなかったのに。

オレに無条件の信頼で頼られている分、クロードは失敗出来ないでいたのに。

オレは、自分が失敗しても、クロードがなんとかしてくれるから大丈夫と考えていた。

オレは無責任だった。」

クロードは、頭を下げて、オレの鼻先にキスをしてから、鼻先を軽く噛んだ。

「ヒサツグがやりたいようにと望んだのは、私だ。

そう望んだ私がヒサツグの環境を整えるのは、私のためだ。」
とクロード。

そう言って、オレを丸ごと認めて包み込もうとするクロード。

「クロード。
オレは、今日から変わるぞ。

クロードに失敗の尻拭いを押し付けるようなことは、もうしない。」

クロードは、ちょっとだけ目を見開いた後、緩く首を横に振った。

「ヒサツグ。私は、ヒサツグの失敗を私に押し付けられたと思ったことはない。

私はヒサツグの夫。

妻であるヒサツグの全てになら、喜んでその責を負おう。」
とクロード。

クロードが。

オレのクロードが夫として完璧過ぎる。

「クロード。

クロードの男気が、弱かったオレを強くしてくれたとオレは思っている。」

オレもクロードに負けてはいられない。

「ヒサツグ。」
とクロードは、眩しそうにオレを見ている。

心意気が眩しいのは、クロードだぞ?

「だから、クロード。

クロードに男気を見せる機会をオレに寄越せ。」

「ヒサツグ?」
と不思議そうにするクロード。

「クロードは、何かをした後に失敗したと後悔してもいいんだ。

失敗するより、成功した方が、後々の手間も時間もかからない。

成功したら気分が良くて、その後は楽になる。

それは、オレも重々承知の上で話している。」

クロードの、オレを見つめる瞳に影がさす。

オレは、背中を預けた体勢からぐるっと半回転して、クロードに向き直った。

クロードのガウンの襟をつかんで、オレはクロードを見上げる。

「聞け、クロード。

成功がベストだとしても、クロードが失敗したらダメということは、もうないんだ。

失敗したら、失敗をカバーしながら、挽回していけばいい。」

「だが、ヒサツグ。」
とクロード。

クロードの今までの人生では、誰かに頼ること自体が難しいのかもしれない。

「オレ、クロード、カズラくん。祝言に参加したオレ達を支えてくれる皆。

クロードは、オレと頼ろう。

クロードは、オレごと頼るんだ。

オレは頼るぞ。

今まで通り。

いや、今まで以上に。」

クロードは、吹き出した。

「なあ、クロード。

失敗が許されない状況ではなくなったから、オレはこんな風なことが言えるんだ。

クロードが今まで頑張ってきたことの成果が出たんだ。

クロード。

よく頑張ってきたな。」

クロードは、はっとしてから嬉しそうに微笑んだ。

「私は、ヒサツグと一生一緒だ。」
とクロード。

そうだぞ?

クロード、今さらだぞ?

「オレもクロードも一人じゃない。

二人いるんだから、得意な方で役割分担したらいい。

オレとクロードは、支え合って生きるんだからな。

クロードは、オレを頼りに生きろ。」

「私のヒサツグの思うままに。」
とクロードは、オレを抱きしめた。

はだけたガウンの中に手を入れて、オレは体勢を立て直す。

今からは、クロードの感情についてクロードと考える時間だ。

「クロードは、クロードが失敗することの損失や、挽回の難しさを理解していたからこそ、失敗しないようにしてきた。

クロードが欲望をぶつけたり感情をさらけ出したりするのは、オレだけだよな。」

「ヒサツグは、私の伴侶で、私の家族だ。」
と肯定するクロード。

そうだよなー。

オレが気付いていたあることについて、クロードの自覚はあるかな。

「クロードは、クロード自身について気づいていたかな?

