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第十二章 彦星は夜の訪れが怖い(阿久津視点)
06 サプライズ
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花火を見に行こう、と言われた俺は、気乗りしないものの断る理由が見つからず、渋々出かけることになった。
浴衣か甚平必須! と釘を刺されたので、夏場の部屋着でもある甚平を着て行くと、ヒメは浴衣で来ていた。
パステルカラーだろうと踏んでいたのだが、意外にも白地に藍色の桔梗が描いてある浴衣だった。代わりに帯は華やかで、ピンク地に黄色の格子柄だ。
柔らかい髪を三つ編みにして襟足をくるりと飾り、髪飾りを耳後ろにつけている。
俺に気づくと照れくさそうに微笑んで、上目遣いで小首を傾げる。
普通ならあざといしぐさも、ヒメがやると違和感がない。
……と思うのは惚れた弱みか。
「ええと。こんにちは」
夜になれば人込みも多いだろうと踏んだ俺たちは、早めに落ち合うことにした。午後3時という中途半端な時間に、挨拶の言葉に迷ったヒメが曖昧に微笑む。
「ああ」
言って近づく。ヒメが首を傾げて俺を見上げる。分かっている、「どうですか?」と言いたいのだろう。で、俺はどう答えればいい? 素直に「可愛いよ」と言える男ではないと、彼女だって分かっているのだ。
結局、俺はただ「行くぞ」と肘を差し出しただけで、ヒメはわずかに残念そうにしながら俺の腕を取る。が、すぐに機嫌は直った。もともとさして気にしていないのだろう。「不器用なところもいいの♪」とほにゃりと笑われれば、疑問は感じつつもそういうものかと納得するしかない。
以前、「怒りや悲しみがあまり持続しない」と本人が言っていた通り、ヒメは小さいことに囚われてくよくよしたりしない。
……いや、たまにどちらの下着がいいかとか、そういう訳がわからないところでくよくよすることはあるが、それも悩んでいるというよりは選ぶ過程を楽しんでいるように見えるので、基本的に放っておく。
そうすると、答えはだいたい自分の中にあって、最終的には一人合点しているのだ。自己解決型というか何というか。
「開始は何時だったっけ」
「7時です」
俺は思わず眉を寄せた。何かと中途半端な時間だ。
「どうする?」
「えーと。少しぷらぷらして、それで……」
ヒメは照れ臭そうに目を伏せた。俺は首を傾げてその顔を見やる。ヒメはちらりと目を上げると、俺に懇願するような声で言う。
「……花火が見える部屋、取ったんです」
俺は絶句した。
「……えーと」
思わず額を押さえて、目を反らす。
「つまり?」
ヒメは真っ赤な顔でむくれた。
「み、皆まで言わせないでください! だ、だってほら、人込みの中見るのも疲れちゃうし、帰りだって混むから疲れちゃうし、だったらどっか泊まった方がいいかなって、あっ、あの、お父さんが仕事でお付き合いのあるホテルで、だから部屋の位置も少し、融通してもらえて……」
「あー、分かった。分かったから。落ち着け」
ヒメの肩に手を置き、なだめるように言った。が、その実自分を落ち着かせようとしているのだと気づいて頭をかいた。
「……あの、嫌、でした?」
不安そうな顔で、ヒメが目を潤ませている。
そんな顔すんな。俺がイジメてるみたいじゃねぇか。
思うが、嘆息してやりすごす。
「……嫌じゃない」
とりあえずそれだけは伝えようと口にしてみると、ヒメは目に見えてほっとした。
「けど、花火の生の音も、嫌いじゃない」
ヒメは目を瞬かせた。その目が少しだけ嬉しそうに細められる。
「……つまり?」
先ほどの俺の言い方を真似して、ヒメが首を傾げた。
くっそ可愛い。何だこいつ。
思いながら、恐らく赤くなった顔を反らす。
「屋台とかも出てんだろ。適当に食べながら適当に花火見て、それからホテルでもいいんじゃねぇの」
言ってから、ふと気づいた。
「……でも泊まるんなら、俺、服」
「大丈夫ですっ」
ヒメは笑顔で親指を立てて見せた。
