爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい!

松田丹子(まつだにこ)

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第七章 織り姫危機一髪。(ヒメ/阿久津交互)

03 旧知の縁

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 その日の朝は、どうしてだか分からないけど挨拶に加えた一言をもらえた。その上、「また明日」なんてメッセージをもらった私は、ウキウキしながら仕事をしていた。
「今日はいいことあったの?」
 弥生さんに問われて、はい、と頷く。
「占いはイマイチだったんですけど、当てになりませんねー」
 笑うと、そりゃそうよと笑顔が返ってきた。
「占いはどんなだったの?」
「え? えーと」
 私は首を捻りながら、今朝のニュースの終わりにあった占いコーナーを思い出す。
「確か、過去の縁がこじれるかもとか、そんな感じ」
「あらぁ。なかなか怖い診断ね」
 弥生さんはひょいと肩をすくめる。私は笑った。
「そうかも。でも、過去の縁なんてないから、大丈夫ですよ」
「そうかなぁ。ヒメちゃんが気づいてないだけかもよ。意外と、自分の知らないところで誰かが何か思ってたりして」
「怖いこと言わないでくださいよー」
 私たちは話しながら、開院の準備を進めた。
 仕事が始まると、占いのこともそんな会話もすっかり忘れてしまった。

 帰宅後、入浴を済ませて部屋に戻ると、スマホにメッセージが入っていることに気づいて手に取った。
 もしかして、阿久津さん出張とかかなぁ。
 明日、会えないんだったら嫌だなぁ。
 思いながら画面をタップすると、懐かしい名前が目に入ってドキリとする。
 津田ちゃんだ。
【久しぶり。ソラちゃんの結婚の話、聞いた?】
 何の変哲もない、違和感もないメッセージ。二、三度読んで、嘆息する。
 三年も、経つんだし。
 何の意図もないよね。
【聞いたよー! めでたいよねo(≧∇≦)o】
 いつものノリで返すと、思いの外早く返信が来る。
【うん、めでたいねo(≧∇≦)o】
 同じ顔文字を返して来るあたり、津田ちゃんも変わらないなぁ、と口元に笑みが込み上げる。気配りしすぎるくらい気配りするタイプの子なのだ。
 次いでまた、メッセージが来る。
【なかなか会いに行けないし、結婚祝いに何か贈ろうかって話してるんだけど、どう思う?】
【そうだね、大賛成! 新木くんと話してたの?】
【うん、そう。でもヤローからだけだと、何かアレかなと思って。女子にも連絡してみようってなったの】
 新居に贈るなら、何がいいかなぁ。本人に聞いてみてもいいかも。せっかくだから、使ってもらえるものがいいよね。
 考えながら返信を迷っていたら、またメッセージが来た。
【急だけど、俺金曜東京に出張なんだ。ちょっと意見聞けたらと思うんだけど、飲みにでも行かない?】
 一瞬、凍りつく。思い出したのは占いの言葉だ。
 昔の縁がこじれないようにご用心。
 こじれる? こじれるって、何だろう。私はどう返事をすべき?
 スケジュールを思い返し、その夜は予定がないと頭の中で確認する。
 飲みに、って、二人でだよね。
 次いで過ぎったのは、阿久津さんの顔だった。
 阿久津さんに聞いてみるべき? 男友達と二人で飲みに行ってもいいかって。
 いやいやでも。そんなこと聞いても、きっと阿久津さんのことだ。はぁ? って反応しか返って来ないだろう。だって私は阿久津さんの彼女でもない、ただの追っかけなのだから。
 そう気づいてしゅんとする。そうだよね、まだ私は、追っかけに毛が生えた程度の関係なんだよね。勢いでキスしたり手繋いだりしたけど、あくまであれって勢いだし。
 何だか切ない気分になってきて、返信が面倒に思えたけど、また占いの言葉を思い出して首を振る。
 津田ちゃんはいい人だ。わざわざ険悪な関係になりたくはない。
 私は迷いながらも、メッセージを入力した。
【空いてるよー! どこで会う?】
 送ってから、はあ、とため息をつく。どうしても阿久津さんの顔がちらつく。やっぱり言っておいた方がいいかな。でもそれって私の自己満足で……
【よかった。じゃあ、S駅に七時でいいかな? 楽しみにしてるねー】
 私は無理矢理笑顔を作って、また返信を送った。
【うん、私も楽しみにしてるー】
 ぴょんぴょん跳ねたうさぎの絵と共に送ってから、この絵はやりすぎだったかも、と後でちょっとだけ反省した。
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