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第二部
キス魔の心
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俺以外の男とキスするなんて……あかんに決まってるやろ!
光田は思わず駆け出して合コン中の座敷に乗り込む。キスしようと隣の男に顔を寄せる心の肩を掴み振り向かせると光田は顔を傾け心の唇を奪った。
「んん?!──ん……」
心は一瞬大きく目を開き顔を真っ赤にさせたがそのまま目を瞑り光田の背中に手を回した。
一瞬座敷は沈黙に包まれたが、誰かが拍手を送り出し瞬く間に光田と心は歓声に包まれた。
「なんだよ、かっけぇ!」
「ドラマみたいなキスじゃん!」
「よぉっ! お二人さん!」
光田はゆっくりと心から離れる。
「なんやねん、他のやつとキスすんなや……俺とだけで、ええやろ」
「光田様……」
心の目から涙が落ちそうだ。
そのままポロポロと溢れると光田がその涙を隠すように自分の胸に心の頭を押し付けた。
「もう、降参する──完敗や、心ちゃん」
光田がため息まじりに呟いた。
「えーっと、あなたがあの、光田様?」
振り返るとショートカットの女が立っていた。二人の世界を邪魔してしまい申し訳なさそうだ。
あれ? さっき心ちゃんとキスしようとした男って……もしかして、この子か?
「やだもう、心ちゃんは男の子とキスはしませんよ。光田様に恋してからはどんなに酔っても男にはキスしてないですから、その分私達が餌食ですけどね……」
周りを見ると心の友人だろう、数人と同じように首を縦に振り続けている。
「光田様じゃないですわ、お断り──とかね……」
「目が二重……チッ光田様の偽物ね──とか言って全く男にキスしなくなったものね、心も一途よね」
心の友人が次々と暴露していく。
「ちょっと、やめて。恥ずかしいですわっ」
心が慌ててそれを止めようとする。その耳は真っ赤だった。
この子も、やっぱり女の子やったんやな……。
「なんだよ、彼氏持ちだったのかー」
合コン相手が残念そうにこちらを見上げていた。ショートカットの女が可笑しそうに笑う。
「どっちにしても、心はヤクザの娘よ。あんた達じゃ無理よ……光田様みたいにヤクザの男じゃなきゃね」
「ヤクザ……」
男どもの顔色が悪くなり、心と光田を交互に見るとそそくさと退散していく。心の友人達はその後ろ姿を見て楽しそうに微笑んでいる。元々この合コンに乗り気ではなかったようだ。
「じゃあね、心。また大学でね!」
「えぇまたお会いしましょう」
友人達も次々と靴を履き始めて帰り支度をし、あっというまに座敷には誰もいなくなってしまった。
心は光田の方を振り返り、そっとその指に触れた。顔はこちらが照れるほど赤くなっている。
「光田様、私と……付き合ってくださいませんか?」
「いや、もう俺たち色々順番飛んでるんやけど……こちらこそ、よろしくお願いします」
光田がお辞儀すると。心が光田に抱きついて震えている。
可愛い。
光田が微笑んでいると心の手が光田のお尻を掴む。撫でるでもない、ガシッと力強く。
ん? おしりさん? 俺のおしりさん?
「う、嬉しいですわ、感無量ですわ……。ふふふ、これで光田様の体は全て私のもの……ふふふ、好きにしていいと言ってくださったんだもの、興奮して震えちゃいますわ……」
「好きにしてええって誰がどのタイミングで言ったか教えてくれるか?──てか揉むな!」
座敷の前を通りかかった店員が尻を揉まれている俺と目が合うと持っていた盆を床に落とす。
「し、失礼しました!」
「いや、礼を欠いてるのは俺らやし」
すぐさま組長と幸の方を見るがそこはもう誰もいないようだ。いつのまにか帰ったらしい……。
「まったく、先生には、敵わんな──っておい! ベルトを外すなって! あほちゃうか!?」
「光田様、ここは畳ですよ? チャンスです」
「まじでやめろって! あぁ……助けて、先生ー!!」
居酒屋に光田の悲鳴が響いた。
「ん? 呼んだ?」
「何がだ」
「誰かに呼ばれた気がして……」
幸と組長は店から歩いて帰宅途中だ。人混みを抜け見慣れた風景が広がる。
組長がすっと左手を差し出す。
「先生、ほら、あの……なんだ。恋人ってのは……手を繋ぐんだろ?」
「もしかして、したことないの?」
「保育園の遠足──」
「それは普通やつでしょ、ほら……コレ」
幸が組長の指に自分の指を絡める。組長が顔を赤くしながらそれをまじまじと見る。
「なんか、食われてるみてぇだな……」
幸も繋がれた手を見て満足そうに微笑むと、組長もつられて笑った。
夜のデートは心地よかった。
光田は思わず駆け出して合コン中の座敷に乗り込む。キスしようと隣の男に顔を寄せる心の肩を掴み振り向かせると光田は顔を傾け心の唇を奪った。
「んん?!──ん……」
心は一瞬大きく目を開き顔を真っ赤にさせたがそのまま目を瞑り光田の背中に手を回した。
一瞬座敷は沈黙に包まれたが、誰かが拍手を送り出し瞬く間に光田と心は歓声に包まれた。
「なんだよ、かっけぇ!」
「ドラマみたいなキスじゃん!」
「よぉっ! お二人さん!」
光田はゆっくりと心から離れる。
「なんやねん、他のやつとキスすんなや……俺とだけで、ええやろ」
「光田様……」
心の目から涙が落ちそうだ。
そのままポロポロと溢れると光田がその涙を隠すように自分の胸に心の頭を押し付けた。
「もう、降参する──完敗や、心ちゃん」
光田がため息まじりに呟いた。
「えーっと、あなたがあの、光田様?」
振り返るとショートカットの女が立っていた。二人の世界を邪魔してしまい申し訳なさそうだ。
あれ? さっき心ちゃんとキスしようとした男って……もしかして、この子か?
