48 / 99
第二章 王宮尚書官編
47話 心外
しおりを挟む
「ちょ、ちょっと待ってデレアさん。それ本当?」
リアンナ長官が狼狽して私に尋ねてきた。
「はい。灯りも乏しい深夜でしたので誰かまではハッキリ見えませんでしたけれど、尚書官業務室の前で奇妙な動きをしていたのが窺えたので、隠れて見ていたんですよね」
もちろん嘘です。
私は深夜はぐっすり寝てしまうタイプだ。むしろ、ちょっとやそっとじゃ中々起きれないぐらいだ。
「それは本当かデレア!? その人物は男か!? 女か!? どんな背格好だった!? 灯りが乏しくとも髪の長さとかぐらいは見えただろう!?」
食い付いてきたのはやはりヤリュコフ先輩か。
「……これを言ってしまっていいのか、ちょっとアレなんですけど」
私はわざとらしく言い淀むフリをして見せる。
「貴重な情報だ! 包み隠さず答えるんだデレア!」
必死な顔で食いついてくるヤリュコフ先輩とは裏腹に、ナザリー先輩、ミャル先輩、そしてリアンナ長官は不安そうな表情で佇んでいる。
さて、ここからだな。私の嘘八百芸をとくと味わわせてやる。
「そうですね。私が見たその人影は男性の方のように見えました」
「っな!? そ、そんな馬鹿な事があるかッ!!」
ヤリュコフ先輩。この人はやはり……。
「おいデレア、よく思い出せ! 尚書官業務室を出入りしていたのが本当に男に見えたのか!?」
「はい。そうです」
「デレア、お前は寝ぼけているんじゃないのか!? それか夢でも見たのだろう! そんな事はありえるはずがない!」
……なんという愚かな男なのだろう。
「何故ですかヤリュコフ先輩?」
「何故って、それは……」
「さっきから一番おかしな言動ばかりしているのはヤリュコフ先輩、あなたですよ」
「違う! 私はおかしな事は言っていない!」
「それなら何故、昨晩私が見た人影が男性である事を頑なに否定するのです? まるで自分が疑われたくないかのように感じてしまいますよ?」
「そうではない! 私も……私も、昨晩見たのだ! 尚書官業務室に出入りしている怪しい人物を!」
この男はまた奇妙な事を……それでは先程の証言と食い違ってしまうだろうに。
「ヤリュコフくん、それはいくらなんでもおかしくない?」
「そうですよ……さっきヤリュコフ先輩、夜中は寝ていたと仰ったじゃないですか」
当然、ミャル先輩とナザリー先輩も怪訝な表情をしている。
「下手な疑いをかけられたくなかったから黙って様子を見ていたのだ。私も昨晩は気になる事があって起きていた。そして見たのだ、尚書官業務室を出入りしている女の姿をな!」
「へえ。ヤリュコフ先輩は女性を見たんですか?」
「そうだ! だからこそ私はリアンナ長官が国璽を盗んだ犯人だと疑ったのだよ!」
「何故女性だとわかったんですか?」
「そんなもの、あの特徴的な長い後ろ髪を見れば一目瞭然だ。そして言ってしまえば、宮内官で黒くて長い髪をしている尚書官といえばリアンナ長官以外いない」
ヤリュコフ先輩はあくまでリアンナ長官を犯人だと決めつけているようだ。
なるほどねえ。
「と、言う事は私が言っている事は嘘になりますね」
「新人のデレア。お前が何を言っているか知らんが、少なくとも昨晩出入りしていたのは男ではない」
「それは髪が長かったからですか?」
「そうだ。尚書官で長髪の女性はカリンとリアンナ長官、それに新人のデレアの三人だが、黒髪なのはリアンナ長官だけだろう」
ミャル先輩とナザリー先輩は確かに長髪ではないから、消去法で言えばそうなる。
「そうですね。しかし何故それがリアンナ長官だと言い切れるんですか? 尚書官ではない人物かもしれないですよ?」
「お前は何を馬鹿な事を。こんなところ出入りする者など尚書官以外に……」
「もう焦ったいので結論から言っちゃいますが、リアンナ長官は犯人ではないんですよ」
「だから何故そんな風に言い切れる!?」
「何故ならリアンナ長官は昨晩、王宮内にはいなかったんですよ」
「「は?」」
私の唐突な言葉に全員が顔を歪ませる。
「昨晩、リアンナ長官は急用の為、王宮を離れていたんです。帰ってきたのは朝方です」
そう。これこそが私がリアンナ長官が犯人ではないと言い始めた根拠なのだ。
「……ええ。実は私、昨晩急な呼び出しがあって、王都のはずれにあるとある貴族のお屋敷に行っていたの。そこで外交に関する書簡を確認して、受け取って帰ってきたのはもう夜明けの頃だったの。で、戻ったら長官室がこの有様だったのよ」
