「何気ない日々にちょっとしたスパイスがあると、人生楽しくなると思うけど」

藍月

文字の大きさ
5 / 35

2ー3

しおりを挟む
 「・・・とまぁ、そんな感じ」

 「その後はどうなったの?」

 「どうなったって・・・あぁ、それから、僕が昨日みたいに脅したら、きくようになったかな」

 「なんか・・・すごいね」

 「はぁ・・・ありがとうございます・・・?」

 僕は、てっきりこの話を聞いて、彼女が笑うと思っていた。僕が本当に警察に電話したところとかで。でも、彼女は全く笑わなかった。予想外で、なんとなく気まずい。

 でも、気まずいと思っていたのは僕だけではなかったようだ。彼女も無言で、辺りはとても静かになった。

 「じゃあ、そろそろ帰・・・」

 僕が言いかけたその時、とんでもなく大きな音がした。本当なら、そんなに大きい音ではないのだろうが、静かなところで鳴ると、とても大きい音に聞こえる。

 「うわぁ!!!!」

 僕は思わず大きい声を出してしまった。

 真向かいにいる彼女は、そんな僕を見てクスッと笑った。

 そして、彼女はまだ大きな音で鳴っているスマホを見た。次の瞬間、彼女は顔を強ばらせた。彼女はスマホの音が鳴る部分を手で抑えて、音を小さくした。しばらくすると、音は消えた。

 「どうしたの?大丈夫?」

 僕がきくと、彼女は笑顔で言った。

 「大丈夫だよ」

 だが、その『笑顔』は、無理矢理つくっているとしか思えなかった。



 支払いを済ませて(彼女が今日は無理につき合わせちゃったから、僕の分も払うと言って引かなかったので、僕は無料で昼食を食べたことになる)、僕たちは店を出た。

 「おいしかったし、楽しかった~!」

 笑顔でそう言う彼女だが、その『笑顔』はさっきと同様に無理矢理つくっているとしか思えない。

 「本当なら、この後一緒に買い物でもしたかったけど、悪いからさすがにやめよっかな~」

 「別に、いいけど。僕、新しく本を買いたいんだよね」

 「おや?もしかして涼くん、さっき楽しかったかな?」

 「いや、別にそんなんじゃないけど」

 こんなことを言っているが、僕は、本当は、ちょっとだけ楽しかったと感じていた。誰かとこんなにたくさん、楽しく、話をしたのは一体何年ぶりだろう。

 「え~、ホントは楽しかったんじゃないの~?まぁ、いっか!じゃあ、最初に本屋さんにレッツ・ゴー!」

 嬉しそうに隣を歩く彼女には、先ほどの暗い感じがきれいさっぱりなくなっていた。僕も安心して、彼女と一緒に歩いた。


 「って、え?ここどこ?」

 僕がここがどこか知らないと気がついた時は、二人で歩き始めてだいぶ経った頃だった。何となくで彼女に付いていったが・・・まさかこんな事になるなんて。

 よくよく考えたら、彼女は今日僕たちの学校に転校してきたばかりだから、ここらへんの道を知らなくて当然だ。あぁ、なにやっているんだ、僕・・・ちゃんと道を見ながら歩けばよかった。こんな年で迷子だなんて・・・

 「大丈夫だよ。私、今ナビ見ながら歩いてるから。もうちょっとで着くよ」

 「いやっ、こんなに遠くなくてよかったよ。あのハンバーガー屋の近くに本屋あったのに・・・」

  「あそこの本屋さん、規模そんなに大きくないじゃん?本とか漫画とか買いたいなら、今向かってる所の方が、断然いいんだよねー」

 「・・・なんでそんなに知ってるの?」

 ここに来たばかりのはずなのに、なぜ知っているのだろう。しかも、僕は彼女の言う大きい本屋は知らない。いつも、あのハンバーガー屋の近くにある本屋に行っているのだ。

 「私、ここに来たばかりじゃないんだよね」

 「え?」

 「春休みの、最初の方にこっちに来たの」

 「あぁー、なるほどね」

 「あ!着いた。ここだよ」

 彼女が指差す方を見ると、そこにはあの本屋よりもはるかに大きく、また、僕の知らない本屋が建っていた。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...