Heroic〜龍の力を宿す者〜

Ruto

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3章

116:弱者と強者

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かなりの破壊力を持つ拳撃を足捌きと体捌きで躱し、鋭い切れ味の爪撃も同じように躱す。躱しきれない時は槍を用いて攻撃を逸らす

練撃が途切れた所でソウマは化物から距離を取った

それに対し化物は地面を破壊し、地を揺らすほどの勢いでソウマとの距離を詰める

まただ、さっきよりも速さが上がってやがる。今ので3回目。攻撃を加えたから速くなったのかと思って、攻撃はせずに回避のみで立ち回ってみたけど、それから速度が2回上がった。速度が上がるのに比例して力も上昇。攻撃が関係ないってことは別の要因があるってこと。例えば、特定の感情の上昇とかな

ソウマは観察から得た情報を基に結論を下した

攻撃してもしなくても変わんねぇなら攻撃した方が気楽で得だな!

距離を詰めてきた化物の懐にソウマは飛び込み、槍を左手に持ち右手を空け、空いた右手で掬い上げるように拳打を繰り出した

「ガアァッ!」

もろに攻撃をくらい、2mを越す化物の足は地を離れる

ソウマは流れるように次の攻撃へ

後ろに置いていた右足を前に出しながら、その右足を軸として体を左に回転させ左足による蹴撃を化物に叩き込む

「ッ!」

化物はそれに反応してみせたが防御のために腕で受ける事が精一杯。足が地を離れ踏ん張る事のできない化物は宙へと打ち上がる

痛みに耐える化物の視界の端、そこに捉えていたはずのソウマの姿が搔き消える

視線を必死に辺りに巡らすも見つからない

突然、化物に影がかかる

それは小さな影。雲による影ならもっと大きなはず

上を向き、見えたのはソウマが槍を振り下ろす瞬間だった

化物は反応すらできず、顔面に槍を叩きつけられ吹き飛ばされた。空中から地面に叩きつけられてなお、その勢いは止まらず、地面を削りながら転がっていき建物にぶつかってようやく静止した

