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第七章 織り姫危機一髪。(ヒメ/阿久津交互)
05 情欲
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阿久津さんとの約束をとりつけるチャンスを逃した私だったけど、気持ちは軽やかだった。
これ以上どうやって進んだらいいんだろう、なんて考えていたけど、もう少し押して行っても大丈夫そうだという気がしたからだ。
帰宅し夕飯を済ませた私は、ベッドに座って枕を膝に置いた。
阿久津さんとお食事……
今度は私がお店を選ぼう。どこにしようかな。
バーカウンターでグラスを傾ける阿久津さんを妄想して、むふふと一人で悦に入る。
明日は津田ちゃんと会う日だ。大学時代の友人と会うのも久しぶりだから、楽しみなのは確か。
でも、阿久津さんに断っておけばよかったかなぁ。
今朝の別れ際、明日は朝は出張だと言われたのを思い出す。明日会えないとなれば次に会うのは来週月曜。この三日が長い。
「阿久津さぁん」
小さく呟き、ベッドの上で枕を抱きしめる。
ああ、物足りない。少しだけ身体に触れてしまったからこその、この物足りなさ。
思わず奥歯をかみしめる。
目を閉じて、わずかに触れた硬い身体を思い出す。私を射通す鋭い視線。低い声。乱暴なようで気遣いのこもった手つき。節のある指先。
順にそれらを思い浮かべて、少しだけ目を開く。
あの手で、触れてくれたら。
ただの妄想に、ドキドキと鼓動が高鳴る。自分の首筋を撫で、胸元をまさぐる。
これが、阿久津さんの手だったら。
虚しいだけだと分かっていながら、ちらりちらりと思い出す阿久津さんの視線や表情に、高鳴る鼓動はだんだんと速度を上げていく。
あの唇にキスしたい。あの腕に抱かれたい。何でもいい、布越しではなく直接、肌に触れたい。
切なさと想いに泣きそうになる。いや、ただ感じてるだけかもしれない。触れているのは自分の手なのに。ほぅ、と声が漏れる。愛されたい。愛したい。阿久津さんと。
手が下腹部へ下りて行き、膝を、太ももを探る。
こうやって、触れて欲しい。さんざん焦らして、意地悪な目で私を高ぶらせて。
吐息が熱を帯びる。私は目を閉じる。阿久津さんがまぶたの裏でにやりと笑っている。
ーー澤田。
やだ。ヒメって呼んで。ベッドの上だけでもいいから、ヒメって呼んで。
ショーツの布越しに、自分の秘部を撫でる。指先の華奢さが物足りない。阿久津さんだったらどう触るだろう。私の身体をどう、弄ぶだろう。欲情、してくれるだろうか。私の裸に。童顔な顔だけど、甲高い声だけど、舌っ足らずな喋り方だけど、欲情してくれるだろうか。
「みつ、ひこ、さん」
声を押し殺しながら、小さく呼ぶ。彼の名前を呼ぶだけで、身体の奥がとろりと溶け出す。
ショーツ越しに撫でるだけでは物足りなくなって指先をショーツに滑り込ませようとしたとき、
「ヒメー! さっさとお風呂入りなさーい! あんたいっつも、時間かかるんだから!」
一階から母の声がして、がっくりと肩を落とし、はぁあ、と深いため息をついた。
「ヒメー」
「分かってるー! 今行く!」
大きな声で返しながら、現実に引き戻された私はのろのろと支度をする。支度が遅いのはいつものことだから、気にされることもないだろう。
まったく。お母さんてば。まったく。
思いながら、当てつけだと知っている。頬を膨らませて、何となく気まずい自分をごまかそうとした。
ベッドの脇に投げ捨てられた枕を見て、はあ、とまた一息つく。一度抱えたパジャマを横に置いて、枕をぎゅ、っと抱きしめた。
枕からは、私が好きなシャンプーのバラの臭いだけがして、残念ながら阿久津さんの男くさい匂いなんかしない。
