虚弱なヤクザの駆け込み寺

第一部

光田の独白

　龍晶会の組長、万代司組長は本当に先生のことが好きだ。色気ムンムンの女がいても「くせえからヤダ」と言い相手にもしない。うちの組長にようやく春が来た。

　特に最近は機嫌がいい。
　実はつい最近先生の口から自分の名前が出たのが本当に嬉しかったらしく突然発作的に顔を赤らめる。本当に何がきっかけで起こるか分からないので何も知らない人間は突然赤みを増していく顔を見るなり真っ青になっている。
　そりゃそうだ、そんな人間らしい微笑ましい姿を見るのは俺だって初めてだった。町田さんもそれに関しては本当に良かったと言っている。ただ少し自分自身不幸が続いている気がするので、今度お祓いに行ってみようと思うんだけど……と相談されたことは誰にも言わないでおこう。

　最近俺はなんでか可憐な少女の皮を被った女豹に好かれてしまったが、最近はようやく慣れてきた。一時は町田さんと一緒に生き霊払いに行こうかと思ったぐらいだ。しかしその女豹も時々やけにドス黒いオーラを纏っているのでそんなことをしたら後が怖いからやめといた方がええかもしらんと思い始めた。

　まぁ、先生もあながち組長のこと嫌いじゃないと思うんやけど、女心をよく知らんから分からん。でも、マミっていう女が先生の院に襲来した時、先生はマミと組長を交互に見て、一瞬すごく悲しそうな顔をしたのを俺は見逃さんかった。

　先生が何も聞いたか知らないけど、女を食いまくってた組長はもういないです。今は修行僧みたいな生活です。

　先生は本当にヤクザとは無縁の人間で、ヤクザの世界の事を知ればきっと嫌になるかも知らんけど……組長はもう先生がいないと──ダメな体になんです。心も──身体も。
　だから俺は先生にお願いしたい。

　大人しく捕まってください……！