色ハくれなゐ 情ハ愛

松丹子

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第四章 死が二人を分かつまで

06 いたずら

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 せっかくだからと、ヨーコさんの背中と髪を洗わせてもらった。ヨーコさんは子どものように顔を覆って髪を流され、洗い終わると、顔をぬぐってふるふると首を振った。短い髪から雫が飛びはね、子犬の水浴びのようで笑う。
「はあ、さっぱりした」
 ヨーコさんは俺を見て微笑んだ。
 昨夜の通夜では、軽くシャワーを浴びた程度に留めた。俺は休んでいてもいいと言ったのだが、ヨーコさんは母の側にいたいのだと言い張ってずっと俺の側にいたのだ。
 本当に母の側にいたかったのか、俺に寄り添ってくれていたのかはわからないが、俺にとっても、多分兄にとっても、ありがたかった。
 次兄の良次は口は悪いが優しい人だ。母の思い出や父の思い出を酒の肴に話しながら、聞き上手なヨーコさんに苦笑していた。
「ヨーコちゃんに話してると、母さんに話してるような気になるな」
 俺はそう言われて、確かにと納得した。聞き手に徹したヨーコさんはただひたすら穏やかに、俺達兄弟の話を聞いていた。

「ジョーも洗ってあげよか?」
「あ、じゃあ背中だけお願いします」
 俺は頷き、ヨーコさんに背中を向けた。広げた膝の間に頭を下げるようにして髪を洗っていると、ヨーコさんが手の平に泡をつけて背中をさすってくれる。
 通夜でもそうしてくれたことを思い出し、シャンプーが入らないように目を閉じた俺は静かにその温もりを感じる。
「流すで」
「あ、はい。ありがとうございます」
 シャワーを俺の頭上に翳してもらうと、俺は髪を洗い流す。ヨーコさんは背中を軽く撫で、石鹸を落としてくれた。
「背中は終わり」
 言うと、シャワーヘッドを壁に引っ掛ける。俺はもう少し髪を洗いたくて、その向きに頭を寄せた。
 不意に、ぺたりと温かく柔らかいものが背中に当たる。
「……ヨーコさん?」
 俺は目を開けられないまま問う。
 ヨーコさんの手は、俺の腹あたりに回されている。
「なんや?」
 静かな声が答えた。ヨーコさんの髪が肩下に当たり、少しだけチクチクする。
「何してるんですか?」
「べつに……」
 ヨーコさんは言って、するりと俺から離れた。
 俺はシャワーを止めて、顔を上げる。
 ヨーコさんは湯舟に身を沈めると、じっと俺の股間を見つめた。
 湯舟が深めなので、縁にあごをのせると、椅子に座った俺の膝あたりに目が来るのだ。
「どこ見てんですか」
 あきれた顔で問うと、ヨーコさんは唇だけの笑みを浮かべた。
 かと思うと、手を伸ばして、うなだれたままの俺のそこに触れる。
「……昔は、うちの裸見るだけで元気になっとったけどなぁ」
 ちょんちょんとつつかれて、俺自身がちょっとだけ跳ねた。
 ヨーコさんはくすりと笑う。
「風呂ではしないんじゃなかったんですか」
「うん、せえへんよ」
 言いながらも、その手はいたずらをやめない。
 その目は楽しげに輝くので、俺もついつい甘い態度になる。
「じゃあ、俺も湯舟入りますから」
「まだ駄目」
「何でですか」
「んー」
 ヨーコさんはまた、俺自身を指先で掬い上げた。先っぽをきゅっと掴み、ぴくん、と俺が揺れるのを見て笑うと、おもむろに唇をそこに寄せる。
「ん」
「ちょっ、ヨーコさんっ」
 ちゅ、と音を立てて吸った後、そこに口づけたまま上目遣いで見上げてくる。刺激的な映像に耐えかねて思わず目を反らす俺に笑うと、ヨーコさんが口を開いてくわえた。
 それだけでなく、舌先でれろれろと尖端を愛撫する。
「っよ、ヨーコさんっ」
 慌てた俺が、その肩を押し戻そうとするが、やんわりと手で止められる。
「どれくらいしたら、元気になるかと思てな」
 その目はいたずらを楽しんでいる。
「げ、元気にしてどうするんですか」
「んー、そうやなぁ」
 ヨーコさんは言いながら、俺をまた口にくわえた。数度、喉奥と表を行き来する。
「ん。だいぶ元気になった」
 ヨーコさんが嬉しそうに言って、俺から口を離した。
 彼女の言う通り、手の支え無しに上向く程度には立ち上がっている。
「元気になりましたけど。でもしないんでしょ」
「してもええで」
 妖艶に微笑みながら、ヨーコさんは俺の尖端をぺろりと舐めた。
 水気を帯びてぬらりと光った赤い舌先が、俺の視野にちらつく。
「口でなら、したる」
 俺はヨーコさんのその唇を唇で塞いだ。
「……ん、ふ……ぅ」
 湯舟の中の柔らかな身体を、ゆるやかにさすっていく。
 くちゅくちゅと口内を犯す音が、浴場に響いた。
 ヨーコさんの目が潤んだのを見て取って、俺はちゅ、と音を立てて吸い上げると、唇を離す。
「ベッドでしてもらいますからいいです。俺も湯舟につからせてください」
 言うと、ヨーコさんはほてった頬を膨らませ、唇を尖らせた。
「そんなにしてる癖に」
「いいんです。こうしたのヨーコさんでしょ。ほら、俺が入るスペース空けてくださいよ」
 口づけを交わしている間に、俺のそれはすっかり屹立している。
 それでも彼女の言うがままになるのは悔しくて、片側に寄った彼女の背中側から、包み込むように湯舟につかった。
「のぼせないでくださいね」
「うん……」
 背中から抱きしめると、ヨーコさんは自分の肩上でクロスした俺の腕に手を添え、俺の胸に寄り掛かった。
「ええ湯やなぁ」
「そうですね」
「寝そう」
「……それは、勘弁してください」
 ヨーコさんはくすりと笑い、俺を仰ぎ見た。
「何で?」
「そりゃ、だって……」
 俺が言葉にするより先に、ヨーコさんの手が屹立した俺自身を湯舟の中でゆるりと撫でる。
「この子が期待してはるから?」
「そうですよ」
 照れをごまかすためにきまじめな顔で答えると、ヨーコさんは声をあげて笑った。
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