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2章
56:問題が1つ解決しました
しおりを挟む入学から1ヵ月と少しが経った
俺が楽しみにしている国内代表選抜試合の代表を決める学園内代表選抜試合までは2週間を切った。
この期間何をしていたかと言うと、風紀委員会のお仕事として見回りと取り締まりに噂の問題児達とのトラブル。バル先生とひたすら模擬戦をする剣術の授業。といろんな感じで過ぎた。
そして、今も行なっているある先輩との模擬戦だ
「せぇいっ!」
「ふっ!」
ボグッ!ドフッ!
両者の拳がクロスし顔面を捉える
相手はこちらの拳撃をモロに顔面へとくらい軸がぶれてよろける
しかし、こちらは拳が当たるのに合わせて首を捻り衝撃を逃したのでダメージは殆どない
ふらついた所に追撃で腹に下からのアッパーを繰り出す
相手にアッパーがモロに決まる。がはっ!と空気が吐き出される。
けれど、そんな状況でも反撃の蹴りが俺へと向けて放たれた。凄い精神力だ。
だが、そんな崩れた体勢から放たれた蹴りなど俺に取っては隙にしかならない。
相手の右足による蹴りが俺の左脇腹へと迫る。それに対して俺は左足で前に踏み込みながらその蹴りよりも低くしゃがみ、そのまま左足を起点に回転し右足で相手の左足に足払いを掬い上げるようにしてかけた。
右足で放った蹴りは空振り、残っていた左足も払われた事で相手の体が宙へと投げ出される。
回転の勢いを殺さずにさらに1回転し、右足で跳躍。そこから相手に向かって上から叩きつけるように左足での回し蹴りを放った
相手は何とかしようとするが空中という事で回避が出来ず防御を固めることしかできなかった。
俺は防御などお構い無しにその防御の上から地面へと叩きつけた。地面に衝突して凄まじい音が発生する。今のダメージで相手が呻くが攻撃は止めない
【空歩】によって宙を蹴ることが可能になった俺は縦に回転して体勢を改め、踵落としを放った
相手はそんな俺を視界に入れて地面を転がって回避する。
避けられた俺の踵落としは地面へと炸裂し、恐ろしく頑丈な地面を砕いた。
攻撃の後を狙っていた相手は揺れと地面の残骸によって断念。そこへ俺は距離を詰めて正拳突きを放つも正面からの相手の拳に迎え撃たれた。力が殆ど変わらなかったことで両者の動きがその場で一瞬止まる。拳と拳のぶつかり合いで音と衝撃波が撒き散らされる
拳と拳、蹴りと蹴り、拳と蹴り、頭と頭がぶつかり合う。その後も俺が優勢で戦闘は続いていった
「ぜぇはぁ、ぜえっはあっ」
俺の目の前で大の字に倒れて荒い呼吸を繰り返す先程まで俺と模擬戦と言う名の殴り合いを繰り広げていた先輩を見る
身長は俺よりも低いが体格は俺よりもがっしりとしており、肌はよく日に焼けており褐色だ。髪はボサボサの茶色。
この人はガルガロッソ先輩。3年生のSクラスの1人であり、風紀委員会の先輩方が話していた問題児の1人である。
なんでそんな問題児の1人と模擬戦をしていたのかと言うと、ガルガロッソ先輩に頼まれたからだ。
力の制御の仕方を教えて欲しい!と彼を1ヵ月ほど前に取り押さえた後に言われたのだ
実はこの先輩、問題児と言ってもかなりマシな方だ。性格は実直であり正義感にも溢れていて、他の生徒からの信頼や憧れが少しある。
ここで少しと表現したことが彼が問題児たる所以に繋がる。
彼はその正義感からイジメや喧嘩を見かければ必ず割って入りイジメを行なっていた者、喧嘩をしていた者をボコボコにしてしまうのだ
まあ、何が言いたいのかというと力の制御が出来ずやり過ぎてしまうのだ。
その為、助けられた方も大半はそのまま逃げてしまうので先程少しと表現した
そして、ここ1ヵ月はそんなガルガロッソ先輩の為に放課後の風紀委員会の仕事が終わった後に模擬戦を繰り返してきた。
何故、力の制御の為の訓練が模擬戦になるのかと言えば、俺が戦いたいだけである。
