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2章
76:協力します
しおりを挟む25層に行って早くボスと戦いたいが、あいにくソウマの方で生徒会の仕事が入り、ダンジョンに行くのはやめになった
余談だがこの夏季休暇の間にソウマとナキアさん、それに殿下と一緒に王都に行くことになっている。まあ、殿下達の家族である王族、つまり王様に会うことになっている。何回か会っている上に王様は変わり者なので苦にならないので良いのだが
変わり者と言うのは良い意味でだ。物語で出て来るような自分の事しか考えないような糞みたいなのではなく、自らを律し、他人に優しく、国を思い、民のことを考える賢王として世に知られている。が、実際のところは少し違う。確かに国を思い、よく考えていたりとそこら辺は合っているのだが幼い頃はかなり奔放で好奇心も旺盛だ。師匠と一緒に冒険したこともあるらしく、仲が良い
まあ、会うことになるのはまだ先のことだ。ナキアさんや殿下の生徒会としての仕事が終わった後になる
生徒会の仕事とは休暇が明けて少ししたらある国内代表選抜試合関連だ。他にもやる事が有るらしいので忙しいそう。ソウマが愚痴っていた
それに比べると風紀委員会は夏季休暇の間には仕事がなく、自由だ
と思っていたのだが、昨日寮に帰って来るとナナ先輩とグレイス先輩が待ち構えており、話があるとのことで明けて翌日の現在、風紀委員会室に来ている
そしてその話とは
「私の恋人のフリをして欲しいんだ。頼む!」
いつもキリッと凛々しくカッコいいグレイス先輩が申し訳なさそうにしているのは新鮮だ
いやいや、そう言うことではなくて。何故に?
「えっと、フリってことは何か有ったんですか?」
話を聞いてみれば、とても面倒な理由があった
なんでも、ある1人の貴族の男子が何度断っても言い寄って来て非常に困っているらしい。しかもその貴族、性格が悪い。実力行使も考えたそうだが、その相手の貴族の格がそれなりに高く、実力行使を行った方が面倒になる可能性があるそう。例をあげたら家族を人質にして婚約を迫られたりとかだ
そして、その事を知っていたナナ先輩と共に考えたのが偽の恋人作戦らしい
でだ、何故俺なのかと言えば、単純に頼める人が俺だけだったのだ。今回の偽の恋人には条件がある。それは、貴族の男子を諦めさせる為なのでグレイス先輩よりも弱い人は論外だし、平民も難しい。なら俺はダメじゃんと思ったが、俺に関しては関係ないと言われた。じゃあ、サウザー先輩やレスト先輩でも良いのではないかと聞けば、サウザー先輩には彼女がいるので説得力が弱くなり、レスト先輩は既に帰省しており頼めず、ならヨロザ先輩とネルフ先輩はと聞いたら彼奴らは嫌だと言われた
それに対して俺なら実力は本物、代表となった事で証明されているし、ソウマやナキアさんとの繋がりもある、彼女もいない。うん、自分で考えてみれば納得できる内容だ
てか、ナナ先輩が物凄く鬱陶しいし、なんか変な執念?というかよく分からんのを感じる。なんなんだいったい
それでまあ結局引き受けた。俺のできる事だし、何より困ってると知って見捨てることなんて出来ないよね
で、早速だが例の貴族を呼んであるのでしっかり演技してくれよ、とソウマのニヤニヤ笑顔と似たような嫌味ったらしい笑みを浮かべながら告げてスッと姿を消すナナ先輩
俺が断っていたらどうするつもりだったのかとかいきなり過ぎることとかの文句を言いたかったが行動が素早い。最初からこうなる事を見越していたに違いない
ナナ先輩が消えてから、例の貴族が来るまでまだ少し時間があるそうなのでグレイス先輩と打ち合わせをした。なんか今までのグレイス先輩と違って物凄いモジモジしたり、顔を赤くしたりしていて体調が悪いのかと思った
それから暫くして貴族はやって来た
バーンッ
うわ、ノックもしないし、でかい音が鳴るような強引な扉の開け方でその貴族は入って来た
貴族に標準装備の筈の礼儀すら出来ないようだ
「グレイス!話があると言われたから来てやったぞ!やっと私の物になる事を受け入れたか!……その男は誰だ」
