15 / 35
5-3
しおりを挟む
彼女に腕を引っ張られるままにしていると、彼女の家の前に着いた。
「入って」
彼女は家を指差した。
「いや、清水から聞いたと思うけど、今日の勉強会は中止だよ」
僕が言うと、彼女は眉をつり上げた。
「そんなの知ってるよ。あのね、鏡見てないから分からないと思うけど、涼のほっぺた真っ赤になってる。そんなんで外歩かせられない。それに、勉強会とかそういうのじゃないから。いいから来て」
彼女に連行されるように僕は家の中に入った。僕たちが玄関に入ると、人の話し声が聞こえた。といってもドアによって音が小さくなっているので、どんな話をしているのかもわからない。
彼女はリビングへ通じるドアを開けた。
「あ」
向かい合って座っている二人がこちらを見た。一人は彼女のお母さんだろう。雰囲気も、顔も似ている。もう一人は、驚いたことに清水だった。
「・・・何で葵くんがここに」
彼女はとても驚いたようだ。当たり前だろう。家に帰ったら、なぜか同級生が自分の家にいるのだから。
「あー、俺、桜木に電話した時に突然、お前が『あ、ちょっとごめん。切るね』とか言って電話切っちまうからどうしたんだろうと思って来たわけ。そしたら、桜木のお母さんが待ってるなら外暑いから家で待ってなって言ってくれたのさ・・・」
「そう。じゃあ涼、洗面所行こう」
「分かった」
彼女に案内されて、そちらに向かおうとすると、清水が僕を呼び止めた。
「お、おい。ほっぺたが赤いけど。大丈夫か?」
どうやら外が暑いからこうなったと思っているようだ。まだ鏡で見てないからどのくらい赤いのかは分からない。
「んー、大丈夫だと思うよ」
そう言って僕は洗面所に行った。
「・・・なにこれ」
鏡で自分を見た時の僕の第一声だ。
「ちょっとヤバいでしょ。まだ痛い?」
心配そうに彼女が言った。
「なんか、感覚が麻痺してるのか、よく分からない・・・それにしても、すごく赤い」
鏡に映っている僕の頬は、彼女の言うとおり真っ赤になっていた。アイツラの長をやっているだけある。殴られた時は痛いとかあまりよく分からなかったが、今こうしてなにも考えずに立っていると、少しじんじんとした痛みがある。
「ちょっと氷水持ってくるから、葵くんと一緒に私の部屋で待ってて」
彼女はそう言って今度はキッチンへと向かった。僕は清水を呼びにリビングへ向かった。リビングでは、まだ清水と彼女のお母さんが楽しそうにおしゃべりをしている。
「清水」
僕が声をかけると、清水は笑いの残った顔でこちらを振り向いた。
「なに?」
「桜木さんが、部屋で待ってって言ってたんだけど・・・僕、やっぱり先に行ってるね」
僕は二階へつながる階段を上り始めた。すると、後ろから声をかけられた。
「待って」
後ろを見ると、清水がいた。しゃべってて良かったのにと僕が言うと、清水はちょうど話題がなくなってきてたんだよと言った。
二人で彼女の部屋の前まで来た。二人とも、そこで中に入らず立ち止まった。何となく入るのが躊躇われた。以前ここに来た事はあったし、その時も彼女の部屋に入って話したり、勉強したりした。しかし、それも結局は彼女が一緒だったから入れたのかもしれない。やはり、友達だからといってズカズカと女子の部屋には入れない。なぜか、悪いと思ってしまう。
「・・・入るか」
清水が言った。うん、と僕は頷いたが、自分から入ろうとは思わない。
「あれ、入んないの?」
後ろから声をかけられて後ろを見ると、彼女がいた。手にはお盆を持っていて、その上にはジュースの入ったコップが三つと、ビニール袋に入った氷水を載せていた。
「今両手塞がってるから、誰かドア開けて」
彼女にそう言われて僕は急いでドアを開けた。
「入って」
彼女は家を指差した。
「いや、清水から聞いたと思うけど、今日の勉強会は中止だよ」
僕が言うと、彼女は眉をつり上げた。
「そんなの知ってるよ。あのね、鏡見てないから分からないと思うけど、涼のほっぺた真っ赤になってる。そんなんで外歩かせられない。それに、勉強会とかそういうのじゃないから。いいから来て」
彼女に連行されるように僕は家の中に入った。僕たちが玄関に入ると、人の話し声が聞こえた。といってもドアによって音が小さくなっているので、どんな話をしているのかもわからない。
