「何気ない日々にちょっとしたスパイスがあると、人生楽しくなると思うけど」

藍月

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 「俺さ、今日考えたんだよ」

 「どうしたの、突然」

 それは学校帰り、いつもの3人で歩いている時の事だった。

 「桜木が引っ越すまで、桜木がやってみたい事、俺たちでたくさんやろうぜ」

 「それいいね」

 僕が頷くと、清水は満足げに頷いた。僕たちは彼女の顔を見る。彼女は何やら困惑したような顔をして笑っていた。

 「嫌なの?」

 「い、嫌じゃない!むしろすっごく嬉しいんだけど…」

 「だけど?」

 清水が先を促した。彼女はしばらく黙っていたが、やがて蚊の鳴くような声を出した。

 「たくさんありすぎて…困っちゃうの」

 「俺、やろうって言ったんだぜ?じゃあもう全部やっちゃうくらいの勢いでいこうぜ」

 僕は頷いて、彼女に訊いた。

 「で?涼花がやりたい事、もう全部言ってよ」

 「えーっとね、まず、三人でプール行きたいでしょ」

 「「ストップ!」」

 珍しく僕と清水の言葉が重なった。しかし、当たり前だろう。今は冬だ。それなのにプールに行きたいだなんて言われてもそれを達成できるわけがない。可能性はゼロだ。

 「いや、待てよ。じゃあ、来年行けばいいじゃん。桜木がこっち来るか俺らがそっちに行くか、そうすれば行けるぞ」

 「それはそう」

 「えっ!?いいの!?」

 「当たり前でしょ。じゃあ、他のは?」

 「次は、どこか旅行に行ってみたい!東京に行ってみたい!疲れ果てるまで遊んでみたい!」

 「いいな。それ、俺もやってみたい」

 「確かにいいね。それならこの冬のうちにできるよ」

 僕たちも乗り気になると、彼女は満面の笑みを浮かべた。

 「でも東京に行くならお金貯めれば何とかなるけど、旅行はちょっと自費は無理じゃない?」

 僕の言葉に二人も納得したようで、僕たちはお互いに顔を見合わせた。

 「もうさ、親に頼んでみるしかなくないか?事情話せば許してくれるかもしれないし」

 「そうだね」

 僕たちはいつもの別れ道で別れ、家に帰った。その夜、僕は母に話しかけた。

 「あのさ、涼花が引っ越す前に僕と涼花と葵で旅行に行きたいんだけど、いい?」

 「あぁ、夏休みの時に来たあの可愛い子と男の子の事?」

 「うん」

 「あの子引っ越しちゃうのね。最後くらいいいんじゃない?思い出作りにちょっと贅沢しても」

 「それで、お金を借りてもいいでしょうか?後でちゃんと返すので」

 「別に返さなくてもいいわよ。目一杯楽しんできなさい。あ、お土産も忘れずに」

 「了解。ありがとう」

 僕は心からの感謝を込めてお礼を言った。自室に戻り、スマートフォンで彼女と清水に了解を貰えた旨を伝えた。二人ともすぐに返信が来た。彼女は了解を得られたとのことだったが、清水は苦戦中との事だった。
 それから僕が本を読み始めてしばらく経った後、スマートフォンが鳴り、清水からのメッセージが届いた事を知らせた。さっそく見てみると、了解を得られたとのことだった。しかし、条件付きだそうだ。今度のテストで全教科平均点近くを取らなければいけないという条件だ。
 「僕がまた教えてあげるよ。ついでに涼花にも」
 そう文字を送ると、二人とも意外な事に喜んでいた。理由を訊いてみると、夏休みに僕に教えてもらった後、テストの点数が上がったそうだ。それと、三人で勉強するのも楽しかったからだそうだ。

 僕は嬉しい気持ちを持ちながら、その日は眠りについた。
 
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