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植物園に行こう! 2

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 しばし入り口で待たされたが、開園時間を狙って来たのが良かったのか、そこまで時間はかからずに中に入る事が出来た。
「早めに来ると、ここ混まないから。だから朝のあの時間に待ち合わせたのよ」
 そう、エセルが教えてくれた。こんな事もよく知っている人間がいてくれればこそ、だ。
 大温室の中は、まるで別世界のようだった。温かく、どこか湿った空気の中、煉瓦敷きの通路がうねるように続いている。
 その両脇に、これまで見た事もない植物が生い茂っていた。上からつり下げられた鉢からこぼれ出るようなもの、鋭い棘状の葉を持つもの、様々である。
「わあ……」
 特にルイザの目を引いたのは、鮮やかな色の花々だった。大輪の濃い色味の花は、やはりそこらで見られるものではない。
 形も変わっていたり、香りもひと味違うものがあったりする。これだけでもここに来た甲斐があったというものだ。
 これまで作った花飾りとは、また違うものが作れそうだ。休みで遊びに来ているというのに、ルイザの頭の中には次の仕事の事が浮かんだ。
「こら」
 その一言と共に、軽く頭が叩かれる。誰かと思えばエルヴィラだった。型紙担当の彼女とは、あまり仕事で関わる事がない。
 さすがに細かい飾りになると、再現性に問題が生じる場合があるので、飾りといえど型紙を起こしてもらう時もあるが、それとてそう回数があるわけではない。
 それに彼女は同じ型紙担当のマキシーンと一緒にオーガストに付いて客先を回る事が多く、あまり工房にいない為に話す機会もまれだった。
 そのエルヴィラが苦笑したような顔でこちらを見ている。
「今仕事の事考えていたでしょう?」
「! どうして」
「そんな顔してたから」
 そういうとエルヴィラはクスクスと笑い出した。
「だめよ、ここには遊びで来てるんだから、仕事の事は忘れなきゃ」
「でも……」
「参考にしたければ、また別の時に来ればいいわ。植物園は逃げないわよ?」
 そう言われて、ルイザもそういえばそうだと思った。店から植物園まではそんなにかからない。乗り合い鉄馬車でも使えば、本当に楽に来られる距離だ。
「オーガストさんも参考にしに、ここに来る時があるんですって」
「え? そうなの?」
「内緒よ」
 そう言って笑うエルヴィラは、エセルとはまた違う意味で『お姉さん』という感じがした。
 ルイザは一人っ子だったし、近所には同い年や年下の子はいても、年上の同性の子はあまりいなかった。
 グレアムは二歳年上だったが、異性なので数えていない。神殿学校に入ってしまえば年上もいるにはいたが、その年頃の少女達はグレアムの事でルイザを目の仇にする事の方が多かった。
 ──思えば『お姉さん』とか思える人って、いなかったな……
 しっかり者という意味では同い年で幼なじみのフェリシアが当たるが、彼女の場合は『しっかり』の部分が特殊過ぎるので『姉』という括りには入らない。
 当のフェリシアの方は、どこかルイザを妹扱いしている部分があったが。同い年とはいえ、月齢で半年も違えば子供の頃は大きな差だ。
 だがルイザの場合は中身が中身である。正確に前世を思い出したのは、物心がついてからゆっくりとだったが、今ではしっかりと前世三回分の記憶を思い出している。
 おかげで『少し年上』程度ではお姉さんとは思えなかった。
 ──でもエルヴィラとかは違うよねー
 エルヴィラは『お姉さん』と読んでも差し支えない存在だ。それは工房内でもそうだった。年齢的には確かにルイザよりは上だが、それだけではない何かがある。
 エセルも十分姉的存在なのだが、彼女の場合は『お姉さん』というよりは『姉御』と呼びたいくらいだ。

