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2章
98:危機迫る
しおりを挟む「がっはっはっはっ! ほら! 食ってるか!? フレッド! いや義息子よ!」
「ガルドを倒すとは大したもんだな!」
「ほらもっと食え食えー、俺らが取ってきた魚だぞー」
バシバシと背を叩きながら大音量で話しかけて来るイヴちゃんのお父さんであるガルドさん。結構痛い。それに続くようにおじさん達も話しかけてくる
なんかもう、流れで戦うことになっちゃって、凄く混乱してたんだけど
イヴちゃんの彼氏でいたいから頑張った
結果は僕の勝ち。まあ、相性が良かった
でも、イヴちゃんからお父さんは漁師と聞いていたので冒険者とか騎士の人とかより強いことは無いだろうと思っていた。けど、それは初手で思い違いであると思い知らされた
その動きは想定以上に速く、辛くも避けた拳が宙をきった際に生じた音と衝撃にびっくりした
ステータスやレベル、スキルのおかげで見た目だけでは判断が出来なくなっているのは分かっていたが見た目も重要だと再認識した。クウガやソウマには気配で感じろよとか言われそうだが
まあ、それでも僕の最大の長所である速さでは優っていたのでクウガに教えてもらった投げを用いて何とか認めてもらえた。それに、ダンジョンの魔物達と比べると劣っていたからね
ガルドさんがなぜ強いのかは聞いて理解した。というか考えてみたら思いつくことだった。彼等漁師は海に出て魚をとる。海に危険がないかといえば、そんなことは無い、海にも魔物はいるのだ。冒険者を雇うよりも自分達で対峙した方が効率も良く、出費が抑えられるかららしい。それと、漁師さん達は交代で門番なんかもやっているらしい。マークさんも漁師仲間だそうだ
マークさんの頑張れはガルドさんと知り合いで戦うことになると分かっていたからなんだそう。先程聞いた
そして、現在。ガルドさんに連れられて酒場に来ているのである。何でも
「男が仲を深めるっていったら酒場だろ! 皆んなにも紹介してやるぜ!」
という感じで晩御飯を兼ねて街にある酒場にやってきた次第である
酒場では1日の仕事を終えた漁師の人たち、依頼を終えた冒険者など沢山の人が飲み食い、騒いでいた
「あ、そういやガルドよー」
「なんだ?」
騒いでいた漁師の1人が何かを思い出した感じでガルドさんに話しかけた
「領主様には会えたんか?」
「いや。昨日また聞きに行ったんだが、まだ無理だと言われた」
ガルドさんはここアルンの漁師の纏め役なのだそう。無茶苦茶自慢された
「何かあったんか? 」
「それがよ、忙しいって事しか教えてくんねぇんだよ」
「そろそろ祭の打ち合わせ始めねぇと間に合わんくないか?」
あ、マークさんが話に入って来た
「そうなんだよな~」
うーんと唸るガルドさん
バァン!
