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取りあえず二人で中に入る。
「いや広い!ホームセンターみたいだね」
「でしょ!ここ、広くていろんなものがあるから、ちょうどいいんだ」
僕はそこで、ふと疑問に思ったことを口にした。
「あのさ、君、本は全然読まないっていってたけど、ここで何買ってるの?」
彼女は何でもなさそうに言った。
「えぇー、いろいろかな。雑誌とか、漫画とか!ねぇねぇ、涼くんは漫画好き?」
「いや。本の方が好きだね。だって、想像して読むことができるじゃないか。漫画はもうイラストになっているから、情景を想像しなくていい。僕は、想像するからこそ、本の楽しさがあると思う」
「うわっ!私の敵、ここに現る!私は、漫画の方が絶対いいと思う。一回ね、私が好きだった本が映画化して、その登場人物たちが、私の想像していたのと全然違ったの!もう、がっかりしちゃってさー」
「それは君がただ単にちゃんとその人の特徴を捉えてなかったんでしょ」
「いいや、絶対に違う!映画の方が悪いの」
「じゃあ僕は、本をみに行ってくるね」
「あー、涼くん、逃げたな!また議論して、漫画の方がいいと認めさせてやる!」
「僕が君に本の方がいいと認めさせてあげるよ」
僕はそう言って、本のあるコーナーに向かった。一方彼女は、さっそく漫画のあるコーナーに向かっているのが見えた。意外とこうやって議論するのも悪くないな、と思いながら、気になった本を取り出してみた。
取り出しては戻し、その繰り返しをして、結局はおもしろそうだから買いたいな、と思う本が五冊も出てきた。どれにしようか迷っていると、僕の肩に、誰かの手が乗った。振り向くと、あの僕にたまに話しかけてくるクラスメイトがいた。
「やぁ」
僕が挨拶すると、彼はいつものようにニカッっと笑って、「よう」と返した。
「こんなところで会うなんて奇遇だね」
「だな。そういえばさっき、今日転校してきた桜木 涼花がいてよぉ、俺がよって言ったら、無視してきたんだよ。あの人、漫画に夢中になってたっぽい」
「へぇ」
「反応薄!そういえばおまえ、今日あの人になんか話しかけられてたけど、なんかあったのか?」
「いや、別に何もな・・・」
「あるよ!」
いつの間にか彼女が僕のすぐそばにいた。僕たちの会話を聞いていたらしい。そして、余計なことまで言って・・・
「え!?なになに?」
彼は興味津々のようで、彼女の方に身を乗り出している。
「昨日ねー、私、涼くんに助けてもらったの!すっごく格好良かったよ!」
「はい?ちょっと、なに言ってるの」
「私があの時に思ったことをそのまま口に出しただけだよー」
ケロリと言う彼女。まぁ、これを聞いていたのが彼でよかった。もし他のクラスメイトだったら、きっととても面倒なことになるだろう。そして、変な噂が流れる。だが彼は、聞いたことを伝達するような人じゃない、はず。
「助けられたって、どういうこと?」
「んっとねー、昨夜私、駅前で男の人たちに絡まれたの。で、しまいには暴力ふるわれそうになった。所謂ヤンキーかな。そしたらね、涼くんが、私とその人たちの間に割り込んできて、スマホ出して、『呼ぶ?』って言ったの。あの人たち、涼くんを見ただけでひるんでた。結局は、その人たち、逃げてったの」
「ナイスだぜ、滝沢」
そう言いながら彼は僕の肩をバシバシと叩く。一方僕は、さきほどまでの会話の内容を無視して、さっきから聞きたかったことを言う。それで話がずれてくれればいい。
「ところでさ、君の名前教えてくれる?僕、全く覚えてなくて・・・去年も同じクラスだったのに、ごめん」
すると二人は、心底驚いたような顔をした。
「え、俺の名前知らなかった!?俺、お前の名前知ってるのにぃー」
