神崎家シリーズSS集

松丹子

文字の大きさ
7 / 29
好色3人男

ジョー編

しおりを挟む
『よう。元気?部署異動あったんだって?』
「うん、まあ」
 電話は大学時代の友達だった。大学時代も飲み会要員として名ばかりのテニサーに入っていた俺は、その後もその縁でなにかと誘いを受ける。
『出会いとかあった?』
「出会いねぇ」
 25を過ぎた辺りから、合コンに誘われる回数がやたらと増えた。それだけみんな出会いを求めているらしいが、俺はまだ焦るような年齢でもないので気が向いたときに参加している。ーーとはいえ、基本的に賑やかな場は嫌いではないので、予定がなければ断ることはないが。
 そんな気質を察してか、隣のデスクの先輩は自分が誘われた合コンの案内を俺に回すこともあるくらいだ。精力の有り余った俺はありがたく利用させてもらっていて、最近は先輩を経由せず直接先輩の友人から連絡をもらうこともある。
 本気の出会いなるものを求めるたちの男からは、俺はビッチの探索機代わりと重宝がられている。ーーつまり、俺にお持ち帰りされるような女はいくら魅力的でも結婚相手には向かないと、そういうことらしい。
 さて、異動しての出会いといえばーー
「同じフロアに、すげぇ色っぽい先輩がいてさ」
『はあ』
 話し始めた俺のワクワクは全然相手に伝わっていないらしい。気のない返事を気にもせず、俺は話しつづける。
「部署は違うし、俺らより一回り年上らしいんだけどさ、もーなんつーか歩く性器みたいな。見かける度にくらっくらすんの」
『ほー。じゃ、やめとく?』
「何で?相手は?」
『スッチー』
「マジか。当然行くっしょ」
 電話の相手は俺の台詞に、そう来なくっちゃと笑った。
 
「かんぱーい」
 手元に飲み物が行き渡った後で、幹事の声かけに合わせジョッキを掲げる。四対四の飲み会、俺はざっと女性陣を眺めて目星をつける。さすがにスチュワーデスということで四人ともそれぞれ整った容姿をしているが、抱くなら向こうのテーブルの子だな。黒いロングヘアーをさらりと流していて、黒い膝下丈のタイトスカートに覆われた太もものラインが美味しそうだ。
 思いつつ見ていると目が合った。にこり、と笑うと如才ない笑顔が返ってくる。
 ーーもーらい。
 その瞬間、まだ始まったばかりの飲み会が終わるときを心待ちにする俺だった。
 
 目当ての子がお手洗いに立ったタイミングを見計らって、俺も手洗いに席を立った。
 ちょうど出てきたその子が向けて来る笑顔に、人懐っこいと評される笑顔で応える。
「気に入る男、いた?」
 俺が問うと、その子はわずかに目をさ迷わせた。その目を見ながらふと思う。
 もう少しマスカラは控えめな方が好みだな。そういえば色気を感じる会社の先輩はマスカラをしていないようなのだが、充分に魅力的な目をしているーーそう、ついこちらが襲い掛かりたくなるような。
 そんな風に想いを馳せるが、表情には出さない。ためらいつつも笑顔を向けるその子に一歩近づき、顔を覗き込んだ。
「この後、抜けようか」
 囁くように言うと、数度のまばたきの後、小さく頷く。俺はにこりと笑ってその肩に手を置くと、トイレ行ってくるねとその手を挙げた。
 
 会計を済ませると、みんなに気づかれない内に手を引いて抜け出す。その子は手を引かれながら慌てたようだった。
「みんなに何も言わなくていいの?」
「これから二人で過ごしますって?」
 俺は笑って答える。
「それこそ野暮じゃない?」
 言われて確かにと思ったらしい。黙ったその子の両手を両手でつかまえる。
「それにさ、わくわくしない?隠れんぼみたいで」
 俺はその顔を覗き込む。
「時々は羽目を外すのもいいじゃない。こういう夜は、思い切り楽しまなくちゃ損だよ」
 俺の笑顔につられたように、彼女も笑顔になった。
 
 ーーまあ結局は、その一夜だけでいいかな、っていう子だったけどね。
 だってこればっかりは、一度そうなってみないと分かんないじゃない?ーーって言うと、隣のデスクの先輩に呆れられるんだけどさ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

色づく景色に君がいた

松丹子
現代文学
あの頃の僕は、ただただ真面目に日々を過ごしていた。 それをつまらないと思っていたつもりも、味気なく思ったこともない。 だけど、君が僕の前に現れたとき、僕の世界は急激に色づいていった。 そして「大人」になった今、僕は彼と再会する。 *タグ確認推奨 関連作品(本作単体でもお楽しみ頂けます) 「明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)」(妹・橘礼奈) 「キミがいてくれるなら(you are my hero)」(兄・橘悠人)

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

Husband's secret (夫の秘密)

設楽理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

処理中です...