「この前こっそり一着分、持ち帰っておきました! 私の宿泊セットと一緒にホテルに預けてありますっ」
俺は表情が引き攣るのを感じた。
「……かなり用意周到じゃねぇか」
「え、あ……だ、駄目でした?」
「駄目、じゃねぇけど……」
だったら先に言って欲しいものだ。そんな泥棒じみたことをするくらいなら、俺が自分で持ってきたのに。
「すみません」
ヒメは肩を落としてしゅんとした。
「いっつも、サプライズされてばっかりだから……私もしてみたくて」
俺は少し意外な想いで、そのうつむいた顔を見る。
プロポーズのことを言っているんだろうか。確かに用意周到ではあったが、サプライズ、というほどのことをした気はない。
ただ、喜んでくれればと思っただけだ。
ヒメも、俺が喜んでくれればと、思ってくれたということか。
そう気づいて微笑む。
「まず、お前が楽しめよ」
ヒメが顔を上げた。
「せっかく花火大会に来て、ホテルで見るのはもったいないだろ。お前のことだから、屋台ぶらついて川べりででも花火見て、ってのに憧れてたんじゃねぇの。つき合うよ」
ヒメは少し気まずそうな顔をした。俺は思わず噴き出す。
「確かに俺は年食ってる分、すぐ疲れるかもしれねぇけど、お前が楽しそうならそれでいい」
言いながら、セットした髪を崩さないよう、ふわりと手を添える。
「似合ってる。その着物の雰囲気はちょっと意外だった」
ヒメは目を見開いて驚いてから、花開くような笑顔を見せた。
「よかった! 大学の友達に相談したんです、どういうのがいいかなって。そしたら、男の人は王道が好きだから、紺か白よって言われて。でも私、紺だと暗く見えちゃうんで、白にしたんです。なんか旅館の浴衣みたいに見えるかなって心配してたんですけど、よかった、そう言ってもらえたら安心しました!」
本当にほっとしたのだろう、一気に話す笑顔が眩しい。俺はつい目を細めた。
「じゃあ、行くか。まだ暑いな。冷たいものでも食うか?」
「食べます! かき氷ありますかね、かき氷」
「あるだろ、多分」
言いながら、どちらからともなく手をつないで歩き出す。
ヒメが楽しげな笑い声をあげ、俺の顔にも無意識に微笑みが浮かんだ。
浴衣か甚平必須! と釘を刺されたので、夏場の部屋着でもある甚平を着て行くと、ヒメは浴衣で来ていた。
パステルカラーだろうと踏んでいたのだが、意外にも白地に藍色の桔梗が描いてある浴衣だった。代わりに帯は華やかで、ピンク地に黄色の格子柄だ。
柔らかい髪を三つ編みにして襟足をくるりと飾り、髪飾りを耳後ろにつけている。
俺に気づくと照れくさそうに微笑んで、上目遣いで小首を傾げる。
普通ならあざといしぐさも、ヒメがやると違和感がない。
……と思うのは惚れた弱みか。
「ええと。こんにちは」
夜になれば人込みも多いだろうと踏んだ俺たちは、早めに落ち合うことにした。午後3時という中途半端な時間に、挨拶の言葉に迷ったヒメが曖昧に微笑む。
「ああ」
言って近づく。ヒメが首を傾げて俺を見上げる。分かっている、「どうですか?」と言いたいのだろう。で、俺はどう答えればいい? 素直に「可愛いよ」と言える男ではないと、彼女だって分かっているのだ。
結局、俺はただ「行くぞ」と肘を差し出しただけで、ヒメはわずかに残念そうにしながら俺の腕を取る。が、すぐに機嫌は直った。もともとさして気にしていないのだろう。「不器用なところもいいの♪」とほにゃりと笑われれば、疑問は感じつつもそういうものかと納得するしかない。
以前、「怒りや悲しみがあまり持続しない」と本人が言っていた通り、ヒメは小さいことに囚われてくよくよしたりしない。
……いや、たまにどちらの下着がいいかとか、そういう訳がわからないところでくよくよすることはあるが、それも悩んでいるというよりは選ぶ過程を楽しんでいるように見えるので、基本的に放っておく。
そうすると、答えはだいたい自分の中にあって、最終的には一人合点しているのだ。自己解決型というか何というか。
「開始は何時だったっけ」
「7時です」
