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安田夫婦関連
アイロン談義2/3
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「ヨーコさんて、シャツ、着ないんですか?」
週末、仕事の帰りに訪れたジョーの家。
二人でテレビをぼんやり眺めていたとき、ジョーが何やらはっとした顔をしたと思えば、いつもの如くくだらないことを言って来たので、うちは苦笑を返した。
「昔は好きで着てたけどなぁ。財務部になってからはご無沙汰やな。手入れする時間も気力もないさかい」
言いながら、テレビに映る女優のシャツ姿を見やる。衿が抜けたゆるやかなデザインは最近の流行りらしく、着てみたいとは思う。
「こういうの、着てみたいけどなぁ」
「似合いますよ!きっと似合います!」
鼻息も荒く顔を覗き込まれて、うちはわずかに身を引いた。ジョーは毎度のことながらうちの反応を気にもせず笑う。
「ね、ね、ヨーコさん。シャツ着ましょう、シャツ。アイロンは俺がかけますから」
うちは苦笑した。
「ほんまに?かけられるん?」
「かけられますよ!マーシー直伝です」
無駄に腕まくりをして、やる気をアピールするジョーの目は、キラキラと輝いている。
「ね、だからシャツ買いに行きましょう!明日!」
「明日?」
ずいぶん気が早いものだと呆れていると、ジョーは子供のようにかぶりを振った。
「だって、絶対似合うから。見たい、見たい!ヨーコさんのシャツ姿!」
「考えとく」
「ええええー」
うちの答えに、ジョーは大袈裟に落胆して見せた。うちから見るといちいち感情の起伏が激しい。それが鬱陶しいと思ったときもあるが、今はほとんど気にせず受け入れられている。
が、しかし。転んでもただでは起きないのがジョーである。
がばりと頭を上げると、強い光を宿した目でうちを見て手を取った。
「ーーヨーコさん」
「何や?」
どうせまたくだらないことでも言うのだろうーーと思いながらも、真剣なその目にわずかに戸惑う。
「シャツ、着ましょう」
「……はぁ?」
「今持ってきます」
「……あのな、ジョー」
うちから離れてクローゼットに向かおうとするジョーのシャツの裾を引くと、ジョーは立ち止まって振り向いた。
「だって、早く見たい。見ないと今日眠れそうにない」
何でやねん。
即座に突っ込もうとしたが、その代わりに深々と嘆息して額を押さえる。どうせ突っ込んでも笑顔で「だってヨーコさん大好きだから」と返って来て会話にならないと分かっているからだ。
「あのなぁ、ジョー」
「だって、だって」
ジョーはほとんど涙目になりながら、両拳を握ってかぶりを振った。
「ヨーコさんのシャツ姿、想像しただけでーー」
言葉の途中でかくんと俯く。
「こんなになっちゃいました」
それがただ俯いただけでないことに、その言葉で気づいた。
彼が見るそこには目をやらず、そっぽを向く。
「そんなん、知らん」
「えええええ、そんなぁ」
「うちは何もしてへんやろ。自分でどうにかしぃ」
「ヨーコさぁん」
あれこれ手を尽くしてお願いしてくるジョーの根気に負けそうになりながら、うちはどうにか彼の願望につき合うのを回避した。
ーーその日は、という意味に過ぎないのだが。
週末、仕事の帰りに訪れたジョーの家。
二人でテレビをぼんやり眺めていたとき、ジョーが何やらはっとした顔をしたと思えば、いつもの如くくだらないことを言って来たので、うちは苦笑を返した。
「昔は好きで着てたけどなぁ。財務部になってからはご無沙汰やな。手入れする時間も気力もないさかい」
言いながら、テレビに映る女優のシャツ姿を見やる。衿が抜けたゆるやかなデザインは最近の流行りらしく、着てみたいとは思う。
「こういうの、着てみたいけどなぁ」
「似合いますよ!きっと似合います!」
鼻息も荒く顔を覗き込まれて、うちはわずかに身を引いた。ジョーは毎度のことながらうちの反応を気にもせず笑う。
「ね、ね、ヨーコさん。シャツ着ましょう、シャツ。アイロンは俺がかけますから」
うちは苦笑した。
「ほんまに?かけられるん?」
「かけられますよ!マーシー直伝です」
無駄に腕まくりをして、やる気をアピールするジョーの目は、キラキラと輝いている。
「ね、だからシャツ買いに行きましょう!明日!」
「明日?」
ずいぶん気が早いものだと呆れていると、ジョーは子供のようにかぶりを振った。
「だって、絶対似合うから。見たい、見たい!ヨーコさんのシャツ姿!」
「考えとく」
「ええええー」
うちの答えに、ジョーは大袈裟に落胆して見せた。うちから見るといちいち感情の起伏が激しい。それが鬱陶しいと思ったときもあるが、今はほとんど気にせず受け入れられている。
が、しかし。転んでもただでは起きないのがジョーである。
がばりと頭を上げると、強い光を宿した目でうちを見て手を取った。
「ーーヨーコさん」
「何や?」
どうせまたくだらないことでも言うのだろうーーと思いながらも、真剣なその目にわずかに戸惑う。
「シャツ、着ましょう」
「……はぁ?」
「今持ってきます」
「……あのな、ジョー」
うちから離れてクローゼットに向かおうとするジョーのシャツの裾を引くと、ジョーは立ち止まって振り向いた。
「だって、早く見たい。見ないと今日眠れそうにない」
何でやねん。
即座に突っ込もうとしたが、その代わりに深々と嘆息して額を押さえる。どうせ突っ込んでも笑顔で「だってヨーコさん大好きだから」と返って来て会話にならないと分かっているからだ。
「あのなぁ、ジョー」
「だって、だって」
ジョーはほとんど涙目になりながら、両拳を握ってかぶりを振った。
「ヨーコさんのシャツ姿、想像しただけでーー」
言葉の途中でかくんと俯く。
「こんなになっちゃいました」
それがただ俯いただけでないことに、その言葉で気づいた。
彼が見るそこには目をやらず、そっぽを向く。
「そんなん、知らん」
「えええええ、そんなぁ」
「うちは何もしてへんやろ。自分でどうにかしぃ」
「ヨーコさぁん」
あれこれ手を尽くしてお願いしてくるジョーの根気に負けそうになりながら、うちはどうにか彼の願望につき合うのを回避した。
ーーその日は、という意味に過ぎないのだが。
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