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.第1章 煩悩まみれの願望
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二月十四日の夜は、雪が降りそうなほど冷えていた。
日中、空に漂っていた雲は、知らないうちにどこかへ消えていて。
すっきりした空気は、呼吸のたびに肺を冷やした。
いつもなら震える冷たさも、その日ばかりはありがたかった。
恋人の日。
原田菜摘には何の予定もなかったその日に、突然、憧れの人と出かける予定が入って。
緊張のあまりぐらぐらする頭を、少しは冷えた空気が落ち着かせてくれた。
――もうこの日を逃したら、チャンスはない。
そう思って、作ってきたケーキを差し出し、必死に想いを伝えた……の、だと思う。
何を言ったのか、緊張しすぎで全く覚えていないのだけれど。
それでも、照れ臭そうに細められた彼の目は、覚えていて。
ほとんど泣きそうだった菜摘の頬に、大きな手の温もりが触れたとき、さらに泣きそうになった。
耳障りのいい声で、彼が菜摘の想いに応えてくれたそのとき。
菜摘にとってその日は、夢の始まりを告げる特別な日に変わった――
の、だけれど。
日中、空に漂っていた雲は、知らないうちにどこかへ消えていて。
すっきりした空気は、呼吸のたびに肺を冷やした。
いつもなら震える冷たさも、その日ばかりはありがたかった。
恋人の日。
原田菜摘には何の予定もなかったその日に、突然、憧れの人と出かける予定が入って。
緊張のあまりぐらぐらする頭を、少しは冷えた空気が落ち着かせてくれた。
――もうこの日を逃したら、チャンスはない。
そう思って、作ってきたケーキを差し出し、必死に想いを伝えた……の、だと思う。
何を言ったのか、緊張しすぎで全く覚えていないのだけれど。
それでも、照れ臭そうに細められた彼の目は、覚えていて。
ほとんど泣きそうだった菜摘の頬に、大きな手の温もりが触れたとき、さらに泣きそうになった。
耳障りのいい声で、彼が菜摘の想いに応えてくれたそのとき。
菜摘にとってその日は、夢の始まりを告げる特別な日に変わった――
の、だけれど。
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