 そんな事を考えながらエルヴィラと歩いていると、前方で何やら声が聞こえてくる。見て見れば、メリンダとアグネス、それにエリノーラがいる。その彼女達を囲むように、三人の男達がいた。
「ほんの少しお茶飲むだけだからさあ」
「ここで出会ったのも何かの縁だし」
「ちょうど人数もあってるし」
 などと声をかけられていた。にやけた顔の男達とは対照的に、メリンダとアグネスは困り顔だ。エリノーラの方はといえば、平然として男達を見上げている。彼女の身長では大概の男性は見上げる事になるだろう。
「……何あれ」
「あらあら、誘われちゃってるのかしら」
 呆然とするルイザとは対照的に、エルヴィラはどこかのんびりと成り行きを見守っている。
「え? あれ、放っておいていいの?」
 明らかにこのままでは困った状態になるのではないだろうか。
「大丈夫よ。見ててご覧なさい」
 そうエルヴィラが言うが早いか、エリノーラがにっこりと声をかけてきた男性陣に微笑んだ。
 それに脈ありとみたのか、男達も相好を崩す。だが次の瞬間、彼女の口から出た言葉は彼らの予想を遥かに超えていた。
「あらあら、人妻に声をかけるなんて、困った坊や達ねえ」
「ひ、人妻あ!?」
 男達は異口同音でそう叫んだ。エリノーラはメリンダとアグネスを、その小柄な体の後ろに隠すようにしている。
「ええ、そうよ。ちなみにうちの主人は道具街にいるマーティン・ラブキンというの。ご存じかしら?」
 そのエリノーラの一言に、男性陣はまるで雷にでも打たれたような衝撃を受けていた。離れて見ていたルイザにもわかる程である。
「マ……マーティン・ラブキン? あの武器職人の?」
「元見回り組総纏めの?」
「あら、知ってるのね」
 エリノーラの笑顔とは対照的に、男性陣の方は顔色をなくして後退り始めている。それを見て、エリノーラはさらにだめ押しとばかりに付け加えた。
「うちの人、すーっごくやきもち焼きなの。女房の私が余所の男と一緒にいる、なんて知ったら……」
「す、済みませんでした!!」
 男性陣は声を揃えて謝ると、脱兎の如くその場から駆けだした。しばらくはぽかん、とその走り去る姿を見ていたが、やがてエリノーラだけでなく、ルイザの隣にいたエルヴィラまでクスクスと笑い始めている。
「エリノーラの旦那さんは、王都でも知らない者はいないってくらいの強面で有名なのよ。本当はすごく優しい人なんだけどね」
 そう隣に立つルイザに説明しながら、エルヴィラはエリノーラ達の方へ足を向けた。
「相変わらず鮮やかね、エリノーラ」
「やだ、エルヴィラ、見てたの?」
 エリノーラは少し眉尻を下げて、困ったような表情になっている。それに対してエルヴィラは軽く微笑んだ。
「偶然よ。ルイザと……ね?」
「へ!? う、うん……」
「なんだか恥ずかしい所見られちゃったわね」
 そう言いながらも、のんびりとしているエリノーラに、かばってもらった形のメリンダとアグネスが凄い勢いで褒め称えた。
「そんな事ないよ!」
「そうよ! エリノーラのおかげで私達助かったんだから!」
「あら、私は何もしてないわよ。せいぜい旦那の威光を借りたくらいかしらね。それに……ああいうのも一応、出会いになるかも知れないし」
「あんな相手、こっちから願い下げです!」
「顔にしまりのない男は信用するなってばあちゃんに言われてるんだ!」
「あの三人、しまりなかったわよね!?」
「ねー!」
 メリンダとアグネスは、安心出来たせいか早口にそうまくし立てている。いい息のあい方だった。
 ルイザより少し上程度の二人だが、その勢いにはルイザも普段から押されっぱなしだ。当然今も口を差し挟む隙などありはしない。
 その二人にエリノーラはにこりと微笑んだ。
「まあ、今回の事でばかな事する人はいなくなるでしょう。ていうかまだああいう事する子達がいるとは思わなかったわ」