突然、酒場の入り口のドアが勢いよく開かれ、壁に当たって大きな音が響いた
酒場にいた全員が入り口に目を向ければ、1人の男性が息を切らして立っていた
「ぜぇぜぇ、た、大変だ! 海から魔物の大群が!」
酒場が静まり返る
「数は!?」
見た目から冒険者であろう人が情報を伝えに来た人に問いを投げかける
「正確な数はわからん! とにかく多いらしい! 冒険者はギルドに至急集まれだそうだ!」
「了解。お前ら行くぞ!」
「「「「おう!」」」」
「俺らも行くぞ」
冒険者の人達が直ぐに酒場から出て行く
残ったのは冒険者以外の人達
「よし! 俺らは避難の準備だ! 家族や近所の奴らにも知らせろよ! 大群って話だから戦える奴は家族を避難場所に送ったらギルドに行って指示を仰げ!」
ガルドさんがリーダーシップを発揮し、指示を出す
バタバタと騒がしくなる酒場
「フレッド、一旦家に帰ってヒルデとイヴをギルドに連れて来てくれ俺は先にギルドに行く」
「分かりました」
普通なら避難させるのだが、イヴちゃんは戦力になるし、ヒルデさんも元冒険者でそれなりに強い人らしい。今は街のピンチで敵が多いのに戦力を持て余すことはよくない
自分としてはイヴちゃんに危険が及ぶ可能性があるから反対だが、それはガルドさんにしても同じはずだ
酒場を出て上の屋根へ。通路は人が多く、スピードが出し辛い。屋根伝いにイヴちゃんの家まで全力疾走
直線で行けるので2分とかからずに到着する。既に情報が届いていたのだろう。武装した状態で玄関前に待機していた
「イヴちゃん! ヒルデさん!」
「フー君!」
「夫はなんて?」
屋根から飛び降り、2人の前へ
「2人と一緒にギルドに来いと。ガルドさんは先にギルドに行ってます」
「分かったわ。行くわよ2人とも!」
「はい!」
「うん!」
3人でギルドへ向けて駆け出した
「何だよあの数は……」
マークさんが言葉を漏らす
ギルドへ行き、ガルドさんや他の戦える人達と合流し、場所は港
目の前に見える海にはこちらに向かって来る魔物の大群
【探査】のスキルを発動する
魔物の数は10、20、50、100、300、400、もっといる。とんでもない数だ
「魔物は400を超えてます!」
「不味いな。ギルドの話だと今Aランク以上の冒険者がいないと言っていた。上陸される前に出来る限り減らしたい……イヴ!」
「おっけー! ウチに任せて!」
真剣な表情となり、イヴちゃんは精霊を呼ぶ
「カナリス! ディーナ!」
イヴちゃんの呼び声と共に、魔力が渦を巻き、2体の精霊が顕現する
中性的な容姿、属性と同じ体色。イヴちゃんが呼んだのは風属性の精霊のカナリス、水属性の精霊のディーナ
「全力であいつらやっつけちゃって!」
その言葉でイヴちゃんから精霊に膨大な魔力が譲渡され、精霊による魔法が発動する
宙に次々と生み出され、発射されていく風の刃
海水が蠢き、水の針を形成し魔物を穿つ
風が渦巻き、竜巻となり空へと魔物が打ち上げられる
海水が渦となり、海中へと魔物を引きずりこむ
精霊による圧倒的な魔法によって数を減らしていく魔物
けれど
今ので減ったのは……60前後
魔物の数が多すぎる!
「うっ」
「イヴちゃん!」
イヴちゃんが呻き声を上げ、前のめりに倒れこむ
すぐに駆け寄って抱きとめる
それと同時に精霊が消える
魔力が底をついたのだ
「フレッド、イヴを連れて避難しろ」
ガルドさんだ
確かにこのままイヴちゃんがここにいても危険なだけだ
けれど僕は動けるし、あの魔物の数だ。人数はいればいるだけ良いはずだ
僕はその事を伝えようと口を開いたが、それよりも先にヒルデさんから言葉がかけられる
「フレッド君、今は私達の言う事を聞いてイヴを連れて避難して。貴方が戦えるのは知ってるわ。けれどその力はイヴ守るために使ってほしいの」
ヒルダさんは僕が言いたい事は分かっているのだ
「もしも、危なくなったらイヴと一緒に迷わずに逃げなさい」
それでも、イヴちゃんを守ってほしい。いや、守りたいのだ
「俺らも死ぬつもりなんかねぇよ。魔物を倒して生き残る! だからここは俺らに任せてお前さんはイヴを頼むぜ」
ニカッと笑いながら僕の頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でるガルドさんが霞んで見えた
「行け」
イヴちゃんを背負い走り出す
振り返ることは出来なかった
僕は走る
また何も出来ない自分に悔しさを覚えながら
避難場所の領主館へと
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