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安田夫婦関連
ジョーの災難1/4
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リクエストいただいた作品です
テーマは「ヨーコの色気」笑
***
「あー、疲れた」
出張から帰ってきたジョーが、デスクにがくりと両手をついた。
今日はイベント会場を提供してくれるホテルでの打ち合わせだったはずだ。俺は後輩の横顔をちらりと見つつキーボードを叩く。
「どうした、珍しいな」
「マーシー担当変わってくださいよぉ」
なんとなく疲れの見える顔に俺は笑いそうになる。それを目にしてジョーは唇を尖らせた。
「人の不幸を喜ぶなんて、マーシーひどい」
「お前が疲れてる顔なんて初めて見るかもしれないな」
俺が答えると、ジョーは深々と、本当に身体中の息を吐き切るように、ため息をついた。
かと思うと、不意にすっくと上体を起こす。
「ちょっと財務部行ってきます」
「おいおいおいおい待てよ。何だそれ。意味分かんねぇぞ」
咄嗟にその手首をつかむと、据わった目つきで睨まれた。
「ヨーコさん補充してきます」
「更に訳が分かんねぇこと言うな」
ほとんど反射的に応じたとき、事業部のドアが開いた。入ってきたのは話題の人でありジョーの最愛の人、名取さんだ。
ジョーの思いが伝わりでもしたのかと、思わずほほうと感心している俺の横で、ジョーが途端に顔を輝かせるーーが、これまたいつも通り、名取さんはジョーを軽やかにスルーして俺のところまでやって来た。
「マーシーお疲れさん。ちょっと聞いてもええか?」
「いいですけど」
疲れているせいでいつもよりも殺気立ったジョーの視線を感じつつ、俺は苦笑する。
「ワンコへの用はないからな」
一応フォローしようと息を吸ったものの、名取さんの言葉に遮られ、言葉の代わりに息を吐き出す。ジョーが泣きそうな顔をしていた。ほんとこの夫婦どうなってんだろう。カップルのときからよくわからない。
俺は後ろ頭をかきながら、俺のデスクに置いた名取さんの広げた書類に目を通す。書類は来年度の予算の積算で、イベント事業費について確認したいらしい。立っている名取さんに合わせて俺も立ち上がろうとしたが、やんわりと肩に手を置かれた。そのままでいいということらしい。仕方なくそのまま書類を目にするーーが、書類の上にわずかに屈む名取さんとの距離が近い。コロンや香水ではない、甘やかな香りもふわりと漂ってきて、正直居心地が悪いーーその横でふて腐れている彼女の夫のせいで、余計。
しかしそれはそれ、意識を切り離して書類に向き合う。名取さんは数字を指し示しながら口を開いた。
「新規事業があるて聞いたけど、予算はほとんど変わってへんな」
「ああ、それ」
ほっとしてジョーを示す。
「担当、ジョーなんで。直接聞いてください」
言うが、名取さんはぽってりとした柔らかそうな唇を尖らせて見せた。
「マーシーのいけず。そんなにうちと話すの嫌やのん?」
「何でそうなるんですか……」
がくりと肩を落としながら、殺気と嫉妬と寂寥その他色んなものがごちゃまぜの視線を俺に送り続けるジョーに目をやる。
「ジョー、とっとと説明の準備しろ。俺、トイレ」
「はぁい」
何だよその不服げな態度。振ってやったんだから喜べよ。
ったく、イチイチ巻き込まれる俺はどんだけ損な役回りなんだ。
思いながら廊下の先にある手洗いまで歩き出した。
極力ゆっくりと用を済ませて、肩を回したり首を回したりして、そろそろいいだろうとデスクに戻ると、もう名取さんはいなくなっていた。
「補充、できたのか?」
椅子に腰掛けつつジョーに言うと、
「話したくらいじゃ足りませんでした」
あっさりとジョーは答える。が、先ほどのような死んだ目はしていない。むしろ残業をしない為に仕事に集中し始めているのがうかがえる。
「美味しいもの作って待ってたら早く帰ってきてくれるって。何にしようかなぁ。でもその前に報告書上げてこ」
ぶつぶつ呟くジョーの声に、隣のデスクがお花畑になったような錯覚を抱く。