「どこにでもバカはいるものよ」
 エルヴィラの辛辣な一言が飛んだ。
「本当にねえ」
 頬に手を当ててほう、っと溜息をつくエリノーラは、普段とは少しだけ違って年相応に見える。
 工房の仲間に共通していえる事だが、年齢不詳が多すぎると、常々ルイザは思っていた。
 目の前のエリノーラもその一人で、一見するとルイザと同年代程度に見える。その実八歳は上で、先程の話にもあったように既に結婚している。
 子供はまだで、今日はご主人からの『ぜひ行ってこい』という言葉に送り出されてきたそうだ。
「でも知らなかった……エリノーラの旦那さんがそんなに有名だなんて」
 ルイザの一言に、エリノーラとエルヴィラは目を見合わせて笑った。
「まあ有名って言えば有名ねえ」
「変な方でね。うちの亭主、昔は工房の傍ら見回り組をまとめてたりしたのよ。その前は手の付けられないやんちゃ坊主だったんだけどね。亭主の父親の仕事で知り合ったある騎士様に根性叩き直されたのよ。それ以来まじめに仕事して、見回り組の任も引き受けて、で、今に至るって訳」
 見回り組とは国軍の下部組織に辺り、普段の市井の治安維持の為に活動している組織である。そこを纏めていたというのなら、腕には相当自信があるのだろう。先程の男達が逃げたのは頷ける。
「その見回り組の時にもいろいろ伝説作ってね。そこいらにいた悪ガキ共をまとめて躾直して、そのまま見回り組に入れちゃったりもしてたのよ」
「本当、あの頃が一番大変だったわねえ」
 当時を思い出すようにエリノーラがどこか遠い所を見るような目になった。
「エリノーラはそれ、旦那さんから聞いたの?」
「あら、いいえ。見て知ってるのよ。亭主と私、幼なじみなの」
 ルイザの胸が一瞬、つきりと痛んだ。幼なじみで結婚して夫婦に。あのままでいれば、自分もそうだったかも知れない。そうしたら、ここ王都にも出てこなかっただろう。
 そんなルイザの胸中など知りはしないエルヴィラとエリノーラは、そのまま話を続けていた。
「旦那さんが真人間になって真っ先にしたのが彼女への求婚だったんですって」
「当然うちの父も亭主の前を知ってるから、来た最初は外に叩き出されてたわよ。うちの父も荒いから」
「でもそれにめげずに通ったんでしょ? それでお父様からの承諾を勝ち取ったのよね?」
「勝ち取ったっていうか……私を賭の対象にしたっていうか……」
 エリノーラのその一言で、アグネスとメリンダが食いついてきた。
「え? 何それ!?」
「聞きたい聞きたい!」
「エリノーラの話って、普段全然聞けないし!」
「ルイザだって聞きたいよね!?」
 二人にいきなり聞かれて、反射のままつい頷いてしまった。それにエリノーラは少し苦笑し、賭の内容を教えてくれた。
「結婚の申込みに、本当に日参したのよ、亭主ったら。で、ある日うちの父が、飲み比べで自分に勝てたら娘をやるって」
「えー、何それ?」
「お父さん横暴」
 顔をしかめる二人を見ながら、ルイザは違う感想を抱いていた。おそらく、エリノーラの父親の、それは建前だったのではないだろうか。
 元々幼なじみというのなら、エリノーラの父親も相手を子供の頃から知ってるはずだ。何が原因で『やんちゃ』になったのかまではわからないが、原因があるのなら、それすら知っていたかも知れない。
 だから、仕事をまじめにするようになり、申込みに日参する姿から、彼なりの誠実さを感じたのだろう。『賭』とやらは、素直になれない父親が、承諾するための手段にだったのだろうと思う。
 ルイザはふと、亡くなった自分の父親を思い出した。父も生きていて、グレアムが勇者にならなければ、同じような事をしただろうか。
「父にしてみれば、それが最大の譲歩だったのね。で、見事亭主は賭に勝って、私と結婚したって訳」
「旦那さんの愛よね!」
「愛だわ!」