リアンナ長官の言葉通り、私も彼女が王宮を出ていく姿をこの目で見ている。
昨晩のあのやりとりの後、すぐ彼女は王宮から出て行ったからだ。
「な、何をそんなデタラメを……! そんな話、我々は知りません!」
ヤリュコフ先輩の言葉にナザリー先輩もミャル先輩も頷いている。
「それはヤリュコフ先輩、あなた方が信用できなかったからですよ」
「なんだとデレア? 新人の癖にお前は一体何を言ってるんだ!?」
「そのセリフ、そっくりお返ししますよヤリュコフ先輩。あなたはさっきから一体何を言っているのですか?」
「なんだと?」
「これまでの流れとあなたの様子を見てみる限り、あなたの言動にはまるで一貫性が感じられません。あなたは一体、誰の言葉に誑かされているのです?」
「……ッな!?」
ヤリュコフ先輩が明らかに狼狽えたな。
やはり予想通りだ。この人、誰かの傀儡なんだ。
「わ、私は別に誑かされてなど……!」
「……もう三文芝居はここまでにしましょう。リアンナ長官もそろそろ本当の事を話してください」
私はヤリュコフ先輩の言葉を置いておき、再びリアンナ長官に向き直す。
「わかったわデレアさん、もうハッキリ言うわね、ヤリュコフくん、ミャルさん、ナザリーさん。あなた方三人は王家に仇なすスパイ疑惑が掛けられているわ」
「「な!?」」
「国璽に関する事で私がナーベル法官から気をつけろと言われた後、私は国王陛下にも呼び出されたの。それで、とある一部の宮廷貴族が不審な動きをしていると伝えられたわ」
そう。昨晩リアンナ長官は国璽の事で私に相談をしてきたのである。
『尚書官の中に裏切り者がいるかもしれないから秘密裏に協力して欲しい』と。
リアンナ長官は昨晩、本当に王都のはずれに住んでいる貴族のところへ行っていた。
その間に誰かが怪しい行動をしないか注意して見て欲しいと言われていたのである。
とは言っても私も真夜中にずっと見張るなんて面倒な事はしたくないし、実際は寝てたので本当に何もしていない。
へえー、そうなんだ。くらいに軽く考えていたらこの事件となったわけだ。
普通であれば私のような新人にそのような重要な話をするのはありえないのだが、今回の件に関しては新人である私の方が都合が良かった。
何故ならスパイ疑惑は一年以上尚書官を務めていた者たちに掛けられていたからだ。
ちなみに現在、帰省しているカリン先輩も対象外だ。彼女もまだ尚書官に仕官してから二ヶ月程度の新人だからだ。
「ま、まさかそれが我々だと言いたいんですか長官!?」
ヤリュコフ先輩が明らかに動揺している。
「違いますよヤリュコフ先輩。あなた方、ではなくてあなたが、になりました。この問答のおかげでね。国璽をあなたが取ったのかまではわからないですが、スパイ疑惑が現在最も濃厚なのはあなたに絞られました」
私が代わりにそう答えると、
「き、貴様……新人の癖に生意気な! 私がスパイだと!?」
「断定はしていません。かもしれない、ですよ。だからもう白状しちゃいません? 自分は嘘を言ってますって。どう考えてもさっきからあなたの言っている事はおかしいんですよ」
「馬鹿な事を! おい、ナザリー、ミャル先輩! みんなもそう思うだろう!?」
ヤリュコフ先輩は二人に問いかけるが、
「いえ……さっきからおかしな言動を繰り返してるのはヤリュコフ先輩だと思います……」
「そうよねナザリーちゃん。ヤリュコフくん、あなたが何故、最初からそんなにもいきりたってるのかよくわからないわ」
明らかな温度差を見せつける。
「……ーッ!!」
ヤリュコフ先輩はその顔を紅潮させ、今にも怒りを噴火しそうなほどに顔を歪ませている。
「……私は……私は嘘など言っていないッ!!」
そしてついに彼は狂気の行動を取り始める。
リアンナ長官が狼狽して私に尋ねてきた。
「はい。灯りも乏しい深夜でしたので誰かまではハッキリ見えませんでしたけれど、尚書官業務室の前で奇妙な動きをしていたのが窺えたので、隠れて見ていたんですよね」
もちろん嘘です。
私は深夜はぐっすり寝てしまうタイプだ。むしろ、ちょっとやそっとじゃ中々起きれないぐらいだ。
「それは本当かデレア!? その人物は男か!? 女か!? どんな背格好だった!? 灯りが乏しくとも髪の長さとかぐらいは見えただろう!?」
食い付いてきたのはやはりヤリュコフ先輩か。
「……これを言ってしまっていいのか、ちょっとアレなんですけど」
私はわざとらしく言い淀むフリをして見せる。
