神崎家シリーズSS集

松丹子

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好色3人男

阿久津編

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「こんにちはー!」
「どうぞ」
 土曜、日が真上に来る頃。
 助手席のドアを開けてやると、女が乗り込んで来た。先週合コンで会った女だ。
 車は持ってないがドライブと店の開拓が趣味だ、という俺の話に興味を持っていたようだったので、飲み会後、お礼として送ったメールに「機会があれば一緒にどう」と添えておいた。
 返信で「どこかオススメある?」と聞かれ、「冬場の海沿いもなかなかオツだ」というと、「じゃあ連れてって」というわけで今に至る。
 同期の色男は即日「お持ち帰り」ができるようだが、基本的に俺はそうはいかない。虎視眈々と機会を伺い、そういう流れに持っていく。
 
 BGMにはボサノバ系の曲を選ぶ。海岸沿いに車を走らせた。晴天で気持ちのいい日だが、冬場ということもあり車は多くない。
 青々と抜けた冬空と輝く海。都会では地平線など見られないのでこの水平線の緩やかな丸みはぼんやり眺めると癒される。
「うっわぁ、ほんと気持ちいい」
 女は助手席でご機嫌にしている。その横顔をちらりと見つつ、まあ許容範囲と改めて品定めする。
 合コンなんてものは基本的に夜に開催する。日中見る顔はまた違っていて、化粧の濃さも肌の状態もよくわかる。
 が、つりあがった三白眼だけでも怖がられる俺のこと、贅沢は言ってられない。ドライブなんていうのは密室空間で、行き場も相手に任せた状態だ。それでほいほいついてくるというのなら、当然俺が誘えば断らない気でいるのだろう。
 誘うってどこにって?
 そりゃあまあ……。
 横顔の観察はほどほどに、俺は運転に集中した。
 
 しばらく街道沿いを走らせ、遅めの昼食をレストランで済ませて、手近な水族館に入る。
 さすがにいきなりホテルに向かうほど野暮じゃない。ある程度女にソノ気になってもらうには日中のストーリーも必要と分かっている。
「水族館とか久しぶりー!ペンギンかわいー」
 女はきゃっきゃと盛り上がっている。俺は適当に合わせつつ、腕時計で時間を確認してイルカショーへと誘ってやった。
「最前列行ってみる?」
「迫力すごそー!」
 俺の裏心にも気付かず、女はのこのこついてくる。
「前方の席は水がかかる場合がありますので、お気をつけてくださーい!」
 場内の案内係がアナウンスして、女はちらりと俺を見た。
「水かかるって。寒くない?」
「でも、前で見る機会ってないだろ。夏に来ても子どもたちがいるし」
「そっかぁ。そうかもー」
 案内係が持って周る合羽をそれぞれ借りることにした。
 
 始まったイルカショーでは、イルカが前でジャンプをし、思い切り水がかかった。合羽を身につけていたとはいえ、足元や首もとが濡れて二人で笑う。
「やばーい! でも楽しかった」
 野外から館内に戻り、ほくほく顔で女が言う。
「結構濡れたね。寒くない?」
「外に出たら寒いかもね。車だから平気かな」
「でも、少し外歩くよ」
「そうだね」
 館内から出て、二人で駐車場へ向かう。
「風邪引かないでね」
 俺が肩を抱き寄せると、女は少し驚いた顔をしてから笑った。
「ありがと。優しいね」
「どういたしまして」
 駐車場に向かう途中に、海越しの夕焼けが見えた。
「わ、きれーい。まだ4時なのに」
「うん」
 女の肩越しに、海と夕焼けを眺める。
「夏だと遅くならないとこんなの見れないっしょ。冬は空が澄んでるから色が綺麗だし、早めの時間に夕焼け見られるから、オススメ」
「あー、なるほどー」
 女は笑って夕焼けを眺める。しばらく立ち止まって見ていると、ふるりと震えた。
「冷えたでしょ」
 肩を引き寄せて耳元でささやく。
「あったかいとこ、行かない?」
 女はちらりと俺を見て、くすりと笑った。
「うん、いいよ」
 言って、俺の腕に腕を巻付ける。
「それもオススメあるの?」
「どうかなぁ」
「慣れてそー」
「心外だな、人を遊び人みたいに」
「違うのー?」
 言いながら車に向かう。
 脳内では近隣ホテルのリストを引き出し、さてどこにするかと考えていた。
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