 アグネスとメリンダは目をきらきらさせてそう言った。まだまだ恋にも結婚にも夢たっぷりの年だ。彼女達の反応は当然といえるだろう。
 むしろこうした話にのれないルイザの方が年頃らしくない反応といえた。正直まだ新しい恋も、まして結婚などは考えたくもない。王都へは一人で生きていく為に来たのだ。
 エリノーラはメリンダとアグネスににっこりと笑いかけて、目の前で両手のひらをぱん、と合わせた。
「さ、私の話はこれでおしまい。せっかく植物園に来たんだもの、楽しみましょう」
「十分楽しんでまーす!」
「恋愛話は最高よね!」
 そんな二人を苦笑しながら見つめる三人だった。

 大温室には中央に人工池があって、睡蓮が綺麗に咲いていた。水の上に浮かぶ花は、それだけでどこか浮世離れしたものを感じさせる。
 アリスンはここの睡蓮が好きだった。例に漏れず気が向くとこの植物園に来る彼女は、いつも大温室のこの睡蓮だけ見て帰る事もある。
「あら、またここ?」
 声に反応して顔を上げれば、池を挟んで反対側にマキシーンがいる。大温室に入ってからは、なし崩しに解散状態になっていたが、広いと言っても限られた場所だ。すぐに顔を合わせるのは当たり前だ。
「好きね、睡蓮」
「そうね……私もこんな風でいたいって思うからかしら」
「睡蓮?」
「そう」
 野の花になるよりは、こうして水に浮かぶように咲く睡蓮でありたい。それはアリスンがずっと持っている思いだ。
 何がどう違うのか、理屈で説明は出来ない。だが彼女にとって、大温室のどの花とも、睡蓮は違うものだった。
 もちろん植物園のどの花と比べてもだ。自分は土に根ざす事が出来ない。もちろん睡蓮だって、水の下の土に根を張っているのだが。でもそれは、水に潜った人間にしか、見えない。
「まだ自由に回っていても構わないわよね?」
 アリスンは睡蓮から目を話さずに隣に立ったマキシーンに聞いた。特にそれを咎めるでなく、マキシーンも睡蓮を見ながら答えた。
「大丈夫じゃない? どうせお昼になってお腹がすけば、誰かしらが声かけに来るんじゃないかしら」
 特に決めて解散した訳ではない。昼も自分の分は自分で持ってきている。子供ではないのだから、帰ろうと思えば一人で帰る事も出来る。
「じゃあ呼びに来るまでここにいるわ」
「そう」
 軽く頷くと、マキシーンはまた別の方へと歩いていった。その背を横目で見送りながら、彼女は余計な詮索を一切してこないから気が楽だ、と思っていた。
 工房の中では、特に人の好き嫌いは発生していない。やかましいと思うエミーだって、仕事となれば頼れる同僚だ。
 だが中でも特に付き合い易い人間というのは、どうしたって出てくる。アリスンにとって、マキシーンは付き合い易い人間の一人だ。
 彼女にああ言っておけば、これからすれ違う仲間にさりげなく伝言してくれるだろう。そういう所は外さない人だ。
 アリスンはまた外界を遮断して池の睡蓮に見入る事にした。

「いーい? 効率よく回る為にも、ここは協力するべきだと思うのよね」
 エミーは拳を握りしめて切々と訴えた。
「大体さー、夏のこの時期でないとアイスクリームの屋台は来ないのよ? これを見逃す手はないわよね? それに、園内にはまだいくつか攻略してない屋台もあるし、この夏から新しく入った屋台もあるのよ」
「さすがエミー、情報早いわね」
 マリアンは半ば呆れたような、感心したような声で呟いた。エミーを中心に固まった一団は、実は食べるのが大好きという面々である。
「新しい屋台と言えば、『サマンサ』のパイの屋台が出てるのよね!?」
「ちょっと! それ本当? レベッカ」
 レベッカの発言に、エミーは食いついた。聞き捨てならない情報だったのだ。『サマンサ』と言えば、今王都で一、二を争う人気のパイ菓子の店である。そこが新しい屋台を出すというのだ。