「貴重な情報だ! 包み隠さず答えるんだデレア!」
必死な顔で食いついてくるヤリュコフ先輩とは裏腹に、ナザリー先輩、ミャル先輩、そしてリアンナ長官は不安そうな表情で佇んでいる。
さて、ここからだな。私の嘘八百芸をとくと味わわせてやる。
「そうですね。私が見たその人影は男性の方のように見えました」
「っな!? そ、そんな馬鹿な事があるかッ!!」
ヤリュコフ先輩。この人はやはり……。
「おいデレア、よく思い出せ! 尚書官業務室を出入りしていたのが本当に男に見えたのか!?」
「はい。そうです」
「デレア、お前は寝ぼけているんじゃないのか!? それか夢でも見たのだろう! そんな事はありえるはずがない!」
……なんという愚かな男なのだろう。
「何故ですかヤリュコフ先輩?」
「何故って、それは……」
「さっきから一番おかしな言動ばかりしているのはヤリュコフ先輩、あなたですよ」
「違う! 私はおかしな事は言っていない!」
「それなら何故、昨晩私が見た人影が男性である事を頑なに否定するのです? まるで自分が疑われたくないかのように感じてしまいますよ?」
「そうではない! 私も……私も、昨晩見たのだ! 尚書官業務室に出入りしている怪しい人物を!」
この男はまた奇妙な事を……それでは先程の証言と食い違ってしまうだろうに。
「ヤリュコフくん、それはいくらなんでもおかしくない?」
「そうですよ……さっきヤリュコフ先輩、夜中は寝ていたと仰ったじゃないですか」
当然、ミャル先輩とナザリー先輩も怪訝な表情をしている。
「下手な疑いをかけられたくなかったから黙って様子を見ていたのだ。私も昨晩は気になる事があって起きていた。そして見たのだ、尚書官業務室を出入りしている女の姿をな!」
「へえ。ヤリュコフ先輩は女性を見たんですか?」
「そうだ! だからこそ私はリアンナ長官が国璽を盗んだ犯人だと疑ったのだよ!」
「何故女性だとわかったんですか?」
「そんなもの、あの特徴的な長い後ろ髪を見れば一目瞭然だ。そして言ってしまえば、宮内官で黒くて長い髪をしている尚書官といえばリアンナ長官以外いない」
ヤリュコフ先輩はあくまでリアンナ長官を犯人だと決めつけているようだ。
なるほどねえ。
「と、言う事は私が言っている事は嘘になりますね」
「新人のデレア。お前が何を言っているか知らんが、少なくとも昨晩出入りしていたのは男ではない」
「それは髪が長かったからですか?」
「そうだ。尚書官で長髪の女性はカリンとリアンナ長官、それに新人のデレアの三人だが、黒髪なのはリアンナ長官だけだろう」
ミャル先輩とナザリー先輩は確かに長髪ではないから、消去法で言えばそうなる。
「そうですね。しかし何故それがリアンナ長官だと言い切れるんですか? 尚書官ではない人物かもしれないですよ?」
「お前は何を馬鹿な事を。こんなところ出入りする者など尚書官以外に……」
「もう焦ったいので結論から言っちゃいますが、リアンナ長官は犯人ではないんですよ」
「だから何故そんな風に言い切れる!?」
「何故ならリアンナ長官は昨晩、王宮内にはいなかったんですよ」
「「は?」」
私の唐突な言葉に全員が顔を歪ませる。
「昨晩、リアンナ長官は急用の為、王宮を離れていたんです。帰ってきたのは朝方です」
そう。これこそが私がリアンナ長官が犯人ではないと言い始めた根拠なのだ。
「……ええ。実は私、昨晩急な呼び出しがあって、王都のはずれにあるとある貴族のお屋敷に行っていたの。そこで外交に関する書簡を確認して、受け取って帰ってきたのはもう夜明けの頃だったの。で、戻ったら長官室がこの有様だったのよ」
リアンナ長官の言葉通り、私も彼女が王宮を出ていく姿をこの目で見ている。
昨晩のあのやりとりの後、すぐ彼女は王宮から出て行ったからだ。
「な、何をそんなデタラメを……! そんな話、我々は知りません!」
ヤリュコフ先輩の言葉にナザリー先輩もミャル先輩も頷いている。
「それはヤリュコフ先輩、あなた方が信用できなかったからですよ」
「なんだとデレア? 新人の癖にお前は一体何を言ってるんだ!?」
「そのセリフ、そっくりお返ししますよヤリュコフ先輩。あなたはさっきから一体何を言っているのですか?」
「なんだと?」
「これまでの流れとあなたの様子を見てみる限り、あなたの言動にはまるで一貫性が感じられません。あなたは一体、誰の言葉に誑かされているのです?」
「……ッな!?」
