KNOCK

菅井群青

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20.過去の君は

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 慈善パーティは大成功だったようだ。

 牧田はあの後結衣をタクシーに押し込み自宅へと帰らせた。坂上はいつのまにかパーティ会場から姿を消していた。メールで先に帰ると連絡があったのでとりあえずは大丈夫だろう。

 大勢の招待客が利用するためホテルでタクシーが捕まらない。早々に諦めた牧田は大通りを歩かけ始めた。夜風が思いのほか冷たく室内で火照った頰に当たると気持ちが良かった。この大通りはなぜか冬でもないのに並木にライトアップをしている。一人で歩くには贅沢だ。

 会場ではひっきりなしに押し寄せる名刺交換の波に飲まれてしまった。随分と参加していなかったせいか多くの業界人が牧田を解放させてくれなかった。

(これからはこまめに出ておこうかな……)

 以前の自分の怠けに後悔しつつ、そのせいで先輩に怖い思いをさせてしまったと反省していた。あまりの怒りで白川を脅してしまったが仕方がない。
 その後、牧田は結衣から過去の話を聞くことが出来たが、本人の口から聞くと自分の胸の中まで毒で犯される気持ちだった。ゆっくりとしっかりと話す結衣の瞳は意外にもしっかりしていた。

(まてよ、過去の先輩に会っているのになぜ俺のことを覚えてないんだ? それに、白川と付き合っていた事も先輩から聞いたのに)

 今更ながら矛盾に気づく。タイムマシン系の話だと、すぐさま未来に反映されているが、この場合は違うのかもしれない。五年前の記憶を彼女がない……ということは、俺が#_過去の先輩の記憶や思い出を覗いているだけ_・__#って事かもしれない。ってことは白川に【影花】を奪われるのは変わらない……先輩が笑顔を奪われるのは変えられない──のか?

 おい、神さま勘弁してくれ。なんで俺と過去を結ばせたんだ。先輩の過去を俺が知らなかったら……俺が、知らなかったら──?

 もし俺が先輩の過去を知らなかったら先輩のことがずっと嫌いだった。

 先輩に鍵を届けることなんてしなかった。
 自然に笑みがこぼれるなんて出来なかった。
 パーティに出ることなんて絶対にしなかった。
 メディアの前で再び愛想振りまかなかった。
 白川に負けたくないと仕事に燃えなかった。
 絡まれた先輩を助けなかった。

 先輩を──こんなにも愛おしく思わなかった……。変えてもらったのは俺自身だった。
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