「何気ない日々にちょっとしたスパイスがあると、人生楽しくなると思うけど」

藍月

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 寒さが厳しくなってきた。当たり前だろう。もう早いところでは、雪が降っているという。僕は寒がりで冷え症なので、冬になるといつも手足が冷たくなってしまう。手なんか、紫色になる事だってある。
 手をカイロで温めながら、僕は教室に入る。中には珍しく、彼女がいた。いつもは、遅刻ギリギリのところを攻めているのに。僕は彼女にきちんと挨拶をした。

 「おはよう」

 すると彼女は驚いたように顔を上げ、僕を見た。途端、彼女はぎこちない笑みを浮かべながらも、いつものように「おはよっ!」と元気な声で言った。
 僕の勘違いだったのだろうかと思い、首を傾げながら教科書類を机にしまっていると、バシッと背中に衝撃が走った。振り向くと、清水と悠がいた。

 「おはよ」

 爽やかに笑いかけながら言ったのは悠。一方清水は、眠そうに目をこすりながら「はよ」とかったるそうに言った。
 昼休み、午前中にずっと気になっていた事を彼女に訊いた。

 「涼花、どうしたの?」

 僕が声をかけると、彼女はビクッと肩を震わせた。やっぱり、いつもの彼女とは大違いだ。

 「どうもしないよ」

 「その言葉は残念ながら信じられないけど、何か言いたくなったらいつでも言って。その際、僕や葵や悠の悪口でも構わないから」

 僕は彼女にそう言い残して、自分の席に戻った。



 「疲れたー!」

 いつもの三人で帰っていると、彼女は大きくのびをしながら言った。朝の雰囲気とは全く異なり、いつもの彼女に戻っていた。

 「今日は葵くんも部活ないし、久しぶりにあの本屋さんに行こうよ!」

 「「あの本屋さんって?」」

 僕と清水の声が重なった。彼女はそれにクスクス笑いながら、大袈裟に驚いた。

 「え!?わからないの!?」

 僕と清水が頷くと、彼女ははぁっと大きなため息をついた。そして、僕と清水の手をぱっと握り、ぐいぐいと引っ張った。

 「ここ!」

 彼女に連れられて来た場所は――あの、本屋だった。僕が彼女に無理やり連れてこられた、清水としゃべるようになったきっかけの、大きな――本屋だった。

 「おぉー!すっげー久しぶりじゃん!」

 清水がはしゃいだように言う。僕も、口には出さずにとも、嬉しくて口角が上がった。
 そんな僕たちを見て、彼女はにこにこしていた。

 「でね!前みたいに別行動じゃなくて、みんなで一斉にまわりたいの!もちろん、涼が本を見たいなら私と葵くんもついてくるし、私と葵くんが漫画見たかったら涼もついてく!それぞれ好きなものは違うけど、お互い好きなものを見合って、さらに仲良くなれる!!」

 彼女は興奮したように身振り手振りを交えて僕と清水に力説した。無論、僕も清水も彼女の意見に異論はないので、うなずくなり、返事をするなりして同意を示した。

 「よしっ、行くぞー!」

 彼女は拳を上に突き出し、元気よく言った。それに清水も倣う。僕は一つ、疑問を覚えていた。普段なら、彼女はこんなにテンション高くないし、今の提案もどこか不自然な気がする。こう思っているのも、自分だけなのだろうか。こっそりと清水を見ると、清水と目があった。清水は楽しそうに笑っていた。しかし、僕と目があうと、清水は首を右に傾けた。どうしたの?というような。僕はふるふると首を横に振り、なんでもないよ、と示した。清水は軽く頷くと、また笑みを浮かべて前を向いた。
 ・・・やはり、僕の、気のせいだったか。
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