その姿を見ながら、彼が疲労した原因について、今聞くのはやめておこうと思った。
テーマは「ヨーコの色気」笑
***
「あー、疲れた」
出張から帰ってきたジョーが、デスクにがくりと両手をついた。
今日はイベント会場を提供してくれるホテルでの打ち合わせだったはずだ。俺は後輩の横顔をちらりと見つつキーボードを叩く。
「どうした、珍しいな」
「マーシー担当変わってくださいよぉ」
なんとなく疲れの見える顔に俺は笑いそうになる。それを目にしてジョーは唇を尖らせた。
「人の不幸を喜ぶなんて、マーシーひどい」
「お前が疲れてる顔なんて初めて見るかもしれないな」
俺が答えると、ジョーは深々と、本当に身体中の息を吐き切るように、ため息をついた。
かと思うと、不意にすっくと上体を起こす。
「ちょっと財務部行ってきます」
「おいおいおいおい待てよ。何だそれ。意味分かんねぇぞ」
咄嗟にその手首をつかむと、据わった目つきで睨まれた。
「ヨーコさん補充してきます」
「更に訳が分かんねぇこと言うな」
ほとんど反射的に応じたとき、事業部のドアが開いた。入ってきたのは話題の人でありジョーの最愛の人、名取さんだ。
ジョーの思いが伝わりでもしたのかと、思わずほほうと感心している俺の横で、ジョーが途端に顔を輝かせるーーが、これまたいつも通り、名取さんはジョーを軽やかにスルーして俺のところまでやって来た。
「マーシーお疲れさん。ちょっと聞いてもええか?」
「いいですけど」
疲れているせいでいつもよりも殺気立ったジョーの視線を感じつつ、俺は苦笑する。
「ワンコへの用はないからな」
一応フォローしようと息を吸ったものの、名取さんの言葉に遮られ、言葉の代わりに息を吐き出す。ジョーが泣きそうな顔をしていた。ほんとこの夫婦どうなってんだろう。カップルのときからよくわからない。
俺は後ろ頭をかきながら、俺のデスクに置いた名取さんの広げた書類に目を通す。書類は来年度の予算の積算で、イベント事業費について確認したいらしい。立っている名取さんに合わせて俺も立ち上がろうとしたが、やんわりと肩に手を置かれた。そのままでいいということらしい。仕方なくそのまま書類を目にするーーが、書類の上にわずかに屈む名取さんとの距離が近い。コロンや香水ではない、甘やかな香りもふわりと漂ってきて、正直居心地が悪いーーその横でふて腐れている彼女の夫のせいで、余計。
しかしそれはそれ、意識を切り離して書類に向き合う。名取さんは数字を指し示しながら口を開いた。
「新規事業があるて聞いたけど、予算はほとんど変わってへんな」
「ああ、それ」
ほっとしてジョーを示す。
「担当、ジョーなんで。直接聞いてください」
言うが、名取さんはぽってりとした柔らかそうな唇を尖らせて見せた。
「マーシーのいけず。そんなにうちと話すの嫌やのん?」
「何でそうなるんですか……」
がくりと肩を落としながら、殺気と嫉妬と寂寥その他色んなものがごちゃまぜの視線を俺に送り続けるジョーに目をやる。
「ジョー、とっとと説明の準備しろ。俺、トイレ」
「はぁい」
何だよその不服げな態度。振ってやったんだから喜べよ。
ったく、イチイチ巻き込まれる俺はどんだけ損な役回りなんだ。
思いながら廊下の先にある手洗いまで歩き出した。
極力ゆっくりと用を済ませて、肩を回したり首を回したりして、そろそろいいだろうとデスクに戻ると、もう名取さんはいなくなっていた。
「補充、できたのか?」
椅子に腰掛けつつジョーに言うと、
「話したくらいじゃ足りませんでした」
あっさりとジョーは答える。が、先ほどのような死んだ目はしていない。むしろ残業をしない為に仕事に集中し始めているのがうかがえる。
「美味しいもの作って待ってたら早く帰ってきてくれるって。何にしようかなぁ。でもその前に報告書上げてこ」
ぶつぶつ呟くジョーの声に、隣のデスクがお花畑になったような錯覚を抱く。
その姿を見ながら、彼が疲労した原因について、今聞くのはやめておこうと思った。
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