公務に関することで、クロードがオレに不満や不服、愚痴を漏らしたことはなかった。」

オレは確認してみた。

「私が公務について何かを言わないのは、当然だ。」
とクロード。

うん。
クロードには自覚があったな。

クロードの口からは、仕事について文句が出たことがない。

「クロードが感情のままに動いてご両親を求めたのは、さ。

公的な場じゃなかったからじゃないかな。」

クロードの行動を振り返って、クロードと分析してみる。

「祝言の部屋から人がいなくなったときに、気が緩んだかもしれない。」
とクロード。

クロードの同意が得られたな。

「オレ、カズラくん、女神様という身内で、内面を見せても大丈夫だとクロードが感じている面子しかいなかったから、クロードは感情のままに発言したのかな。」

「おそらく。」
とクロード。

クロードは、穏やかな気持ちで振り返りが出来ている。

いいぞ。

「クロードは、感情のままに動けたんだ。

オレ以外のことでもクロードが理性ではなく感情で動くことがあった。

それが、クロードのご両親だった。

オレは、あのときのクロードがあの振る舞いができたことを嬉しく思う。」

クロードは、驚きと困惑を混ぜた顔になった。

「私は、あのとき、ヒサツグのことを考えられていなかった。

父上と母上のことで頭がいっぱいになっていた。」
と話すクロードの言葉には、湿り気が含まれていく。

ご両親のこと思う気持ちは持ち続けても、ご両親については考える時間を作らないようにして生きてきたんだろうな。

考えたところで、魔王による消滅にあったご両親が戻ってくるという希望はなく。

ご両親に会いたい気持ちを表に出したら、弱みとして利用されかねない立場にいたクロードは、ご両親への感情を誰にも悟らせないように完璧に押し殺していた。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います

黄金 
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻! だったら離婚したい! ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。 お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。 本編61話まで 番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。 ※細目キャラが好きなので書いてます。    多くの方に読んでいただき嬉しいです。  コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。    

【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね?

MEIKO
BL
 【完結】伯爵家次男のマリンは、公爵家嫡男のミシェルの婚約者として一緒に過ごしているが実際はお飾りの存在だ。そんなマリンは池に落ちたショックで前世は日本人の男子で今この世界が小説の中なんだと気付いた。マズい!このままだとミシェルから婚約破棄されて路頭に迷う未来しか見えない!  僕はそこから前世の特技を活かしてお金を貯め、ミシェルに愛する人が現れるその日に備えだす。2年後、万全の備えと新たな朗報を得た僕は、もう婚約破棄してもらっていいんですけど?ってミシェルに告げる。なのに対象外のはずの僕に未練たらたらなのどうして? ※R対象話には『*』マーク付けます。

【完】ラスボス(予定)に転生しましたが、家を出て幸せになります

ナナメ
BL
 8歳の頃ここが『光の勇者と救世の御子』の小説、もしくはそれに類似した世界であるという記憶が甦ったウル。  家族に疎まれながら育った自分は囮で偽物の王太子の婚約者である事、同い年の義弟ハガルが本物の婚約者である事、真実を告げられた日に全てを失い絶望して魔王になってしまう事ーーそれを、思い出した。  思い出したからには思いどおりになるものか、そして小説のちょい役である推しの元で幸せになってみせる!と10年かけて下地を築いた卒業パーティーの日ーー ーーさあ、早く来い!僕の10年の努力の成果よ今ここに!  魔王になりたくないラスボス(予定)と、本来超脇役のおっさんとの物語。 ※体調次第で書いておりますのでかなりの鈍足更新になっております。ご了承頂ければ幸いです。 ※表紙はAI作成です

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

【本編完結】異世界で政略結婚したオレ?!

カヨワイさつき
BL
美少女の中身は32歳の元オトコ。 魔法と剣、そして魔物がいる世界で 年の差12歳の政略結婚?! ある日突然目を覚ましたら前世の記憶が……。 冷酷非道と噂される王子との婚約、そして結婚。 人形のような美少女?になったオレの物語。 オレは何のために生まれたのだろうか? もう一人のとある人物は……。 2022年3月9日の夕方、本編完結 番外編追加完結。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

令嬢に転生したと思ったけどちょっと違った

しそみょうが
BL
前世男子大学生だったが今世では公爵令嬢に転生したアシュリー8歳は、王城の廊下で4歳年下の第2王子イーライに一目惚れされて婚約者になる。なんやかんやで両想いだった2人だが、イーライの留学中にアシュリーに成長期が訪れ立派な青年に成長してしまう。アシュリーが転生したのは女性ではなくカントボーイだったのだ。泣く泣く婚約者を辞するアシュリーは名前を変えて王城の近衛騎士となる。婚約者にフラれて隣国でグレたと噂の殿下が5年ぶりに帰国してーー? という、婚約者大好き年下王子☓元令嬢のカントボーイ騎士のお話です。前半3話目までは子ども時代で、成長した後半にR18がちょこっとあります♡  短編コメディです

処理中です...