25 / 35
9-1
しおりを挟む
寒さが厳しくなってきた。当たり前だろう。もう早いところでは、雪が降っているという。僕は寒がりで冷え症なので、冬になるといつも手足が冷たくなってしまう。手なんか、紫色になる事だってある。
手をカイロで温めながら、僕は教室に入る。中には珍しく、彼女がいた。いつもは、遅刻ギリギリのところを攻めているのに。僕は彼女にきちんと挨拶をした。
「おはよう」
すると彼女は驚いたように顔を上げ、僕を見た。途端、彼女はぎこちない笑みを浮かべながらも、いつものように「おはよっ!」と元気な声で言った。
僕の勘違いだったのだろうかと思い、首を傾げながら教科書類を机にしまっていると、バシッと背中に衝撃が走った。振り向くと、清水と悠がいた。
「おはよ」
爽やかに笑いかけながら言ったのは悠。一方清水は、眠そうに目をこすりながら「はよ」とかったるそうに言った。
昼休み、午前中にずっと気になっていた事を彼女に訊いた。
「涼花、どうしたの?」
僕が声をかけると、彼女はビクッと肩を震わせた。やっぱり、いつもの彼女とは大違いだ。
「どうもしないよ」
「その言葉は残念ながら信じられないけど、何か言いたくなったらいつでも言って。その際、僕や葵や悠の悪口でも構わないから」
僕は彼女にそう言い残して、自分の席に戻った。
「疲れたー!」
いつもの三人で帰っていると、彼女は大きくのびをしながら言った。朝の雰囲気とは全く異なり、いつもの彼女に戻っていた。
「今日は葵くんも部活ないし、久しぶりにあの本屋さんに行こうよ!」
「「あの本屋さんって?」」
僕と清水の声が重なった。彼女はそれにクスクス笑いながら、大袈裟に驚いた。
「え!?わからないの!?」
僕と清水が頷くと、彼女ははぁっと大きなため息をついた。そして、僕と清水の手をぱっと握り、ぐいぐいと引っ張った。
「ここ!」
彼女に連れられて来た場所は――あの、本屋だった。僕が彼女に無理やり連れてこられた、清水としゃべるようになったきっかけの、大きな――本屋だった。
「おぉー!すっげー久しぶりじゃん!」
清水がはしゃいだように言う。僕も、口には出さずにとも、嬉しくて口角が上がった。
そんな僕たちを見て、彼女はにこにこしていた。
「でね!前みたいに別行動じゃなくて、みんなで一斉にまわりたいの!もちろん、涼が本を見たいなら私と葵くんもついてくるし、私と葵くんが漫画見たかったら涼もついてく!それぞれ好きなものは違うけど、お互い好きなものを見合って、さらに仲良くなれる!!」
彼女は興奮したように身振り手振りを交えて僕と清水に力説した。無論、僕も清水も彼女の意見に異論はないので、うなずくなり、返事をするなりして同意を示した。
「よしっ、行くぞー!」
彼女は拳を上に突き出し、元気よく言った。それに清水も倣う。僕は一つ、疑問を覚えていた。普段なら、彼女はこんなにテンション高くないし、今の提案もどこか不自然な気がする。こう思っているのも、自分だけなのだろうか。こっそりと清水を見ると、清水と目があった。清水は楽しそうに笑っていた。しかし、僕と目があうと、清水は首を右に傾けた。どうしたの?というような。僕はふるふると首を横に振り、なんでもないよ、と示した。清水は軽く頷くと、また笑みを浮かべて前を向いた。
・・・やはり、僕の、気のせいだったか。
手をカイロで温めながら、僕は教室に入る。中には珍しく、彼女がいた。いつもは、遅刻ギリギリのところを攻めているのに。僕は彼女にきちんと挨拶をした。
「おはよう」
すると彼女は驚いたように顔を上げ、僕を見た。途端、彼女はぎこちない笑みを浮かべながらも、いつものように「おはよっ!」と元気な声で言った。
僕の勘違いだったのだろうかと思い、首を傾げながら教科書類を机にしまっていると、バシッと背中に衝撃が走った。振り向くと、清水と悠がいた。
「おはよ」
爽やかに笑いかけながら言ったのは悠。一方清水は、眠そうに目をこすりながら「はよ」とかったるそうに言った。
昼休み、午前中にずっと気になっていた事を彼女に訊いた。
「涼花、どうしたの?」
僕が声をかけると、彼女はビクッと肩を震わせた。やっぱり、いつもの彼女とは大違いだ。
「どうもしないよ」
「その言葉は残念ながら信じられないけど、何か言いたくなったらいつでも言って。その際、僕や葵や悠の悪口でも構わないから」
僕は彼女にそう言い残して、自分の席に戻った。
「疲れたー!」
いつもの三人で帰っていると、彼女は大きくのびをしながら言った。朝の雰囲気とは全く異なり、いつもの彼女に戻っていた。
「今日は葵くんも部活ないし、久しぶりにあの本屋さんに行こうよ!」
「「あの本屋さんって?」」
僕と清水の声が重なった。彼女はそれにクスクス笑いながら、大袈裟に驚いた。
「え!?わからないの!?」
僕と清水が頷くと、彼女ははぁっと大きなため息をついた。そして、僕と清水の手をぱっと握り、ぐいぐいと引っ張った。
「ここ!」
彼女に連れられて来た場所は――あの、本屋だった。僕が彼女に無理やり連れてこられた、清水としゃべるようになったきっかけの、大きな――本屋だった。
「おぉー!すっげー久しぶりじゃん!」
清水がはしゃいだように言う。僕も、口には出さずにとも、嬉しくて口角が上がった。
そんな僕たちを見て、彼女はにこにこしていた。
「でね!前みたいに別行動じゃなくて、みんなで一斉にまわりたいの!もちろん、涼が本を見たいなら私と葵くんもついてくるし、私と葵くんが漫画見たかったら涼もついてく!それぞれ好きなものは違うけど、お互い好きなものを見合って、さらに仲良くなれる!!」
彼女は興奮したように身振り手振りを交えて僕と清水に力説した。無論、僕も清水も彼女の意見に異論はないので、うなずくなり、返事をするなりして同意を示した。
「よしっ、行くぞー!」
彼女は拳を上に突き出し、元気よく言った。それに清水も倣う。僕は一つ、疑問を覚えていた。普段なら、彼女はこんなにテンション高くないし、今の提案もどこか不自然な気がする。こう思っているのも、自分だけなのだろうか。こっそりと清水を見ると、清水と目があった。清水は楽しそうに笑っていた。しかし、僕と目があうと、清水は首を右に傾けた。どうしたの?というような。僕はふるふると首を横に振り、なんでもないよ、と示した。清水は軽く頷くと、また笑みを浮かべて前を向いた。
・・・やはり、僕の、気のせいだったか。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
さようなら、お別れしましょう
椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。
妻に新しいも古いもありますか?
愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?
私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。
――つまり、別居。
夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。
――あなたにお礼を言いますわ。
【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる!
※他サイトにも掲載しております。
※表紙はお借りしたものです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる