神崎家シリーズSS集

松丹子

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神崎くんは残念なイケメン 関連

本編前段(幸弘視点)

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「小林くんっ!神崎くん、どこか知ってる!?」
「ざっきーなら、一号棟行くって言ってたよ」
「ほんとっ?ありがとー!」
 本日三度目、今週では何度になったか分からない会話を知らない女子と繰り返して、俺はその背中に手を振った。
 文化祭のミスコン出演への言質を取るべく、女子が神崎隼人を探しているのである。
「ーーありがとう」
 後ろから沈鬱な面持ちで表れた美丈夫こそ、ざっきーその人である。いやー、男の俺から見てもイケメン。いつ見ても、こういう憂鬱そうな表情でも、イケメン。
 そんでさ、結構、性格もいいんだコイツ。こんだけ見た目よくて中身よくて、女子が放っとく訳がないよな。俺だったら放っておかないね。
「大変だなぁ、人気者も」
「人気者っていうか……」
 返ってきたのは苦笑だ。
「人気者っていうのは、こばやんみたいなのでしょ」
 言われて首を傾げた。とりあえず俺はざっきーのように人に追いかけ回されたことはない。
「自然と人が寄って来る。ーー無自覚?」
「ええ?普通じゃない?」
 確かに集団生活をしているときにぽつんと一人になることはない。けど、だから人気者とも思わないんだけど。つーか俺、平気で周りに話しかけちゃうからね。人見知りはするんだけど。ーーって言うと、あんたのそれは人見知りって言わない、って呆れられる。高校からの友達である鈴木香子に。
 そんなことを思い出していると、ざっきーは嘆息混じりに言った。
「でもほんと助かる。今度何かお礼するよ」
「え、マジで!?」
 ただ大変そうだから協力していただけのことだが、そう言われればあえてお断りする気もない。
「……大したお礼はできないよ?」
 いきなり弱腰になるざっきーはちょっと不安げな顔をしている。あ、そういう顔もすんのね。あんまり表情崩さないざっきーだけど、俺には結構心を許してくれているらしくていろんな顔を見せてくれる。
「うん、大したお願いしないから」
 これまたいつも、安上がりな奴、と言われる。数十円の駄菓子やアイスをリクエストするのが通常。俺の味覚お子ちゃまだからさ。好きなんだよね、そういうの。
 何にしようかと考えていて、急にぴんと来た。
「そうだ。サークルの発表会、見に来てよ」
 俺の言葉に、ざっきーはアーモンド型の目をぱちくりとまたたかせる。
「って、合唱サークル?」
「そうそう」
 俺はインカレの合唱サークルに入っている。近くの女子大に通う高校時代の友人も誘い、ただ今、部員一同客の確保に勤しんでいるところである。
 ざっきーが来てくれると、女子喜びそうだし。
 いや、つーか俺もテンション上がる。
 にかっと笑ってざっきーを見ると、困惑した顔で分かったと頷いた。
 やりー!これでもし、興味なんか持ってくれて、入ってくれちゃったりなんかしたら、俺表彰されてもいいと思うんだけど!
 ま、妄想は自由だからね。そんな都合よく行かないだろうけどね。
 そんなことを思いつつ、俺はざっきーの肩を組んで歩き出したのだった。
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