「去年も同じクラスだったんでしょ?何で知らないのよ」
などと、二人に責め立てられた。話をずらすことには成功したが、こうなら僕としてはあまり意味がない。
「まぁ、仕方ない。俺の名前は清水 葵(しみず あおい)。改めてよろしくな!」
「清水 葵・・・よろしく」
僕もぎこちなく挨拶する。
「ちなみに、私の名前覚えてる?」
今日聞いたばかりだったから、忘れる訳ないじゃないか。そう思いながら答えた。
「桜木・・・あれ?下の名前は分からない」
「「えぇ!」」
清水と桜木さんの声が重なった。
「俺、ついさっき桜木の下の名前も言ってた気ぃするんだけどな….」
「今日聞いたばっかりでしょ!」
正直言って、うるさい。ここは本が置かれているコーナーだから、立ち読みしている人が多い。それなのに、そんな大きな声で話されると、迷惑になるじゃないか。と思って周りをみると、すでに僕たちは、迷惑そうな目でちらちらと見られている。
「ちょっと、ここで話すのはやめよう・・・」
僕はそう言って、彼らを迷惑にならなさそうな場所に引っ張っていった。
そこで僕は、本を買おうと思って、さっきまでどの本を買うか迷っていたことを思い出す。
「あ、ちょっと待って。僕、買う本をまだ決めてなかったんだ。これから決めるから」
などと言いながらも、僕はすぐには決められなかった。なにしろ、どれもおもしろそうだったからだ。
「全部買っちゃいなよ」
桜木さんが言った。
「欲しいものを買えば、後悔はしないはずだぜ」
確かにそうかもしれない。僕は財布を出して財布の中のお金を見た。思ったよりもたくさんあったので、五冊全部買うことにする。
二人もそれぞれ手に持っていた漫画や雑誌を買っていた。ちなみに、二人とも、一冊も本を買っていなかった。本っておもしろいのになぁ、などと思いながら二人を待つ。
今度は三人で本屋を出た。
「いや広い!ホームセンターみたいだね」
「でしょ!ここ、広くていろんなものがあるから、ちょうどいいんだ」
僕はそこで、ふと疑問に思ったことを口にした。
「あのさ、君、本は全然読まないっていってたけど、ここで何買ってるの?」
彼女は何でもなさそうに言った。
「えぇー、いろいろかな。雑誌とか、漫画とか!ねぇねぇ、涼くんは漫画好き?」
「いや。本の方が好きだね。だって、想像して読むことができるじゃないか。漫画はもうイラストになっているから、情景を想像しなくていい。僕は、想像するからこそ、本の楽しさがあると思う」
「うわっ!私の敵、ここに現る!私は、漫画の方が絶対いいと思う。一回ね、私が好きだった本が映画化して、その登場人物たちが、私の想像していたのと全然違ったの!もう、がっかりしちゃってさー」
「それは君がただ単にちゃんとその人の特徴を捉えてなかったんでしょ」
「いいや、絶対に違う!映画の方が悪いの」
「じゃあ僕は、本をみに行ってくるね」
「あー、涼くん、逃げたな!また議論して、漫画の方がいいと認めさせてやる!」
「僕が君に本の方がいいと認めさせてあげるよ」
僕はそう言って、本のあるコーナーに向かった。一方彼女は、さっそく漫画のあるコーナーに向かっているのが見えた。意外とこうやって議論するのも悪くないな、と思いながら、気になった本を取り出してみた。
取り出しては戻し、その繰り返しをして、結局はおもしろそうだから買いたいな、と思う本が五冊も出てきた。どれにしようか迷っていると、僕の肩に、誰かの手が乗った。振り向くと、あの僕にたまに話しかけてくるクラスメイトがいた。
「やぁ」
僕が挨拶すると、彼はいつものようにニカッっと笑って、「よう」と返した。
「こんなところで会うなんて奇遇だね」
