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2章
65:暗躍と胎動
しおりを挟む「それで、例の小僧共の詳細は分かったのか?」
黒い石材の上から金の装飾が所々に飾られた悪趣味な広間。鎧が壁際にびっしりと並び、奥には大層豪華な椅子にて踏ん反り返る筋骨隆々で浅黒い肌、その頭部からは2本の捻れた角。周囲に裸の女を侍らせ、自分に敵などおらんと言いたげな不遜な顔
そんな男が目の前にて跪く緑髪の男へと問いかける
「以前にも一度報告しましたが、奴等は共にSSSランクである《魔闘士》アイト コウヅキの弟子です」
「それは分かっておる。今は何処におり、どれ程の実力でこれからの脅威度の話だ」
緑髪の男の発言に少し不機嫌そうにしながらも、言わせることを指定し、話を促す
「は。それにつきましては調べが終わっております。奴等は今、共に学園に通っております。実力の方は鑑定や解析にて測りましたが、遠くからでも感づかれる上に偽装によって分かりません。しかし、これからの脅威度はかなり高くなりそうです。早めの対処が得策かと」
主人の不機嫌さに動揺せず、淡々と報告を終える緑髪の男
「学園ならば人質を取るのが楽そうだな。それと、念の為にあいつにも動いてもらうか」
考えをまとめるために声に出していた男だが、そこに緑髪の男から待ったがかかった
「魔王様、あいつとは堕神のことでしょうか?」
何故聞かれたのか分からないというような顔をしながら魔王と呼ばれた男が鷹揚に頷き首肯する
「そうだ。ゴブリンキングとハリウスの野郎が送ったベドラグアも倒されてやがるからな、保険だ」
と言いながらめんどくさそうに答える魔王。しかし、緑髪の男からの返答は予想だにしていなかった事だった
「その堕神なのですが、つい先程消滅していた事が確認されました」
「なに!?」
魔王はそれを聞き、荒々しく立ち上がると、すぐに気を落ち着けて豪華な椅子、玉座に座る
「それは本当か?」
「はい、3日前の定期連絡の際に連絡が取れなかった為、確認として使者を送ったところ何時もの場所に居らず、調査の人員を派遣したところこの世から完全に消滅していたことが確認されました」
魔王は少しの間唸った後、何かに気づいたように眉間に皺を寄せ緑髪の男へと確認する
「消滅と言ったか?」
「はい、消滅です」
魔王をしかとその目に捉えて答える緑髪の男を見て真実であると認める
「つまり、もう復活は不可能という事か」
「はい」
「何処のどいつがやったかは分かっているのか?」
眉間に寄った皺をさらに深いものとして、再度緑髪の男へと問いを投げかける魔王
「その事ですが、痕跡が何処にも有りませんでしたので特定は不可能です」
「痕跡がない?どういう事だ」
「その通りの意味でございます。死霊術士による調査でも、隠密部隊の調査でも、魔術や魔法での調査でも痕跡は完璧に消されており、なにも分からなかった模様です。そもそも、堕神のいた場所に争った形跡がまず無かったようなのです」
「手口もわからんのか」
「それについては幾つかの予想がありますが、確実とは言えません」
その言葉を聞き、一時目を閉じて何かを考える魔王
数秒後に目を開けて緑髪の男へと言葉をかける
「まあ、分からないのならばもうその事について調べる事はせんでいい。堕神は使えるといっても所詮使い捨ての駒の中ではだ。小僧共の始末には別の戦力を向かわせろ。指揮はリヴァイアスに取らせろ」
「承知いたしました」
魔王の指示を受けてこの場を後にする緑髪の男
クウガ達へ危険が迫ろうとしていた
~~~~~~
ドクン ドクン ドクン
鼓動の音が確かなリズムを刻み、この暗い場所で響き渡る
発生源は人の、獣の、魔物の死体が積み重なる山の中
その音はこの暗い、暗い暗い場所に不気味なほどに響いている
周りに生物は存在せず、この音を聞く者はいない
ドクン ドクン ドクン
鼓動は少しずつ、本当に少しずつ、音が大きくなっていく
そして、変化は唐突に訪れる
一定のリズムでドクン、ドクンと響いていた音が途切れた
だが、次の瞬間。その変化は始まった
ドクンッ
と今までとは比にならないほどの鼓動の大きさ。そこから感じられるのは命の鳴動
ドクンッ
次いで死体の山の隙間。その山の中心辺りから赤黒い光が暗かった空間を照らす
ドクンッ ドクンッ ドクンッ
赤黒い光は鼓動と共に明滅し、怪しい光を放つ
そして
ドグンッ!
一際強い鼓動と共に死体の山が中心から広がった赤黒い球体に呑み込まれた
赤黒い球体はその表面を流動させる
ドクンッ
そして、またもや命の鼓動が赤黒い光によって照らされる空間に響き始める
すると、表面を流動させていた赤黒い球体は鼓動の音と共に縮小を始める
その大きさは積み上がっていた死体の山の大きさからどんどんと小さくなっていく
その膨大な力を圧縮するようにして
ドクンッ ドクンッ ドクンッ
球体は縮小を続け、遂には人間の一般的な成人男性より少し大きいくらいまでになる
そこで縮小が止まり、今度は表面の流動が加速する
流動の加速に伴って綺麗な球体の形をしていたそれは、細長いものへとその姿を変えていき
ドグンッ!!
一際強く鼓動が響き
ビカッ、と赤黒い閃光が瞬いた
ドンッ!
そうして吹き荒れる莫大な力の奔流、それによって吹き荒れる風
光が消え、力の奔流が収まり、風も通常のものへと戻る
再び静かになったその暗い空間に存在したのは、異形
4本の人の腕
針のように鋭い鬣のような髪
背から生える2対の翼と羽
鋭い棘が生える尻尾
足はドラゴンのように爪が生えている
更に頭部から天を突くようにして生えるそれぞれが異なる7本の角
今、ここに
イレギュラーが誕生した
「オレハ、ダレダ」
異形は片言になりながらも言葉を発し手で片目を抑えるような動きを取る
「ココハ、ドコダ」
異形は動きを止め、その場に静かに留まる
すると、何かに気付いたようにある方向に顔を向けた
「アッチダ」
そして異形は歩き出す
自分が感じ取ったその存在へと
行かなければならないと
確かな確信を持って、その存在へと向かい
歩を進めた
~~~~~~
ふと、何かを感じ足が止まった。何か、ソウマに感じるモノと似た何かを
「どうかしたの?」
俺が急に止まった事に疑問を持ったのだろうフレッドが問いかけてきた
「いや、何でもない」
「そう?何かあったら言ってよ。僕の索敵も完壁なわけじゃないから」
「ああ、わかってる。何かあったらちゃんと言うよ」
「じゃあ、見回りを再開しよう」
「りょーかい」
今までに感じた事が有ったような気がしたんだが、いつだったかな?
「明日からだよね?ダンジョンに行くの」
「ん?ああ、明日から夏季の長期休暇に入るからな。ガンガン攻略してくぞ!」
「え、ガンガンってどの位?」
「そりゃあ、お前1日最低5層くらい」
「それは厳しいんじゃ…」
「大丈夫。俺にソウマがいるから絶対できる」
「ついていけるのかなぁ…」
ハードさを想像して項垂れてしまった
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今回行く予定のダンジョンは俺とソウマが初めて攻略したミネラの塔型ダンジョンと同じくらいの難易度だが、罠がある分こちらにある物の方が難度は高い
今から楽しみだ
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