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第十三章 マイスイートホーム(ヒメ視点)
04 ドレスの選び方
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私は足繁く結婚式場に通い、目を輝かせながらドレスの試着を繰り返し、ある程度決まったところで光彦さんも一緒に衣装選びに行った。
「俺はいいよ」
「そんなわけには行きません。着てほしいのは私が選んだけど、一応一回着てみてください」
ほとんど引きずるように連れていき、スタンダードな白いタキシードを見て、光彦さんは一歩引いた。
「花婿さんなら、これでしょー」
「……まあ、そうだよな……うぅ」
うなだれる姿が珍しくて、私は笑う。
「そんなに嫌?」
「嫌っつーか……この歳で着ることになるとはなぁ」
しんみり言う光彦さんは、結婚式を開くときには四十一になるはずだ。私は二十七になる。
出会ってから、それぞれ二つ、歳を重ねた。
「私、二着まで絞ったんですけど、迷ってて。見てくれます?」
「あ? ああ……」
頷きながらも、光彦さんは困惑していた。私は笑う。
「直感でいいですから」
言って、それぞれ衣装に着替えた。
当日のイメージがしやすいよう、私は軽く髪をアップにしてもらい、お姫様のようなティアラとネックレス、白い手袋もつけてもらった。こういうのを身につけると気分が浮き立つのは、女性ならではの楽しみだと思う。
着替えた私を見た光彦さんは、目を丸くしてから苦笑した。
「なんで苦笑い?」
「いや……似合いすぎ」
言いながら笑っている。そんな光彦さんも、白いタキシードは本人が言うほど悪くない。
「光彦さんも、素敵ですよ。花婿って感じ」
「あー、そうかぁ? もう衣装に着られてる気分だよ」
言いながら光彦さんは目を反らした。きっと今まで見た友人の高砂姿を思い出しているんだろう。光彦さんの友達なんて、マサトさんとジョーさんくらいしか知らないけれど、二人ともよく似合っただろうとは推測できる。
「胸を張れば大丈夫です。自信持って」
「あー、どうも。……で、もう一着あんの?」
「あ、はい。……ちゃんと見た?」
言いながら、私はくるりと一回転して見せる。ふわりとドレスの裾が広がった。本当だったらほとんどひきずらないようなデザインなんだろうけれど、小柄な私はどうしてもひきずるかたちになってしまう。
「見た見た。ほら、とっとと着替えて来い」
なんとなく邪険な扱いをされているようだけれど、きっと照れているんだろう。それはそれでいつものことだ。
私は形だけむくれて見せながら、試着室へと戻った。
「最初のにしろ」
私がよく見てもらおうと身体を回しかけた瞬間、光彦さんは鋭い目をして言った。私はびっくりして、肩先をそらしたまま動きを止める。
「そのドレスは許さない」
むっとした顔で言って、反論は認めないと言うように顔を背ける。
「あら。でも、花嫁さん、とっても背中が綺麗でらっしゃるから……」
「あ、いいんです。大丈夫です。彼、怒ってるわけじゃないので」
フォローしようと口を開きかけた衣装係さんを、私がやんわり制する。
そう、怒ってる訳じゃない。照れているんだ。それも盛大に。そう察して私は笑いそうになる。
ちょっと待っててください、と衣装係さんに言って、わしゃわしゃと彼に近づいた。裾につんのめらないように気をつけて近づくが、広がったドレスでは近寄るにも限界がある。
近づいてきた私を、光彦さんが見下ろした。
その目が気まずそうに反らされる。
きっと見慣れた人にしかわからないくらい、その頬が紅潮している。
「……似合ってる?」
私が見上げながら首を傾げると、光彦さんは渋面になった。
「……似合ってる。だから駄目」
むすっとしたまま、言う。
きっと衣装係さんは、私の後方で、喧嘩になるのではとそわそわしていることだろう。
私はくすくす笑った。
「ちょっと、見てもらいたかっただけ」
マーメイド型のそのドレスは、私にしては落ち着き過ぎている。
けど、深く空いた背中のカットがすごく綺麗で、光彦さんに見て欲しくなっただけなのだ。
「ごめんね。最初から、一着目にしようと思ってた」
光彦さんは騙されたとでも言うようにまた顔をしかめた。ち、と舌打ちして、私の腰を引き寄せる。