「だな。そういえばさっき、今日転校してきた桜木 涼花がいてよぉ、俺がよって言ったら、無視してきたんだよ。あの人、漫画に夢中になってたっぽい」
「へぇ」
「反応薄!そういえばおまえ、今日あの人になんか話しかけられてたけど、なんかあったのか?」
「いや、別に何もな・・・」
「あるよ!」
いつの間にか彼女が僕のすぐそばにいた。僕たちの会話を聞いていたらしい。そして、余計なことまで言って・・・
「え!?なになに?」
彼は興味津々のようで、彼女の方に身を乗り出している。
「昨日ねー、私、涼くんに助けてもらったの!すっごく格好良かったよ!」
「はい?ちょっと、なに言ってるの」
「私があの時に思ったことをそのまま口に出しただけだよー」
ケロリと言う彼女。まぁ、これを聞いていたのが彼でよかった。もし他のクラスメイトだったら、きっととても面倒なことになるだろう。そして、変な噂が流れる。だが彼は、聞いたことを伝達するような人じゃない、はず。
「助けられたって、どういうこと?」
「んっとねー、昨夜私、駅前で男の人たちに絡まれたの。で、しまいには暴力ふるわれそうになった。所謂ヤンキーかな。そしたらね、涼くんが、私とその人たちの間に割り込んできて、スマホ出して、『呼ぶ?』って言ったの。あの人たち、涼くんを見ただけでひるんでた。結局は、その人たち、逃げてったの」
「ナイスだぜ、滝沢」
そう言いながら彼は僕の肩をバシバシと叩く。一方僕は、さきほどまでの会話の内容を無視して、さっきから聞きたかったことを言う。それで話がずれてくれればいい。
「ところでさ、君の名前教えてくれる?僕、全く覚えてなくて・・・去年も同じクラスだったのに、ごめん」
すると二人は、心底驚いたような顔をした。
「え、俺の名前知らなかった!?俺、お前の名前知ってるのにぃー」
「去年も同じクラスだったんでしょ?何で知らないのよ」
などと、二人に責め立てられた。話をずらすことには成功したが、こうなら僕としてはあまり意味がない。
「まぁ、仕方ない。俺の名前は清水 葵(しみず あおい)。改めてよろしくな!」
「清水 葵・・・よろしく」
僕もぎこちなく挨拶する。
「ちなみに、私の名前覚えてる?」
今日聞いたばかりだったから、忘れる訳ないじゃないか。そう思いながら答えた。
「桜木・・・あれ?下の名前は分からない」
「「えぇ!」」
清水と桜木さんの声が重なった。
「俺、ついさっき桜木の下の名前も言ってた気ぃするんだけどな….」
「今日聞いたばっかりでしょ!」
正直言って、うるさい。ここは本が置かれているコーナーだから、立ち読みしている人が多い。それなのに、そんな大きな声で話されると、迷惑になるじゃないか。と思って周りをみると、すでに僕たちは、迷惑そうな目でちらちらと見られている。
「ちょっと、ここで話すのはやめよう・・・」
僕はそう言って、彼らを迷惑にならなさそうな場所に引っ張っていった。
そこで僕は、本を買おうと思って、さっきまでどの本を買うか迷っていたことを思い出す。
「あ、ちょっと待って。僕、買う本をまだ決めてなかったんだ。これから決めるから」
などと言いながらも、僕はすぐには決められなかった。なにしろ、どれもおもしろそうだったからだ。
「全部買っちゃいなよ」
桜木さんが言った。
「欲しいものを買えば、後悔はしないはずだぜ」
確かにそうかもしれない。僕は財布を出して財布の中のお金を見た。思ったよりもたくさんあったので、五冊全部買うことにする。
二人もそれぞれ手に持っていた漫画や雑誌を買っていた。ちなみに、二人とも、一冊も本を買っていなかった。本っておもしろいのになぁ、などと思いながら二人を待つ。
今度は三人で本屋を出た。
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