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(9)そして彼女とひとつになった

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優太は七海に導かれるように浴室から出た。
彼女は棚から白いバスタオルをふたつ取り出し、ひとつを優太に渡してもうひとつを自分の体に巻いた。

まだ全身に湿り気を残したままバスタオルだけ巻いた七海の姿も、優太の気分を高めた。
不安と期待で激しく揺れ動く心を隠しながら、彼も腰にバスタオルを巻いた。

七海は優太をリビングへといざなった。
先に廊下を進む彼女の後ろ姿を追いかけるように続く優太。

彼女の体に巻かれたバスタオルの、ヒップの部分の隆起が彼女の歩みとともに右へ左へと動くように見える。
後ろ髪はお団子に結ったままで、露わになったうなじから肩にかけての曲線も美しい。

優太の心のなかから不安は急速に消え失せ、代わりに欲情が炎のようにめらめらと燃え上がるのを感じた。
リビングまでの短い移動の間で何度、彼女を後ろから抱きすくめたいという衝動が起こり、それを抑え込んだことか。

だからリビングのソファベッド・・・ふたりが勉強したりテレビを観たりしていたデンマーク製のソファまで来ると、優太は七海を強く抱きすくめてそのまま座面に倒れ込んだ。
もう自分では止められなくなった彼を、七海は逆に強く抱きしめて動きを制した。

暴れ馬をなだめるように「落ち着いてください」と耳もとで囁きながら、彼の背中をそっと撫でる七海。
そして抱き合ったまま優太が下になるように姿勢を変え、軽くキスをして頬ずりをした。

それで少しは落ち着いた優太は、深呼吸をしてから彼女に軽いキスを返した。
彼女もまたキスで応じ、そのまま舌を絡ませながら抱き合うふたり。

七海の胸の弾力を持った質感が、バスタオル越しに彼女の上半身の重みとともに感じられる。
それを胸に受け止めながら彼は七海の後頭部のお団子を片手で弄ったが、そうするとなぜか心が甘美なもので満たされていった。

「うぅ~」

優太は七海から口を離し、深く息を吐いた。
潤んだ目で彼をまっすぐ見つめ、髪を撫でる七海。

そのまま彼女は体を起こし、そして優太の体も起こした。
起き上がった彼はバスタオルから出た七海の太ももを撫でようとするが、彼女はそれをやんわりと制した。

再び心が猛りはじめた優太はそれならばと彼女の胸元に手を伸ばすが、それも同じように制された。
七海は再び彼に軽いキスをして、言った。

「優太さん、セックスするのは初めてでしょう?」
「・・・」

無言で頷く優太。
彼女は静かに微笑みながら彼に言った。

「最初に会ったときから、そんな気がしてました。優太さんに告白された時も、それからキスをした時も、きっとそうなんだと感じました」
「・・・」

七海はすべてを見通していたということだが、それに対してどう答えたら良いのか分からなかった。
ただ・・・彼女の静かな瞳を見ていると、素直にそれを受け入れるより他にない気になるのが不思議だった。

彼女はしかし、少し目を反らし気味に続けた。

「先ほども言いましたが・・・優太さんと違って私は今まで何人も男の人と遊んできました。小学校の6年生の時からです・・・」

思わぬ告白に優太はドキリとし、思わず七海を静かに抱きしめる。
そんな彼の耳もとでさらに続ける七海。

「言い訳のようですが、私は家の中で『人の愛』に飢えていました。お金だけはいっぱいあったけど、そんな家庭でした・・・。ただ寂しくて、ひたすらに癒やされたかったのです」

どう答えればいいのだろう・・・彼は股間のモノが急速に萎えていくのを感じた。
ただ、そんなバックグラウンドも含めて七海のすべてを受け入れようと、彼女を抱きながら髪や背中を静かに撫でた。

「・・・でも、今までの男の人たちはみんな、私の体だけが目的。ただ、優太さんだけは違うような・・・今まで私に近付いてきたどの男の人とも違うものを、優太さんには感じました」
「・・・そう思ってくれてるのなら、ありがとう」

実は彼自身も初めは下心いっぱいだったのだが、彼女と接するうちに変わっていったのも事実だ。
今では、彼女のすべてが愛おしく、かけがえのないものになっていた。

「セックスをいくら重ねて一時的に満たされても、すぐにまた寂しくなっていました・・・今までは。でも優太さんは離れていても、どこかで繋がっているという安心感があります」

それならば、お盆前後の沈黙はなんだったんだろうと優太は思ったが、口に出さない。

「私はこの春には、同時に4人の男の人とお付き合いしていました。けれどもそんな関係をリセットして生まれ変わりたいと思って、みんな別れることにして・・・今度のお盆の間に、一応は解決しました。・・・本当はまだくすぶっている関係もありますが自分で蒔いた種だから、自分でなんとかするつもりです」
「僕のために・・・?」

なるほど、お盆の頃に七海はそんなことを抱えていたのか・・・。
しかし彼ひとりのために彼女にそんなことをさせたとなると、責任は重大だ。

優太は緊張が腹の底から全身に広がっていくのを感じた。
彼女の体を包む腕にかかる力の変化を感じ取ったのだろう、七海は彼を安心させるように言った。

「実は、ゴールデンウィークの頃にある男性・・・お祖父さんの関係者の方ですが、私の素行を耳にして諭してくれたんです・・・『もっと自分を大事になさい』と。3か月もかかりましたが、それを実行に移しただけです」

彼のためでないと知って残念なような、しかしホッとしたような、複雑な気持ち。
けれども七海がすべての関係を清算して優太ひとりに心を開いている事実には変わりはなく、それが彼の心を熱く揺るがした。