彼女はリビングへ通じるドアを開けた。
「あ」
向かい合って座っている二人がこちらを見た。一人は彼女のお母さんだろう。雰囲気も、顔も似ている。もう一人は、驚いたことに清水だった。
「・・・何で葵くんがここに」
彼女はとても驚いたようだ。当たり前だろう。家に帰ったら、なぜか同級生が自分の家にいるのだから。
「あー、俺、桜木に電話した時に突然、お前が『あ、ちょっとごめん。切るね』とか言って電話切っちまうからどうしたんだろうと思って来たわけ。そしたら、桜木のお母さんが待ってるなら外暑いから家で待ってなって言ってくれたのさ・・・」
「そう。じゃあ涼、洗面所行こう」
「分かった」
彼女に案内されて、そちらに向かおうとすると、清水が僕を呼び止めた。
「お、おい。ほっぺたが赤いけど。大丈夫か?」
どうやら外が暑いからこうなったと思っているようだ。まだ鏡で見てないからどのくらい赤いのかは分からない。
「んー、大丈夫だと思うよ」
そう言って僕は洗面所に行った。
「・・・なにこれ」
鏡で自分を見た時の僕の第一声だ。
「ちょっとヤバいでしょ。まだ痛い?」
心配そうに彼女が言った。
「なんか、感覚が麻痺してるのか、よく分からない・・・それにしても、すごく赤い」
鏡に映っている僕の頬は、彼女の言うとおり真っ赤になっていた。アイツラの長をやっているだけある。殴られた時は痛いとかあまりよく分からなかったが、今こうしてなにも考えずに立っていると、少しじんじんとした痛みがある。
「ちょっと氷水持ってくるから、葵くんと一緒に私の部屋で待ってて」
彼女はそう言って今度はキッチンへと向かった。僕は清水を呼びにリビングへ向かった。リビングでは、まだ清水と彼女のお母さんが楽しそうにおしゃべりをしている。
「清水」
僕が声をかけると、清水は笑いの残った顔でこちらを振り向いた。
「なに?」
「桜木さんが、部屋で待ってって言ってたんだけど・・・僕、やっぱり先に行ってるね」
僕は二階へつながる階段を上り始めた。すると、後ろから声をかけられた。
「待って」
後ろを見ると、清水がいた。しゃべってて良かったのにと僕が言うと、清水はちょうど話題がなくなってきてたんだよと言った。
二人で彼女の部屋の前まで来た。二人とも、そこで中に入らず立ち止まった。何となく入るのが躊躇われた。以前ここに来た事はあったし、その時も彼女の部屋に入って話したり、勉強したりした。しかし、それも結局は彼女が一緒だったから入れたのかもしれない。やはり、友達だからといってズカズカと女子の部屋には入れない。なぜか、悪いと思ってしまう。
「・・・入るか」
清水が言った。うん、と僕は頷いたが、自分から入ろうとは思わない。
「あれ、入んないの?」
後ろから声をかけられて後ろを見ると、彼女がいた。手にはお盆を持っていて、その上にはジュースの入ったコップが三つと、ビニール袋に入った氷水を載せていた。
「今両手塞がってるから、誰かドア開けて」
彼女にそう言われて僕は急いでドアを開けた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
さようなら、お別れしましょう
椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。
妻に新しいも古いもありますか?
愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?
私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。
――つまり、別居。
夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。
――あなたにお礼を言いますわ。
【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる!
※他サイトにも掲載しております。
※表紙はお借りしたものです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる