神崎家シリーズSS集

松丹子

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好色3人男

政人編

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 飲み会の誘いに乗って集合場所に着いてみれば、そこには見知らぬ女が三人いた。
 またやられたと思いつつ、もうこのパターンは慣れっこだ。適当に飲み食いして帰ろうと心中で見切りをつける。
 合コンの客寄せパンダ代わりにされるのはいつものことだが、最近は面倒なとき会社の後輩を紹介したりしていた。今日のこの手は普通の飲み会といえば来ると踏んだ大学時代の友人に時々使われる。
「神崎さんは、どこにお勤めなんですか~」
 大学、就職先、趣味、土日の過ごし方。
 まるでお見合いのように決まり切った話題を振られ、適当に答えつつ、乾杯のビールを飲み干しハイボールへ手を出す。
「神崎さんって結婚願望とかあるんですか?」
 目の前に座る女はくるくるに巻いた髪をハーフアップにまとめている。ファッションもコンサバティブで男受けを狙っているのだろうか。でも顔立ちから浮いている気がする。
 どうして女はこう着飾りたがるのだろう。自分の顔形など、男以上に毎朝よく鏡で見るのだろうに、自分に何が似合うか分からないのだろうか。自分だからこそ冷静に見られないということだろうか。だったら他人に聞けばいい、自分に似合っているものが何か。少なくともこの手のごちゃごちゃしたファッションが似合うのはよほどの上級者か相当キャラクターの濃い人間だろう。
 考えながらも表情は無難な笑顔を浮かべている。この程度の社交辞令はお手の物だ。
 しばらく飲み食いして、手洗いに立ちつつ時計を見た。開始から二時間。腹も満ち足りたしもういいだろう。
「悪い、仕事持ち帰ったから今日は帰るわ」
 友人はおぅと応じた。どうせ嘘だと分かっているだろうが、ここまで盛り上げたので許してもらえるだろう。財布から会費を出して幹事に渡す。
「ええー帰っちゃうんですかぁ」
「ごめんね。また機会があれば」
 にこりと笑顔を返すとコートを手に取った。
「私もそろそろ私も帰りますー」
 俺の正面に座っていた着飾った女が立ち上がった。
「えー。何、いつの間に示し合わせたの?」
「えー違いますよー」
 女は手を振った。
「明日、早番になっちゃって。今日あんまりゆっくりできないんですー」
「そっかー残念」
「また飲もうねー」
 そこそこ如才ない態度だったからか、男たちからすると感触は悪くなかったらしい。俺にとってはどうでもいいことなので、じゃあ、と立ち去る。
 店を出ると女が当然のようについてきた。
「私の家、ここから徒歩圏内なんですけど、最近痴漢が出るらしくて」
「ふーん、そうなんだ。どの辺なの?」
「あっちの方、十分くらいのところです。隣の駅との間くらいなんですよねー」
 言葉に出さないまでも、目が送ってくれと言っている。腹の探り合いのような会話も面倒くさいので、内心嘆息しつつ言った。
「送ろうか?」
「え、ほんとですかー。嬉しー」
 女は無邪気そうに喜んだ。
 
 女に従うままに歩いて行くと、毒々しいネオンライトに照らされた道についた。
「ふぅん」
 俺は鞄を持つ手を肩にひっかけつつ、片手をポケットに突っ込んで歩いている。
「こんなとこに住んでんの?」
 女の意図はもう明確だったが、面倒ごとは避けたいので最後のあがきだ。
「やだぁ、もう。ーー分かってるくせに」
 ふふ、と女は笑う。好みでも何でもない顔だが、造形が悪い訳ではない。
「まあ、分かってるけどさ」
 目を反らす。あーめんどくせー。やっぱり送るなんて言わなければよかった。せっかく早めに出て来たのに。
 女は俺の腕に腕を巻付け、胸を押し付けてくる。
「据え膳食わぬは男の恥よ」
 ヒールの靴で背伸びして、上背のある俺の耳元に囁く。
 まあ恥だかなんだかはどうでもいいけどさ。
「俺、特定の女作る気ないよ」
 ここまで直接的ではないが、飲みの席でも同じようなことは言った。確認のためである。
「いいよ。一度だけでも」
 あー、めんどくせ。
「言ったな」
 ちらりと投げた目線には、今までの社交辞令はない。女は満足げに鼻を鳴らした。
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