俺は思わず眉を寄せた。何かと中途半端な時間だ。
「どうする?」
「えーと。少しぷらぷらして、それで……」
ヒメは照れ臭そうに目を伏せた。俺は首を傾げてその顔を見やる。ヒメはちらりと目を上げると、俺に懇願するような声で言う。
「……花火が見える部屋、取ったんです」
俺は絶句した。
「……えーと」
思わず額を押さえて、目を反らす。
「つまり?」
ヒメは真っ赤な顔でむくれた。
「み、皆まで言わせないでください! だ、だってほら、人込みの中見るのも疲れちゃうし、帰りだって混むから疲れちゃうし、だったらどっか泊まった方がいいかなって、あっ、あの、お父さんが仕事でお付き合いのあるホテルで、だから部屋の位置も少し、融通してもらえて……」
「あー、分かった。分かったから。落ち着け」
ヒメの肩に手を置き、なだめるように言った。が、その実自分を落ち着かせようとしているのだと気づいて頭をかいた。
「……あの、嫌、でした?」
不安そうな顔で、ヒメが目を潤ませている。
そんな顔すんな。俺がイジメてるみたいじゃねぇか。
思うが、嘆息してやりすごす。
「……嫌じゃない」
とりあえずそれだけは伝えようと口にしてみると、ヒメは目に見えてほっとした。
「けど、花火の生の音も、嫌いじゃない」
ヒメは目を瞬かせた。その目が少しだけ嬉しそうに細められる。
「……つまり?」
先ほどの俺の言い方を真似して、ヒメが首を傾げた。
くっそ可愛い。何だこいつ。
思いながら、恐らく赤くなった顔を反らす。
「屋台とかも出てんだろ。適当に食べながら適当に花火見て、それからホテルでもいいんじゃねぇの」
言ってから、ふと気づいた。
「……でも泊まるんなら、俺、服」
「大丈夫ですっ」
ヒメは笑顔で親指を立てて見せた。
「この前こっそり一着分、持ち帰っておきました! 私の宿泊セットと一緒にホテルに預けてありますっ」
俺は表情が引き攣るのを感じた。
「……かなり用意周到じゃねぇか」
「え、あ……だ、駄目でした?」
「駄目、じゃねぇけど……」
だったら先に言って欲しいものだ。そんな泥棒じみたことをするくらいなら、俺が自分で持ってきたのに。
「すみません」
ヒメは肩を落としてしゅんとした。
「いっつも、サプライズされてばっかりだから……私もしてみたくて」
俺は少し意外な想いで、そのうつむいた顔を見る。
プロポーズのことを言っているんだろうか。確かに用意周到ではあったが、サプライズ、というほどのことをした気はない。
ただ、喜んでくれればと思っただけだ。
ヒメも、俺が喜んでくれればと、思ってくれたということか。
そう気づいて微笑む。
「まず、お前が楽しめよ」
ヒメが顔を上げた。
「せっかく花火大会に来て、ホテルで見るのはもったいないだろ。お前のことだから、屋台ぶらついて川べりででも花火見て、ってのに憧れてたんじゃねぇの。つき合うよ」
ヒメは少し気まずそうな顔をした。俺は思わず噴き出す。
「確かに俺は年食ってる分、すぐ疲れるかもしれねぇけど、お前が楽しそうならそれでいい」
言いながら、セットした髪を崩さないよう、ふわりと手を添える。
「似合ってる。その着物の雰囲気はちょっと意外だった」
ヒメは目を見開いて驚いてから、花開くような笑顔を見せた。
「よかった! 大学の友達に相談したんです、どういうのがいいかなって。そしたら、男の人は王道が好きだから、紺か白よって言われて。でも私、紺だと暗く見えちゃうんで、白にしたんです。なんか旅館の浴衣みたいに見えるかなって心配してたんですけど、よかった、そう言ってもらえたら安心しました!」
本当にほっとしたのだろう、一気に話す笑顔が眩しい。俺はつい目を細めた。
「じゃあ、行くか。まだ暑いな。冷たいものでも食うか?」
「食べます! かき氷ありますかね、かき氷」
「あるだろ、多分」
言いながら、どちらからともなく手をつないで歩き出す。
ヒメが楽しげな笑い声をあげ、俺の顔にも無意識に微笑みが浮かんだ。
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