優太は七海に頬ずりをした。
彼女はそれを受け入れながら、深い呼吸ののち訊いてきた。

「・・・長々とお話してしまいましたが、そんな私でも、お付き合い続けてくれますか?」
「もちろん!」

心の中まで全てをさらけ出してくれた七海に感謝した。
そして、改めて彼女の太ももに手を伸ばした。

今度は七海は拒まない。
優太のモノも、いつの間にか復活しようとしていた。

抱き合い、頬ずりしながら優太は、バスタオルの裾から両脚の付け根へ手を這わせる。
両ももを開いて彼の手を迎え入れる七海。

彼女のそこはヒダがしぼみかけ、潤いもすっかり薄くなっていた。
優太は七海の背中から回した手でバスタオル越しに胸を撫でさすりながら、アソコの外側の丘を指でそっと撫で続ける。

「はぁ~」

すぐに七海は甘い息を吐き、アソコもあっという間に熱い粘液があふれてきた。
血流が戻りぷりぷりしてきたヒダや硬い突起を指先で軽く、しかし執拗に弄う優太。

七海も、優太の腰に巻かれたバスタオルを解いて、ビンビンに勃ったモノを掴む。
彼女が受ける快感に合わせるように彼女の手には力が入り、そして解ける。

優太は思い切って、彼女のバスタオルを体から外す。
恥ずかしさを隠すように、彼の唇に強く吸い付いてくる七海。

露わになった乳房を揉み、乳首を指先で転がしながら、さらに思い切ってアソコに伸ばした指を・・・人差し指一本だけ、熱くてヌルヌルした七海の中に進ませる。

「あ・・・ああ~・・・」

全身を震わせる七海。
熱くて柔らかい無数のヒダが指に絡みつく。

指を出し入れしたり中のヒダを抉るように曲げたりすると、七海はさらに全身を震わせ、周期的にのけぞる。
しばらくそうしているうちに、七海はもうガマンできないといったふうに半分泣きそうになりながら優太に訴えた。

「優太さん、お願いします・・・私の中に入ってきてくれますか・・・?」

優太は頷いた。
・・・頷いたが、妊娠は大丈夫だろうかと不安が過る。

すると七海はゆっくり静かに立ち上がり、反対側のソファに置かれた白い手提げバッグから小さいプラスチックケースを取り出した。
手渡された優太が蓋を開けると、コンドームの小袋。

「お願いがあります・・・これをしてくれますか?」

上目遣いに懇願されるように言われたが、彼にしてみれば言われるまでもないこと。
ひょっとしたら彼女はそういうふうに常に備えていたのかもしれないが、とにかくありがたかった。

優太が初めてのことゆえ迷いながらコンドームを装着する間、七海はソファの両サイドを倒してベッドに仕立てた。
そして、彼女は髪を解いてバスタオルの上に仰向けになり、曲げた両脚を開いた。

「優太さん、いいですよ・・・」

七海は両手でアソコを隠し、目を閉じて顔を横に向けながら彼を待っていた。
胸の中で激しく心臓が拍動するのを感じながら、這うように彼女の両脚の間から体の上に上っていく優太。

彼女は両脚を曲げたまま上げて、いよいよ彼を迎え入れる態勢になった。
優太は彼女の両方の乳首にキスをして、そして唇どうしを重ねた。

キスを受けながら優太のモノに手を添え、アソコの入り口に導く七海。
モノの頭が、熱くてヌメヌメとしたヒダに包まれる。

それだけで優太はイキそうになり、出ようとするものを下腹部に力を込めて食い止めた。
彼女は目を閉じたまま彼を促した。

「このまままっすぐ、来てください」

もう一度深呼吸して心を決めて、ゆっくり腰を前に押し出す。
モノの頭から胴へと無数のヒダが柔らかく絡みついてきて、モノも心も溶けてしまいそうな快感。

「あ・・・ああ・・・」

甘い声を上げながら、彼のモノを締め付けてくる七海。
イキそうになるのを必死に堪えながら優太は、いっぱいまで進んだ。

いつの間にか七海は顔を紅潮させながら両目を見開き、優太を見つめた。

「優太さん・・・ひとつになれましたね・・・」

その間にも意識的にか無意識的にかわからないが、七海の内部は優太のモノをグニュグニュ、グニュグニュと緩急つけて締め付けてくる。
それが彼にとって好きで好きで大切な七海と繋がっている部分で起こっていることだからなおさら、心理的な作用も相まって堪らないほどの快感を催してきた。

「くうっ!」

優太は襲ってくる快感に抗い歯を食いしばり下腹に力を込めながら、腰を動かした。
そんな彼の背中に手を回しながら、七海は荒い息の合間に呼びかけた。

「優太さん・・・気持ちいいです・・・私はさっきイッたから・・・優太さんとひとつになれたから・・・もう満足です・・・遠慮なくイッて・・・イッてください・・・」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、優太は「あぁっ!」と思わず叫びながらコンドーム越しとは言え七海の中で思いきり射精した。

息を切らせながら七海からモノを引き抜き横になる優太の汗をバスタオルの端でそっと拭いてから、彼女は彼のモノに付いたままのコンドームを始末した。
ティッシュで彼の股間を拭く七海は全身の白い肌まで赤みを帯び、優太よりも汗ばんでいた。

「ああ・・・ごめん・・・」

優太はしかし、そう声をかけるだけで精一杯だった。
精液と一緒に精気まで出し切ったように、虚脱状態になった優太。

裸のまま彼に添い寝しながら七海は「ありがとう」とだけ囁き、軽くキスをしてから髪を撫でてきた。
ふと顔を動かして窓の外を見ると、秋の気配を含ませた空の下に夏の青い海と黒々とした森が輝いていた。
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