「やだもう、心ちゃんは男の子とキスはしませんよ。光田様に恋してからはどんなに酔っても男にはキスしてないですから、その分私達が餌食ですけどね……」
周りを見ると心の友人だろう、数人と同じように首を縦に振り続けている。
「光田様じゃないですわ、お断り──とかね……」
「目が二重……チッ光田様の偽物ね──とか言って全く男にキスしなくなったものね、心も一途よね」
心の友人が次々と暴露していく。
「ちょっと、やめて。恥ずかしいですわっ」
心が慌ててそれを止めようとする。その耳は真っ赤だった。
この子も、やっぱり女の子やったんやな……。
「なんだよ、彼氏持ちだったのかー」
合コン相手が残念そうにこちらを見上げていた。ショートカットの女が可笑しそうに笑う。
「どっちにしても、心はヤクザの娘よ。あんた達じゃ無理よ……光田様みたいにヤクザの男じゃなきゃね」
「ヤクザ……」
男どもの顔色が悪くなり、心と光田を交互に見るとそそくさと退散していく。心の友人達はその後ろ姿を見て楽しそうに微笑んでいる。元々この合コンに乗り気ではなかったようだ。
「じゃあね、心。また大学でね!」
「えぇまたお会いしましょう」
友人達も次々と靴を履き始めて帰り支度をし、あっというまに座敷には誰もいなくなってしまった。
心は光田の方を振り返り、そっとその指に触れた。顔はこちらが照れるほど赤くなっている。
「光田様、私と……付き合ってくださいませんか?」
「いや、もう俺たち色々順番飛んでるんやけど……こちらこそ、よろしくお願いします」
光田がお辞儀すると。心が光田に抱きついて震えている。
可愛い。
光田が微笑んでいると心の手が光田のお尻を掴む。撫でるでもない、ガシッと力強く。
ん? おしりさん? 俺のおしりさん?
「う、嬉しいですわ、感無量ですわ……。ふふふ、これで光田様の体は全て私のもの……ふふふ、好きにしていいと言ってくださったんだもの、興奮して震えちゃいますわ……」
「好きにしてええって誰がどのタイミングで言ったか教えてくれるか?──てか揉むな!」
座敷の前を通りかかった店員が尻を揉まれている俺と目が合うと持っていた盆を床に落とす。
「し、失礼しました!」
「いや、礼を欠いてるのは俺らやし」
すぐさま組長と幸の方を見るがそこはもう誰もいないようだ。いつのまにか帰ったらしい……。
「まったく、先生には、敵わんな──っておい! ベルトを外すなって! あほちゃうか!?」
「光田様、ここは畳ですよ? チャンスです」
「まじでやめろって! あぁ……助けて、先生ー!!」
居酒屋に光田の悲鳴が響いた。
「ん? 呼んだ?」
「何がだ」
「誰かに呼ばれた気がして……」
幸と組長は店から歩いて帰宅途中だ。人混みを抜け見慣れた風景が広がる。
組長がすっと左手を差し出す。
「先生、ほら、あの……なんだ。恋人ってのは……手を繋ぐんだろ?」
「もしかして、したことないの?」
「保育園の遠足──」
「それは普通やつでしょ、ほら……コレ」
幸が組長の指に自分の指を絡める。組長が顔を赤くしながらそれをまじまじと見る。
「なんか、食われてるみてぇだな……」
幸も繋がれた手を見て満足そうに微笑むと、組長もつられて笑った。
夜のデートは心地よかった。
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