爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい!

松田丹子(まつだにこ)

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第十一章 織姫は彦星にどうしても抱かれたい(ヒメ視点)

03 プランニング

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 ということで、めでたく光彦さんのゴーサインをもらった私は、遠慮なくプランニングに精を出すことにした。
 昼休みにもガイドブックを広げて真剣に眺めている私に、小阪さんが穏やかな笑顔を向ける。
「ヒメちゃん、旅行行くの?」
「行きたいんですけど……どこにしようか迷ってて」
 私はガイドをめくりながら、眉をハの字にする。
「誰と行くの? 彼氏?」
 私は問われて、ぱっと頬を赤らめた。
「いや、そ、そんな」
「やぁだ、可愛い」
 小阪さんは笑って私の背中をたたく。
「最近ますますかわいくなったものね。きっとそうだろうと思ってた」
「そ、そうでしょうか」
 私は口の中でもごもごと言った。まさかバレバレだったとは。
「ヒメちゃんくらいの子なら、そうねぇ。遊園地とかどうなの?」
「いえ、彼、私と年齢違うので」
「へぇ、おいくつ?」
 私は一瞬たじろいだ。が、にこりと笑って答える。
「40くらいです」
 小阪さんは驚いたような顔をして、少し目を反らして考えるような顔をした後、
「十五歳差くらい?」
「はい」
 私は極力、動揺を見せないように微笑んだ。
 強がったわけじゃない。こんなことでいちいち動揺していたら、私は光彦さんの側になんていられない。
 誰がどう思ってもいい。私は彼の側にいたいし、彼に私を選んでもらいたい。
 小阪さんは、ふぅん、と言って、微笑んだ。
 包容力を感じる温かい目で、私を見つめる。
「関係ないわね」
「え?」
「歳の差なんて。私も、夫と十歳差」
「えっ!」
 小阪さんはからりと笑った。
「しかも、ダブル不倫の末の結婚」
「えっ!?」
「あはははは、そんなこともあったわよね、って感じよ」
 初めて聞いた情報に、私は目をぱちぱちさせる。
 だって、小阪さんは。
 高校生と大学生のお子さんもいて。
 絵に描いたように、普通なご家庭で。
 普通で、幸せな、ご家庭で。
 私は少し視線を落とした。
 他人の何かを評価して、普通だって思ってたことが、そもそもおかしいような気がして。
「不倫じゃないんでしょ?」
「ち、違います」
 小阪さんは微笑んだ。
「それならいいわ」
 私が反応に困っていると、小阪さんは少し遠い目をする。
「うちの場合は、彼の奥さんが先に他の人と関係持っててね。彼がどんどん憔悴していくのを見て、心配になったの。かわいそうだなって、ついついお節介妬いちゃったんだわ」
 言って、ふふ、と笑う。
 ああ、ダブル不倫て、そういう意味か。
 私がじっと小阪さんを見つめていると、小阪さんは口元に人差し指を当てた。
「私とヒメちゃんの秘密ね。みんなには言ってないから」
 私はこくこくと頷く。小阪さんはまた笑った。
「応援してるわ。可愛いヒメちゃんが、ますますかわいくなったんだもの。きっと大丈夫よ」
 小阪さんは言って、私の手元のガイドブックをひょいと覗き込む。
「でも、そういうことなら、ゆっくりできるところがいいんじゃない? 何もないところとか……近いところとか……電車一本で行けるところとか……」
「や、やっぱりそうですかね。温泉とか?」
「いいわねぇ温泉。私が行きたい。……って関係ないか」
 小阪さんにつられて、私も笑う。
 まるで小阪さんと旅行に行くかのように、私たち二人は賑やかにガイドブックを眺めた。
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