「だったら、夜用のやつを買ってやる」
ネグリジェのことだろうか。耳元で囁かれた私は、思わず顔を赤らめた。
「俺はいいよ」
「そんなわけには行きません。着てほしいのは私が選んだけど、一応一回着てみてください」
ほとんど引きずるように連れていき、スタンダードな白いタキシードを見て、光彦さんは一歩引いた。
「花婿さんなら、これでしょー」
「……まあ、そうだよな……うぅ」
うなだれる姿が珍しくて、私は笑う。
「そんなに嫌?」
「嫌っつーか……この歳で着ることになるとはなぁ」
しんみり言う光彦さんは、結婚式を開くときには四十一になるはずだ。私は二十七になる。
出会ってから、それぞれ二つ、歳を重ねた。
「私、二着まで絞ったんですけど、迷ってて。見てくれます?」
「あ? ああ……」
頷きながらも、光彦さんは困惑していた。私は笑う。
「直感でいいですから」
言って、それぞれ衣装に着替えた。
当日のイメージがしやすいよう、私は軽く髪をアップにしてもらい、お姫様のようなティアラとネックレス、白い手袋もつけてもらった。こういうのを身につけると気分が浮き立つのは、女性ならではの楽しみだと思う。
着替えた私を見た光彦さんは、目を丸くしてから苦笑した。
「なんで苦笑い?」
「いや……似合いすぎ」
言いながら笑っている。そんな光彦さんも、白いタキシードは本人が言うほど悪くない。
「光彦さんも、素敵ですよ。花婿って感じ」
「あー、そうかぁ? もう衣装に着られてる気分だよ」
言いながら光彦さんは目を反らした。きっと今まで見た友人の高砂姿を思い出しているんだろう。光彦さんの友達なんて、マサトさんとジョーさんくらいしか知らないけれど、二人ともよく似合っただろうとは推測できる。
「胸を張れば大丈夫です。自信持って」
「あー、どうも。……で、もう一着あんの?」
「あ、はい。……ちゃんと見た?」
言いながら、私はくるりと一回転して見せる。ふわりとドレスの裾が広がった。本当だったらほとんどひきずらないようなデザインなんだろうけれど、小柄な私はどうしてもひきずるかたちになってしまう。
「見た見た。ほら、とっとと着替えて来い」
なんとなく邪険な扱いをされているようだけれど、きっと照れているんだろう。それはそれでいつものことだ。
私は形だけむくれて見せながら、試着室へと戻った。
「最初のにしろ」
私がよく見てもらおうと身体を回しかけた瞬間、光彦さんは鋭い目をして言った。私はびっくりして、肩先をそらしたまま動きを止める。
「そのドレスは許さない」
むっとした顔で言って、反論は認めないと言うように顔を背ける。
「あら。でも、花嫁さん、とっても背中が綺麗でらっしゃるから……」
「あ、いいんです。大丈夫です。彼、怒ってるわけじゃないので」
フォローしようと口を開きかけた衣装係さんを、私がやんわり制する。
そう、怒ってる訳じゃない。照れているんだ。それも盛大に。そう察して私は笑いそうになる。
ちょっと待っててください、と衣装係さんに言って、わしゃわしゃと彼に近づいた。裾につんのめらないように気をつけて近づくが、広がったドレスでは近寄るにも限界がある。
近づいてきた私を、光彦さんが見下ろした。
その目が気まずそうに反らされる。
きっと見慣れた人にしかわからないくらい、その頬が紅潮している。
「……似合ってる?」
私が見上げながら首を傾げると、光彦さんは渋面になった。
「……似合ってる。だから駄目」
むすっとしたまま、言う。
きっと衣装係さんは、私の後方で、喧嘩になるのではとそわそわしていることだろう。
私はくすくす笑った。
「ちょっと、見てもらいたかっただけ」
マーメイド型のそのドレスは、私にしては落ち着き過ぎている。
けど、深く空いた背中のカットがすごく綺麗で、光彦さんに見て欲しくなっただけなのだ。
「ごめんね。最初から、一着目にしようと思ってた」
光彦さんは騙されたとでも言うようにまた顔をしかめた。ち、と舌打ちして、私の腰を引き寄せる。
「だったら、夜用のやつを買ってやる」
ネグリジェのことだろうか。耳元で囁かれた私は、思わず顔を赤らめた。
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