「うん、本当。この間こっそり聞いちゃったんだー。この夏から出店する店の一つなんだって」
「場所は?」
「ここから真向かいに当たるチューリップ畑の方よ」
 そう言って案内図を指さした。ただしその部分は季節によって花が植え替えられる場所なので、夏の今現在チューリップが植わっているとは考えにくい。
「うぬう……予定を立て直さないとならないわね……」
 そう言いながらエミーは手にした冊子を広げる。植物園の案内図だ。入り口で誰でももらえる代物だが、エミーのそれは大分年季が入っている。
 見れば細かい文字で、お菓子の名前が書き込んである。その場にある屋台で扱っている商品の名前のようだ。
 それも何度か二本線で消されて書き直された部分もある。屋台が入れ替わった部分だ。
「なるほど……ワッフルの店がなくなったんだな」
 案内図とにらめっこのエミーの言葉に、ああ、と周囲が頷いた。エミーはさっそくワッフルの屋台の文字を消し、持っていたペンで『パイ』と書き込んだ。
「あの屋台すっごくまずかったもんね」
「あれでワッフルだなんて、冒涜もいいところよ」
 メイジーとマリアンはお互い眉根を寄せて言い合っている。焼きすぎのせいか全体的に固く、しかも粉っぽさが残ったままだったので、四人には不評な代物だったのだ。
 今回入れ替えの対象になったと言う事は、他の人にも不評だったのだろう。
「あれはなくなって正解だわ……」
 うんうんとうなずき合う四人。
「……と、言う訳で、新屋台はパイとクレープとシャーベット、あともう一つアイスクリームでいいわね? 残るは定番って事で」
「え? シャーベットなんてあるの?」
「ふっふっふ。なんと『月の庭』がこの夏限定で屋台を出すのよ。しかも今日から! そこで扱うのがシャーベットなの」
「ええー!?」
 情報をもたらしたエミー以外の三人が声を張り上げる。それを見てエミーは満足気ににんまりと笑った。
 この四人は工房では特によくしゃべる仲という訳ではないが、お互いの持っている情報を交換し合う仲ではあった。
 情報、それは王都の新しいもの、特に食べ物系の情報である。工房の中でも情報通で知られるエミーはともかく、他三人の情報もなかなか侮れない。
 特に甘い物関連は女性だからか、情報収集にいとまがない。それぞれ得意の分野を持っていて、それをお互いに交換しているのだ。
 ちなみに先程出てきた『月の庭』というのは、王都でも最近有名な食堂で、特に甘味に力を入れている店のせいか、連日女性客で賑わっている。
 そこが今日から屋台を出すのだ。一体エミーはそんな情報をどこから仕入れてくるというのか。
「でもどうして今日からなのかしらね?」
「そうね……どうせなら聖マーティナ祭から始めれば、人も多く呼べたでしょうに」
「なんでもちょっとした実験なんだって。店の中でも若手だけで集まって、表向き店の名前を出さないって条件で屋台を出すんだそうよ」
「へー」
 工房にいるとあまり感じないが、職人の世界は実力もさることながら、結構な年功序列が発生する。
 それには、技術習得に時間がかかるという面も含まれてはいるが、単純な古くからの慣習という面もまだ残っているのだ。料理人の世界は特にそうなのだろう。
 今回の屋台も、そんな年功序列に阻まれている若手達が、自分たちの力を試したくて起ち上げた企画だ。
 エミーはそれを当の若手の職人から聞いて知ったのだが、他言しないという約束なので、ここでは話せなかった。
「だから店の名前は一切出してないの。あんたたちも、これはこの場だけの秘密にしてね」
「わかった」
 言われた三人は素直に頷いた。
「さ! じゃあどう回るのが一番効率いいか、検討しましょう」
 エミーのその一言に、三人は彼女の持つ年期の入った案内図に見入った。
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