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恋敵
しおりを挟むそうこうしているうちに別の仲間もやってきた。
「エミ、捨てネコを拾ったって?」
「どれどれ、ねこちゃんはどこかな」
声の主は二人組の男子学生だ。そのうちの一人がいきなり僕を抱き上げた。
『やめてくれ―』
男にすりすりされた僕は、その気持ちの悪さから毛を逆立てる。なんとかごつごつの腕の中から逃れると、一目散に押し入れに逃げ込んだ。
「健司、おまえ猫にも嫌われたか」
「おい、湊、もとはなんだ!」
女の子たちはけらけらと笑う。
「エミ、子猫を拾って、飼いきれるのか?」
湊と呼ばれた男子学生は馴れ馴れしい態度でエミちゃんに話しかる。
「先輩、私の田舎にもネコがいるんですよ。だから大丈夫です。それに、凛太郎はとってもお利口さんなんですから」
エミちゃんに褒められたぼくは、嬉しくてニャーと鳴いた。それにしても僕のエミちゃんを呼び捨てするとは、どういう関係なのだろう。僕は押入れの隙間からそろりと盗み見た。態度はデカイが顔はイマイチと言いたいところだったが、悔しいかな、湊先輩のルックスは抜群。おまけに高身長のスポーツマン体型で非の打ち所がない。でも、男はなんだかんだといって見かけより中身が大切だ。そう思った矢先ーー
「湊先輩、岡田ゼミ、超難しくって、去年の論文はどうやって書いたんですか? 」と、モモちゃんが尋ねた。
「自分の身近なところから広げていくのがいいと思うよ。たとえば、ファッションの流行カラーはあらかじめ決められているとか」
「なるほど! それ、そのまま使っちゃおうかな」
「因みに湊先輩はどんなことかいたんですか?」と、アズリンも加わる。
「グローバリゼーションにおける国境、経済、エネルギー、それに宇宙開発競争をからめた」
女子たちの感嘆の声に僕はニャーと悪態をついた。
「凛太郎!」エミちゃんの澄んだ声が僕を呼んだ。「凛太郎、学校に行ってくるから、いい子でお留守番していてね」
そう言い残すと、エミちゃんと仲間たちはいってしまった。部屋の中に静寂が広がった。一人残された僕は押入れの隙間から飛び降りた。湊とエミちゃんの仲良くする姿をつい想像してしまった僕は、イライラとしながらシャンプーのいい香りが漂う枕の上で丸くなった。いくぶん落ち着きを取り戻し、苛立ちがマシになると、今度は寂しさが募る。ネコになったのはいいが、この先、僕はどうなるのだろう? 漠然とした将来への不安がよぎる。寿命だって人間よりうんと短いはず。あるいは、人間と同じくらい生きられるのだろうか。寿命が八十年と考えたら、残り六十三は年生きるわけで、そうなったら“化け猫凛太朗”に間違いなしだ。いや、待てよ、この先エミちゃんとあいつが結婚でもしたらーー。
僕がもんもんと考え込んでいると、どこからともなく携帯電話らしきバイブ音が鳴った。音はどうやらローテーブルの上から聴こえてきているみたいだった。もしや、エミちゃんの忘れ物だろうか? すっくと立ち上がった 僕はテーブルに向かってジャンプする。軽やかに着地したものの、上に置いてあった花瓶をひっくり返してしまった。テーブルが水浸し。焦った僕は、慌てて携帯電話をくわえると元いた枕へと引き返した。
枕の上に置いた携帯電話の色はネイビーブルーは、エミちゃんの電話じゃない。色から考えても、湊もしくはツレの健司のどちらかが忘れていったものだ。
「なんだ、野郎の携帯ならこのまま水没させたらよかった」
損した気分になった僕は携帯電をほったらかして再び枕の上で丸くなる。そういえば僕の携帯はどうしたのだろう? 恐らくネコになる以前は携帯電話を持っていた気がする。しかし、そもそも電話番号が思い出せなかった。気になった僕は、足元にある電話を肉球で触れてみた。無防備にもロックがかかっていない。僕は興味本位から携帯をさわりだした。
数時間後ーー
「凛太朗、いい子にしていたかな?」
エミちゃんが帰ってきた。ニャーと返した僕は玄関までお出迎えする。
すると後ろに野郎二人がいるではないか。僕はシャーと威嚇しながら押し入れへと逃げ込んだ。
「先輩の携帯あるかな? あぁー花瓶!」
「おまえの携帯、エミちゃんのベッドの上にあるけど?」
そうか健太が携帯を忘れていったのか。押入れの中から盗み見る僕は少しがっかりした。
「俺の携帯あってよかった……、ツーか嘘だろう!?」
「健司どうした?」
「あ、あのネコ、意味わかんねーー」
「だからどうした?」
「俺の携帯で、変顔していやがる」
「凛太朗が?まさか」エミちゃんのかん高い声が響いた。
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