「何気ない日々にちょっとしたスパイスがあると、人生楽しくなると思うけど」

藍月

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 「君さ、本、好きなの」
 
 「全然。一年に一冊程度でしか本読まないよー」

 「じゃあさ、好きでもないのに、何で図書委員会に入ったわけ?」

 「どの委員会に入るかは、私の自由よ。なにに入ったっていいじゃない」 

 「で、君は何でついてきているの?」

 桜木さんはニコッと笑った。

 「それも私の自由」

 僕はため息をついた。

 一限目の委員会決めで、桜木さんが、図書委員になることが決定した。僕たちの学校では、一年間、同じ委員会に所属することになる。学年ごとに、それぞれの委員会に入る人数が決められている。しかし、僕たちのクラスは、その人数より一人多いため、図書委員を二人にして良いということになった。

 僕が図書委員になることが決まると、桜木さんも図書委員がいいと言い出し、それまでボランティア委員会に入る予定を、急に変えたのだった。

 「ところでさー、今日、お昼学校で食べなかったじゃん」

 突然話題を変えられても、なんと言えばいいのかよくわからない。

 彼女は僕の返事を待たずに話を進めた。

 「一緒にさ、どっかでご飯食べない?」

 突然何を言い出すんだ、この人は。

 「え、普通に嫌」

 「えー、見ての通り、私に今、友達いないんだよねー」

 「そんなこと、僕に関係ない」

 「もう、冷たいな~せっかく私たち友達になれたのにー」

 「は?なに勝手に僕と君を友達にしてんの」

 「そんなことで怒らないでよ」
 と言いながら少し笑う彼女。

 僕はちっとも笑えなかった。僕は、理由もなく友達をつくらなくなった訳ではない。ちゃんとした理由があるんだ。もうやめてくれ。

 「いい。僕は、友達なんか欲しくない。だから、僕に話しかけないで」

 僕は彼女にそう言い捨てて、さっさとひとりで歩き、彼女を置いてきぼりにした、


 つもりだった。

 「ねぇ、君が友達を欲しくない理由はなんだか知らないけど、とりあえず私のこと避けないで。私、君も知ってるだろうけど、今日転校してきたばかりで、一緒にいられる人がいないの」
 彼女はいつの間にか僕に追いついていて、僕の隣を小走りでついてきながら話しかけている。
 
 でも僕は、無視してもっとスピードをあげて歩いた。

 「こんな時に言うのも何だけど、何気ない日々にちょっとしたスパイスがあると、人生楽しくなると思うよ」

 この人、急に何を言っているんだ。僕はまた無視をして、もっとスピードをあげて歩いた。

 「普段とはちょっと違うこと、謂わばスパイスがあると、きっともっと楽しい生活を送れるようになるよ」

 僕は立ち止まった。彼女は僕より数歩先のところで止まった。

 「ふざけるな」

 僕がやっとの思いで出した言葉だった。

 「何良いこと言ってるみたいな感じで、偉そうに喋ってるんだよ」

 少しでも言ったらもう、止まらない。次から次へと、言葉が僕の口から溢れ出る。彼女は驚いたような顔でこちらをみている。

 「何が『何気ない日々にちょっとしたスパイスがあると、人生楽しくなると思うよ』だ。何偉そうに言ってんだよ。僕の、僕の事情も知らないくせに・・・!」

 「え・・・」

  彼女は思わず、こんな声を出したよう思えた。実際は、わからない。あまりにも僕が興奮していて、周りの音なんて聞こえなかったからだ。

 「君、さっき言ってたよな?『一緒にいられる人がいないの』って。その後に、説教みたいなことを言って。どうせあれだろ?誰かと一緒にいたくて、でもそういう人がいないから僕を使おうとしたんだろう?昨日会って面識のある僕なら、一緒にいてくれるだろうって。でも、無理そうだったから、相手を納得させるようなこと言って、僕をつろうとしたんだろ?そういうところが、醜いから、僕は人間が嫌いなんだ・・・!」

 この時のこと、僕は反省してる。最後の一言はいらなかった。まぁ、彼女はそこについてこの時は何も言ってこなかったけど。さりげなく僕は、自分のいわない方が良い本音を漏らしてしまった。

 驚いたことに、彼女は少し微笑んだ。そして、僕に近づいてきた。

 「君さ、こうやって誰かに怒りをぶつけること、ひさしぶりでしょ」

 僕はその言葉を聞いたとたん、恥ずかしくなった。道端で怒りをまき散らす僕。想像しただけで嫌になる。

 「まぁ、君の言ってたこと、あってると思うよ。確かに私は、君を誘い出そうと思って説教じみたことをした。君をつろうとした。自分のことだけのために。ごめんね」

 素直に謝られて、僕はだんだんこの事がばからしく思えてきた。

 「僕も、ごめん・・・突然怒ったりして」

 「いいの。もうこの事は解決したんだから」

 「ところでさ、涼くん」

 「何?」

 突然名前で呼ばれて、僕は驚いた。

 彼女はニコッと笑って言った。

 「涼くんさっき、昨日私たちが会ったこと、認めてたよ」

 「あ・・・やらかした」
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