上 下
30 / 35

10-2

しおりを挟む
 「はぁー!今日も楽しかった!」

 「途中までは僕は最悪だったけど」

 「それはごめんって!でもほら、もう完全に仲直りだってしただろ?」

 彼女と清水はニコッと笑いながら僕を見た。僕も思わず笑みをこぼす。あの後僕たちはしっかりと話し合いをし、お互いの誤解を解いてから昨日のように店を回って遊びまくったのだった。
 最近は出費が多くて僕は財布の中が少なくなっていく事にみてみぬふりをしてきた。しかし、流石にもうふりはできないだろう。今日は母と父に毎月の小遣いを増やしてほしいとお願いしよう。小遣いは僕が全然使わないからといって大分減らされている。それもたまったおかげで僕は今このように遊びまくれるのだ。

 「じゃ、また明日ねー!」

 「おう!またな!」

 「また明日」

 いつもの道で別れて彼女と一緒に歩く。彼女は空を見上げながら嬉しそうに笑った。

 「思いやりのある、ステキな友達を私はもったなぁ・・・」

 「なにそれ。別に今までだってこれが涼花の当たり前だっただろう?」

 「何言ってるの。涼知ってるくせに。私が荒れてたら、そりゃできる友達だって同じ。今みたいに楽しく遊んで、のんびりとこうやって放課後を楽しむなんて事、できなかったよ」

 「そうか・・・」

 僕の顔を見て、彼女は何かを察したかのように意味ありげな笑みを浮かべる。

 「大丈夫。また戻っても同じ学校には入らないし、私、向こうで涼たちみたいなステキな友達絶対作る!」

 「約束だよ?」

 「もちろん!」

 彼女の笑顔は夕日の光に照らされて、眩しいほど輝いて見えた。
 家に帰り、自分の部屋で本を読む。読んでいる本は昨日本屋で彼女と清水に薦めた本だ。久しぶりにあの本を見て、また読もうと思い立ったのだった。

   「涼ー、もうすぐでご飯だから降りてきてー!」

 凛花の大きな声で僕ははっと本の世界から抜け出した。栞を挟んでどこまで読み進めたか確認する。もう半分以上は読み終えていた。今日中には読み終われそうだ。
 いつも通りにご飯を食べ終え、僕はさっそく母に毎月の小遣いの話を持ち出した。母はなぜか嬉しそうに笑って快諾してくれた。

 「涼が楽しそうにしてるんだもの。可愛い息子のためなら全然平気よ!」

 そう言いながら背中をバシバシ叩いてくるので僕はひょいと母の手から身を躱した。

 「最近どう?涼花ちゃん達と仲良くしてる?」

 僕が部屋に入る直前に、凛花がそう訊ねてきた。

 「そうだけど。何か問題でも?」

 「んーん!違うよ、ただ良かったなーって思って」

 凛花はニコッと僕に笑いかけ、さっさと部屋に戻っていってしまった。僕は首を傾げながら部屋に入る。スマホを見ると、彼女と清水からメッセージが入っていた。二人とも内容はほぼ同じで、僕が薦めた本を読み終わったという報告だった。
 それらに適当な返事を送り、僕は明日の事を考えながら勉強をし、風呂に入り、布団に入った。頭の中は、もう明日彼女と清水と話す事でいっぱいだった。それくらい、楽しみだったのだ。
しおりを挟む

処理中です...