そのでっぷりと突き出た腹を揺らしながら胸糞悪い事をご機嫌に喚き散らして居たのだが、俺を見つけるとその雰囲気を不機嫌なものへと変えて問うてきた
というか、選抜試合を見ていなかったのだろうか。あの腹を見る限り動くのは苦手そうだ。見ていなかったのだろう。いや、太っているから動けないなんてのは偏見も良いところなのだが、この男に関しては間違ってはいないだらう
それじゃあ、予め決めていた通りに行動を始めよう
直ぐ近くにあるグレイス先輩の肩を掴んで俺の方に抱き寄せる。身長は俺の方が少し高い位なのだが、抱き寄せた勢いで先輩の頭が俺の胸の辺りに来る
そして、突然の俺の行動に呆けている貴族に向かって
「グレイスの彼氏ですよ。貴方こそどちら様でしょうか?それにさっきの発言の意味もお願いしますね」
そう言葉をかける。すると、貴族は激昂して外に待機させていた者達、取り巻きの生徒達と見た目からして執事の男を呼んだ
「おい!お前達!さっさとあの野郎を懲らしめて連れて行け!」
ゾロゾロと入ってきた取り巻きに貴族の男子が命令し、取り巻きが俺のことを認識する
そこでその中の1人が気づいた
「お、おい。あの銀髪と髪型って」
「は? あー、確かになんか見たことあるような」
「何言ってんだよ、金貰えるんだからとっとと片付けちまおうぜ」
「あ、まてよ!」
取り巻きの1人を除いた7人が学園内、それも風紀委員会室だと言うのに武器を手にして攻撃を仕掛けてきた
こいつらも馬鹿確定だな。こういうのは面倒だから代表者ということを知って逃げてくれると予想してたんだがアテが外れたみたいだ
別に傷なんか付かないし、ダメージもあんなへなちょこな攻撃では受けることなどないのだが、舐められるのも癪だ。それにグレイス先輩を傷付けられたしりたらナナ先輩が絶対に煩い。それは嫌なので幻剣の応用を使って直径5cm程の長さ3cm位の円柱を生成して7人の鳩尾に勢いよくぶちかます
ドフッと言う鈍い音を部屋に響かせて崩れ落ちる7人の取り巻き生徒達。突然の事に何が何やらといった顔でいる頭の悪い貴族の坊ちゃん。執事と言うことで多少なりとも戦えるのだろう、今起きたことを完璧にとはいかなくても理解して驚愕に目を見開く
そして、残った1人の取り巻き君が、あ! と何かを思い出したかのように声をあげて俺を指差しながら言った
「こ、こいつ、クウガですよ!代表になった!」
お、やっとか。その言葉を聞いた貴族の坊ちゃんはまだ今の状況を飲み込めていないようだ
「だからどうしたと言うのだ。その女は私の物だ!誰にも渡さん!」
「坊っちゃま、流石に今回は諦めた方が宜しいかと。あの者は私の手にも負えません」
「うるさい!いいからあいつを……」
うるさい奴だ。流石にそろそろ終わらせたい
抑え、隠していたプレッシャー。覇気ともいうを貴族の坊ちゃんに向けてやる
すると一瞬で口をつぐみ、かと思えば震え出してしまった
「いいか。さっきまでのことはなかった事にしてやる。だからさっさとこいつら連れて出て行け。2度と俺のグレイスに近づくな」
「は、はいっ!畏まりました!」
プレッシャーで身動きの取れなくなり、言葉すら発せなくなった坊ちゃんに代わって執事が答え、倒れた奴等と坊ちゃん、そしてもう1人を抱えて出て行った
かなりの重さの筈だが火事場の馬鹿力というやつだらうかなんとか運んでいった
あんだけ言っておけば大丈夫だろう。暫くはまだ偽恋人役は演じる訳だし。それにしても俺の女だなんて言い過ぎてしまった。 なんかの英雄譚で出てきたセリフだったからかポンっと思いついてつい、言ってしまった
「グレイス先輩、これで良いんですよね?」
そう聞いてみたのだが返答がない。おかしいと思い、先輩を見遣れば顔を真っ赤にして俯く先輩。あっれ~?これはもしかしてあれですか?偽恋人が実は口実だったとかあったりします?
そんな懸念を抱きながらも、復活した先輩にお礼を言われるのだった
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