というか先輩は既に力加減自体は出来るようになった。だけど、今度は逆に弱過ぎて助けられないとなった。なので俺が退屈にならず、先輩が数をこなせ、先輩が戦闘経験を積めるように模擬戦とした。
実はガルガロッソ先輩には実戦経験と言うものが殆どと言っていいほど無いのだ。
彼は生まれたその時から力に関するスキルを大量に得ており、そのまますくすくと成長し、入学から2年ほど前に住んでいた村を襲った亜竜を殴打1発で爆散させたのが噂になり特待生としてここに来たらしい。
入学する前からその馬鹿力に悩んできて学園には期待していたらしいがどうにも上手くいかなかったようだ。
そこら辺は詳しい事を聞いていないので分からない。
実戦経験に関してはダンジョンなどに授業で行く機会があったが、敵は全て1撃。経験などを積めない上に素材が取れなくなるので金稼ぎも出来なかったようだ。
そんな先輩の力加減をどうやったのか、疑問に思う事だろう。
その方法は1番最初に全力全開で殴り合いをし、自身の全力と限界を知って貰ったのだ。
そもそも力加減をすると言っても全力を知らなければどの位加減して良いのかが分からない。なのでその全力を俺と殴り合う事で知って貰った。
先生の方でもこれを思いつたはずだが実行しなかった。それは何故か。答えは実行出来なかったのだ。ガルガロッソ先輩の全力を受け止めれる場所である演習場があっても、受け止めれる人が居なかったのである
と言うわけで殴り合い、打ち合った。それを繰り返す事で慣れて貰った。
そして成果は既にでているので成功と言えるだろう。
「だー、疲れた」
未だ大の字のまま地面に寝そべった先輩が本当に疲れたという感じで声を出す
「お疲れ様です。もう大丈夫ですかね」
「そうだなぁ、あんだけ殴り殴られてもうよっぽどの事がねぇ限りは大丈夫だと思える」
しみじみと呟く先輩。相当きつかったみたいだ。
「にしてもよ~、お前さんもちゃんと殴られてたよな?なんでそんなピンピンしてんだよ。力を抑えてるって言ってもよ、俺も格闘術の授業受けてるからそれなりの威力があったはずなんだが」
「それは受けの技術ですよ。多分もう習ってるはずですけど」
「うーん、そんなの習ったかな」
そう頭を唸らせる先輩はどこか温厚な熊を連想させる。先輩はガタイが良いが顔は童顔なのだ。そして、こう言う仕草が一部にファンを作っているらしい
因みにその情報はイヴとナキアさん情報だ。2人は色恋関係の話が大好物なのでそういう系なら色々と知っている
「受ける場所をずらすことや筋肉の収縮で衝撃の分散や受け流しなどですね」
「つまり?」
「えーと、例えば顔面を殴られたとします」
「ふむ」
「その時にタイミングが重要ですが相手の攻撃に合わせて首を捻るんです。こうすることによって完璧に攻撃を無効化することは叶いませんがその攻撃の大部分のダメージを軽減することが出来るんです」
「そりゃまたとんでもねぇことをあの一瞬の攻防でやってたのか。驚きだよ」
心底驚いたという感情と何故か呆れを含んだ表情で言われた
「しかもそうやって説明するってことはスキルじゃねぇんだろ?」
「ええ、自前の技術ですよ」
「それこそとんでもねぇわな。おめぇさん、天才だわ。天才ってのは努力を無いものとして言うみたいだから嫌いだがこれしか俺は知らんからな」
ちょっとだけ申し訳なさそうにそう言うガルガロッソ先輩
「大丈夫ですよ。普通の人より才があるというのは自覚していますから」
ちょつとだけ笑いながらそう返す
「そうか。んじゃあ約束通り今日で終わりでいいぞ。散々付き合って貰ったからなんかありゃ言ってくれ。親善試合応援してるぜ」
そう言うと先輩はふらつきながらも立ち上がり、背を向けてをヒラヒラとさせながら演習場を後にした
親善試合とはなかなか高く買ったもんだね
まあ、ソウマ以外で本気の戦いが出来る奴がいるなら嬉しいけどね
これが、後の世にクウガやソウマ達と共に最強の一角に数えられることとなる《万象壊拳》のガルガロッソの成長の始まりである
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