それでも愛しいもののように抱きしめた後、そっと枕を置いて風呂場へと向かった。
これ以上どうやって進んだらいいんだろう、なんて考えていたけど、もう少し押して行っても大丈夫そうだという気がしたからだ。
帰宅し夕飯を済ませた私は、ベッドに座って枕を膝に置いた。
阿久津さんとお食事……
今度は私がお店を選ぼう。どこにしようかな。
バーカウンターでグラスを傾ける阿久津さんを妄想して、むふふと一人で悦に入る。
明日は津田ちゃんと会う日だ。大学時代の友人と会うのも久しぶりだから、楽しみなのは確か。
でも、阿久津さんに断っておけばよかったかなぁ。
今朝の別れ際、明日は朝は出張だと言われたのを思い出す。明日会えないとなれば次に会うのは来週月曜。この三日が長い。
「阿久津さぁん」
小さく呟き、ベッドの上で枕を抱きしめる。
ああ、物足りない。少しだけ身体に触れてしまったからこその、この物足りなさ。
思わず奥歯をかみしめる。
目を閉じて、わずかに触れた硬い身体を思い出す。私を射通す鋭い視線。低い声。乱暴なようで気遣いのこもった手つき。節のある指先。
順にそれらを思い浮かべて、少しだけ目を開く。
あの手で、触れてくれたら。
ただの妄想に、ドキドキと鼓動が高鳴る。自分の首筋を撫で、胸元をまさぐる。
これが、阿久津さんの手だったら。
虚しいだけだと分かっていながら、ちらりちらりと思い出す阿久津さんの視線や表情に、高鳴る鼓動はだんだんと速度を上げていく。
あの唇にキスしたい。あの腕に抱かれたい。何でもいい、布越しではなく直接、肌に触れたい。
切なさと想いに泣きそうになる。いや、ただ感じてるだけかもしれない。触れているのは自分の手なのに。ほぅ、と声が漏れる。愛されたい。愛したい。阿久津さんと。
手が下腹部へ下りて行き、膝を、太ももを探る。
こうやって、触れて欲しい。さんざん焦らして、意地悪な目で私を高ぶらせて。
吐息が熱を帯びる。私は目を閉じる。阿久津さんがまぶたの裏でにやりと笑っている。
ーー澤田。
やだ。ヒメって呼んで。ベッドの上だけでもいいから、ヒメって呼んで。
ショーツの布越しに、自分の秘部を撫でる。指先の華奢さが物足りない。阿久津さんだったらどう触るだろう。私の身体をどう、弄ぶだろう。欲情、してくれるだろうか。私の裸に。童顔な顔だけど、甲高い声だけど、舌っ足らずな喋り方だけど、欲情してくれるだろうか。
「みつ、ひこ、さん」
声を押し殺しながら、小さく呼ぶ。彼の名前を呼ぶだけで、身体の奥がとろりと溶け出す。
ショーツ越しに撫でるだけでは物足りなくなって指先をショーツに滑り込ませようとしたとき、
「ヒメー! さっさとお風呂入りなさーい! あんたいっつも、時間かかるんだから!」
一階から母の声がして、がっくりと肩を落とし、はぁあ、と深いため息をついた。
「ヒメー」
「分かってるー! 今行く!」
大きな声で返しながら、現実に引き戻された私はのろのろと支度をする。支度が遅いのはいつものことだから、気にされることもないだろう。
まったく。お母さんてば。まったく。
思いながら、当てつけだと知っている。頬を膨らませて、何となく気まずい自分をごまかそうとした。
ベッドの脇に投げ捨てられた枕を見て、はあ、とまた一息つく。一度抱えたパジャマを横に置いて、枕をぎゅ、っと抱きしめた。
枕からは、私が好きなシャンプーのバラの臭いだけがして、残念ながら阿久津さんの男くさい匂いなんかしない。
それでも愛しいもののように抱きしめた後、そっと枕を置いて風呂場へと向かった。
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