だが、直ぐに化物は立ち上がる。ソウマを見据え、より憎悪を膨らませる




~~~~~~




「ん……」

ここは……ベッドの上? 体を起こし、左側を見れば同じベッドが並んでいる。病人用の天幕だ

そうだ、彼女の所に行こうとしたら皆んなに止められて、急に意識が保てなくなったんだった

体は動く。いや、動くどころか怪我が治ってる。これなら

「行ける」

「どこに?」

「!?」

右側から声。聞いた事のない声だ。声のした方を向けば、青い服を着た銀髪の男。角が生えてるから鬼人か竜人か。縦に伸びた瞳孔からして竜人か。取り敢えず知らない顔だ。それにかなりの美形だな。でも、歳はいくつだ? 俺よりは上に見えるが大人ではなさそうだが

「お前、誰だ?」

「先に質問したのはこっちだよ?」

「お前には関係ないだろ」

「あるよ」

「ねぇだろ。お前の顔は初めて見る顔だ。たまたま通りかかった冒険者か商人辺りだろ」

「んー、間違いではないんだけど。もう関わるって決めたから」

この時の感覚を俺は生涯忘れる事はないだろう

目の前にいる奴の青い瞳から視線を外せない。いや、外してはいけないと。外してなるものかと俺の心が叫んでいた

そうして直感した。こいつは強いと。力とかレベルとかじゃなくて心が俺みたいなガキなんかとは立っている場所も見ている場所も経験してきた場数も、全てにおいて俺は劣っていると

ここで押し黙るのは簡単だ。ただ口を閉じていればいいのだから

けれど、何かを言い返さないと俺が俺で無くなってしまうような気がしたんだ

「お前が決めた決めてないは関係ねぇんだよ……これは俺の闘いだ! 俺が俺自身に誓ったんだ! この命に代えてでも彼女を守ってみせるって!」

言い切った時、目の前に存在する竜人の圧が上がった。気のせいなんかじゃない。息も少し苦しくなった

「それは、誓いなんかじゃない。唯の自己満足だ」

背筋が凍るような声音だった。目の前にいる存在が恐ろしくなった

でも、俺は言い返した

「お前が! 俺の何を知ってんだよ!」

頭にきたんだ。俺の誓いを真っ向から偽物だと否定されて

けれど、俺の言い返しはあっさりと切り捨てられる

「君のことを知っているかどうかなんて関係無い」

「は?」

俺は意味が分からずに呆けたような声を出した

俺の言った何かが目の前の奴の地雷だったのだろう。いきなり胸元の服を掴み俺を軽々しく引き寄せた。その怒気を孕んだ瞳に囚われた

「命に代えてもなんて軽々しく言うな! 君のことを大切に思う人がいるんだろ! 君の為に己の腕すら犠牲にする人がいるんだろ!」

「そんなこと分かって」

「分かってない!」

「っ!」

「分かってたなら、そんなことは絶対に言わないんだよ! あの人は君を死なす為に助けたんじゃないぞ! 生きて欲しいから、助けたんだぞ!」

「でも、でも俺は何もしないなんて耐えられない! 力がないから命くらいしか賭けられないじゃないか!」

ここだけは、譲れないんだ

知らないうちに俺の手は相手の胸元を掴み返していた

「それが間違っているんだ! 君の命を犠牲にして守られる方の気持ちを考えろ! 力がないなら耐えてみせろ! 耐えて耐えて命を賭けなくても助けられるくらいの力をつけろ! 」

「時間が……無いんだよ」

クウガを掴んでいたカミナの腕が力なく垂れ下がる

「聞いたんだ。あの屑どもが逃げる最中に話してたのを。もう長くは生きられないって笑って話すあいつらの声を!」

カミナの声は震えていた。怒りを爆発させないように、涙を流さないように

クウガは掴んでいた手を離す

「力が無いのを自覚して、時間が無いことを知って、なんで周りに頼らなかったんだ! 君の事を大切に思う人を、なんで信用しなかったんだ!」

「体が考えるよりも先に動いてたんだ!」

「っ!」

今度はクウガが言葉に詰まった

「でも、そのせいで」

カミナの瞳から涙が溢れ出す

「カントの腕、俺のせいで、無くなっちゃったんだよ。カントより強い人なんて俺、知らないのに。誰に頼れっていうんだよ」

力無き者は見ていることしかできない

自分に力がなく、自分より強い味方も戦えない。普通なら手詰まりだ

けれど

「俺がいる」

クウガは立ち上がり、声を張る

「俺と仲間が此処に居る!」

カミナは俯いたまま

「お前が居たら、なんだってんだよ」

もう一度クウガはカミナの胸元を掴み上を向かせる

「彼女を救える」

揺るがぬクウガの瞳、それを見てなおカミナは信じれなかった

「本当なのかよ」

「ああ」

「大人でもどうにもできないんだぞ、それでも出来るってのかよ!」

「ああ」

クウガの瞳は小揺るぎもしない

その瞳にカミナは何を見たのか

「なら……お願いだよ。彼女を、助けてくれ」

カミナの頬を流れるは悔しさの涙。どうすることもできない自分が許せなかったのだ

「任せろ」

クウガは一言答え、去っていく

カミナはシーツを握りしめ涙を流す

すると、クウガは出入り口で立ち止まり、カミナの方へ振り返る

「それと、君には成すべき事がある。それは君にしか出来ないことだ」

泣いていたカミナは顔を上げ、クウガの方を見る

「どういうことだよ」

「それは、カントさんが教えてくれる」

そう言うとクウガは天幕を出て行った

入れ替わるようにして、カントが入ってきた

「カント……え、腕が」

カントをその目に捉え、負い目から目を逸らそうとしたカミナは途中である事に気付き逸らすのを止めた

「彼が治してくれたんだ」

カントは天幕の外を見ながらそう言った

それを見て彼を指すのが先程まで此処にいた銀髪の竜人である事をカミナは理解した

あいつはそんなに凄い治療士だったのか、そんな奴が戦えるのか? など色々と疑問が湧いてきた。けど今は銀髪竜人が言った言葉

「カント、俺にしか出来ない成すべきことってなんだ」

カミナの問いを聞いたカントはベッド脇に移動し、先程までクウガが使っていた椅子に座り、カミナを見据えて話し始めた

「カミナ、今から話すのはとても重要な事だよく聞いてくれ」

「わかった」

カミナの返事を聞き、カントは一度深呼吸をし、それを告げた

「今まで秘密にしてきたが、お前にはこの国の王家の血が流れている」

「え?……えぇぇぇぇぇぇ!?」

カミナの驚きの声が傷病人のいなくなった天幕に響き渡った

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