ヤリュコフ先輩が明らかに狼狽えたな。
やはり予想通りだ。この人、誰かの傀儡なんだ。
「わ、私は別に誑かされてなど……!」
「……もう三文芝居はここまでにしましょう。リアンナ長官もそろそろ本当の事を話してください」
私はヤリュコフ先輩の言葉を置いておき、再びリアンナ長官に向き直す。
「わかったわデレアさん、もうハッキリ言うわね、ヤリュコフくん、ミャルさん、ナザリーさん。あなた方三人は王家に仇なすスパイ疑惑が掛けられているわ」
「「な!?」」
「国璽に関する事で私がナーベル法官から気をつけろと言われた後、私は国王陛下にも呼び出されたの。それで、とある一部の宮廷貴族が不審な動きをしていると伝えられたわ」
そう。昨晩リアンナ長官は国璽の事で私に相談をしてきたのである。
『尚書官の中に裏切り者がいるかもしれないから秘密裏に協力して欲しい』と。
リアンナ長官は昨晩、本当に王都のはずれに住んでいる貴族のところへ行っていた。
その間に誰かが怪しい行動をしないか注意して見て欲しいと言われていたのである。
とは言っても私も真夜中にずっと見張るなんて面倒な事はしたくないし、実際は寝てたので本当に何もしていない。
へえー、そうなんだ。くらいに軽く考えていたらこの事件となったわけだ。
普通であれば私のような新人にそのような重要な話をするのはありえないのだが、今回の件に関しては新人である私の方が都合が良かった。
何故ならスパイ疑惑は一年以上尚書官を務めていた者たちに掛けられていたからだ。
ちなみに現在、帰省しているカリン先輩も対象外だ。彼女もまだ尚書官に仕官してから二ヶ月程度の新人だからだ。
「ま、まさかそれが我々だと言いたいんですか長官!?」
ヤリュコフ先輩が明らかに動揺している。
「違いますよヤリュコフ先輩。あなた方、ではなくてあなたが、になりました。この問答のおかげでね。国璽をあなたが取ったのかまではわからないですが、スパイ疑惑が現在最も濃厚なのはあなたに絞られました」
私が代わりにそう答えると、
「き、貴様……新人の癖に生意気な! 私がスパイだと!?」
「断定はしていません。かもしれない、ですよ。だからもう白状しちゃいません? 自分は嘘を言ってますって。どう考えてもさっきからあなたの言っている事はおかしいんですよ」
「馬鹿な事を! おい、ナザリー、ミャル先輩! みんなもそう思うだろう!?」
ヤリュコフ先輩は二人に問いかけるが、
「いえ……さっきからおかしな言動を繰り返してるのはヤリュコフ先輩だと思います……」
「そうよねナザリーちゃん。ヤリュコフくん、あなたが何故、最初からそんなにもいきりたってるのかよくわからないわ」
明らかな温度差を見せつける。
「……ーッ!!」
ヤリュコフ先輩はその顔を紅潮させ、今にも怒りを噴火しそうなほどに顔を歪ませている。
「……私は……私は嘘など言っていないッ!!」
そしてついに彼は狂気の行動を取り始める。
9
あなたにおすすめの小説
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!
みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。
幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、
いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。
そして――年末の舞踏会の夜。
「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」
エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、
王国の均衡は揺らぎ始める。
誇りを捨てず、誠実を貫く娘。
政の闇に挑む父。
陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。
そして――再び立ち上がる若き王女。
――沈黙は逃げではなく、力の証。
公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。
――荘厳で静謐な政略ロマンス。
(本作品は小説家になろうにも掲載中です)
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる