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「よし、じゃあまずはどっから行く?」
「はい!俺、文房具みたい!」
清水がまるで小学生のように元気よく言った。そんな清水に僕と彼女はクスクス笑いながら文房具を売っているコーナーに向かった。
「ねぇねぇ!これ、良くない?みんなで同じの買っちゃおうよ!」
彼女が大きな声をあげたのは、しばらく経ってからだった。どれどれと清水と一緒に彼女の方へ行くと、彼女は何とも言い難い、かわいくはないキャラクターのキーホルダーを手にしていた。
「何それ」
思わず僕が顔をしかめると、彼女は驚いたように目を見開いた。
「え、知らないの!?結構有名なんだけどなぁー、あっ、葵くんは知ってる?」
「え、あ、あぁ・・・うん。知ってる。クマのキャラクターだろ?」
本当に知っているのかよくわからない返事を清水はした。クマといわれて僕は彼女が手にしているキャラクターを見た。僕にはクマには見えない。
「よし、買おっ!」
彼女は三つキーホルダーを取り、一個ずつ僕と清水の手に押し付けた。しかし、彼女はすぐにそれを取り上げてしまった。
「やっぱり、これ!」
次に彼女が出したのは、さっきと同じキャラクターのキーホルダーだが、一つだけ違うものがあった。着ている服の真ん中には英文字が入っていて、それぞれ「A」、「R」、「S」とかかれていた。
「涼はこれでー、葵くんはこれ!」
僕には「R」、清水には「A」の入ったキーホルダーを手に押しつけた。あぁ、なるほどと僕は悟った。つまり、僕たちの名前のイニシャルがあるものを選んだのだろう。
その後は各々好きなものを見て、文房具コーナーをあとにした。
「次どこ行くー?」
「本みたい」
僕が言うと、彼女と清水はおっけーと言ってついてきてくれた。そこでは文房具コーナーで騒いだ時のようにはならず、静かに過ごした。なにしろ、周りには本を真剣そうな顔で選んでいる人々がいるのだ。
「ねぇ、おすすめの本教えて」
彼女が僕のもとに来て、小声で訊いてきた。
「え、読むの?」
「うん、もちろん!あ、葵くんも読むよ」
彼女の何気ない一言に僕は絶句した。あの清水が、本を読むなど・・・ただ驚きしかない。
「それ、本気で言ってるの?」
「もう。本当だって!早くしてー」
彼女は催促するように僕から手に持っていた本を奪い取り、本棚に戻してしまった。僕はため息をついて、以前読んで面白いと思った本を探しに歩き出す。途中で本棚の前で立ち読みをしている清水を発見し、僕は清水の服の襟首を引っ張った。
「な、なんだよー」
「本だよ。僕が今探してるんだからついてこい」
清水は「あの本、気になってたんだよー」なんてぼやきながらも大人しくついてきた。前に買った時の記憶を頼りにたくさんある本棚を間を歩き回って、たった一冊の本を探す。やはり、探すのは難しいだろうか。移動した可能性だってあるし、そもそもあるかも分からない。僕は後ろを振り返って店員さんを目で探す。近くにはいないようだ。仕方ない、と僕が心の中で思った時。
「げっ」
清水の嫌そうな声。
清水の視線を追えば、いやというほど見知った顔があった。僕は咄嗟に彼女とその人の間に割り込み、彼女を庇うように立つ。アイツラの長と、そこには珍しく――二、三人しか仲間がいなかった。というか、こんな場所でアイツラと遭遇するなんて。アイツラ、本とか読むのか?向こうも清水の声に反応したようで、僕たちの存在に気付いてしまった。
「おぉ、久しぶりじゃないか」
アイツラの長がニマッと不気味に口角を上げた。
「はい!俺、文房具みたい!」
清水がまるで小学生のように元気よく言った。そんな清水に僕と彼女はクスクス笑いながら文房具を売っているコーナーに向かった。
「ねぇねぇ!これ、良くない?みんなで同じの買っちゃおうよ!」
彼女が大きな声をあげたのは、しばらく経ってからだった。どれどれと清水と一緒に彼女の方へ行くと、彼女は何とも言い難い、かわいくはないキャラクターのキーホルダーを手にしていた。
「何それ」
思わず僕が顔をしかめると、彼女は驚いたように目を見開いた。
「え、知らないの!?結構有名なんだけどなぁー、あっ、葵くんは知ってる?」
「え、あ、あぁ・・・うん。知ってる。クマのキャラクターだろ?」
本当に知っているのかよくわからない返事を清水はした。クマといわれて僕は彼女が手にしているキャラクターを見た。僕にはクマには見えない。
「よし、買おっ!」
彼女は三つキーホルダーを取り、一個ずつ僕と清水の手に押し付けた。しかし、彼女はすぐにそれを取り上げてしまった。
「やっぱり、これ!」
次に彼女が出したのは、さっきと同じキャラクターのキーホルダーだが、一つだけ違うものがあった。着ている服の真ん中には英文字が入っていて、それぞれ「A」、「R」、「S」とかかれていた。
「涼はこれでー、葵くんはこれ!」
僕には「R」、清水には「A」の入ったキーホルダーを手に押しつけた。あぁ、なるほどと僕は悟った。つまり、僕たちの名前のイニシャルがあるものを選んだのだろう。
その後は各々好きなものを見て、文房具コーナーをあとにした。
「次どこ行くー?」
「本みたい」
僕が言うと、彼女と清水はおっけーと言ってついてきてくれた。そこでは文房具コーナーで騒いだ時のようにはならず、静かに過ごした。なにしろ、周りには本を真剣そうな顔で選んでいる人々がいるのだ。
「ねぇ、おすすめの本教えて」
彼女が僕のもとに来て、小声で訊いてきた。
「え、読むの?」
「うん、もちろん!あ、葵くんも読むよ」
彼女の何気ない一言に僕は絶句した。あの清水が、本を読むなど・・・ただ驚きしかない。
「それ、本気で言ってるの?」
「もう。本当だって!早くしてー」
彼女は催促するように僕から手に持っていた本を奪い取り、本棚に戻してしまった。僕はため息をついて、以前読んで面白いと思った本を探しに歩き出す。途中で本棚の前で立ち読みをしている清水を発見し、僕は清水の服の襟首を引っ張った。
「な、なんだよー」
「本だよ。僕が今探してるんだからついてこい」
清水は「あの本、気になってたんだよー」なんてぼやきながらも大人しくついてきた。前に買った時の記憶を頼りにたくさんある本棚を間を歩き回って、たった一冊の本を探す。やはり、探すのは難しいだろうか。移動した可能性だってあるし、そもそもあるかも分からない。僕は後ろを振り返って店員さんを目で探す。近くにはいないようだ。仕方ない、と僕が心の中で思った時。
「げっ」
清水の嫌そうな声。
清水の視線を追えば、いやというほど見知った顔があった。僕は咄嗟に彼女とその人の間に割り込み、彼女を庇うように立つ。アイツラの長と、そこには珍しく――二、三人しか仲間がいなかった。というか、こんな場所でアイツラと遭遇するなんて。アイツラ、本とか読むのか?向こうも清水の声に反応したようで、僕たちの存在に気付いてしまった。
「おぉ、久しぶりじゃないか」
アイツラの長がニマッと不気味に口角を上げた。
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