蒼い月に照らされて 〜この先ずっと愛し続けたい〜

颯斗

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何気ない日々の中で

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「1Aは、ベッドの回転率が高いですもんね。患者さんたち変わり入れ替わりしますもんね。その分、時間との兼ね合いをうまくこなしていかないといけない部署ですからね。松岡さんは、ぼくが一推しした看護師さんです。おっしゃる通り、若いですが頑張ってくれる人だとはぼくも思ってました。何かあったんでしょうかね…」
松岡さんは、僕が山本師長さんに、彼女は一推しですと薦めた人財。何かあったのかもしれない。女性の職場は様々なモノが入り混じっている。その何かにたまたま、つまずいたのかもしれない。なんとかせねばだ。配置人数に余裕はない。
その時、モニターの異常音が詰所に鳴り響いた。血圧が低下している音だ。と同時に、成田淳子の声がした。
「師長さん。東野さんの血圧が低下して、バイタルが安定しません。先生を呼んでますので、すぐ来ると思います」
「わかりました。すぐ行きます。成田さん。一度、松岡さんにヒアリングしてもらえませんか?わたしには言えないことも、成田さんなら何か聞き出せるかもしれません。彼女だけではありませんが、誰もこぼしたくありません。みんな大事な戦力です。よろしくお願いしますよ。成田さん」
そう言い残し、病室へと走り出した。
その後、しばらく1A詰所前で看護師たちの様子を伺っていたが、急変した患者がいた事もあり、慌ただしくなってきたので、他病棟の師長にも挨拶にいった。持っていたピッチに前田看護部長からも呼ばれたりしたことから、再び1A病棟に戻ってきたのは、夕方4時半を回っていた。さすがに病棟はまた静かさを取り戻しており、山本師長もデスクワークをしていた。
「成田さん。お疲れさまです。まだ居らしたんですね」
成田淳子が、後ろから声をかけてきた。少し顔が疲れている様子であったが、笑顔でかかさず声をかけてきた。
「お疲れさまです。昼間は大変でしたね。大丈夫でしたか?」
「はい。なんとか患者さん、頑張ってくれたんですけどね…」
その発言で察した。すぐに顔に出てしまうほうなので、少し下を向きがちに、
「そうなんですかぁ。ぼくも医療従事者ですが事務方ですので、あまりこういう現場に慣れてませんから、なんで言えばいいのかわからないです」
少ししんみりとした表情でいてると、成田淳子は僕の膝の後ろから膝を入れて、
「そんな表情をしないでくださいよ。成田さん。ここは病院ですよ。何かあって入院されてます。それを少しでも元気にしてもらうために、私たちナースは居ます。私たちはこんな時、もっと出来たことがあったはずと思って次に繋げます。もう一つ何か出来れば、このような結果にはならなかったかもしれないと、前を向いてまた頑張ります。だから、成田さんも、前を向いて次に繋げていきましょうよ。師長さんから多分、松岡さんのこと聞いているかと思います。私のできることあれば、なんでも言ってくださいね。私もフォローしますよ」
そんな風に話す成田淳子を目の当たりにして、やっぱり改めて、尊敬できる看護師だと感じた。なんとかしなきゃ。

しばらくの間、成田淳子と立ち話をしていたが、エリーゼの為にのナースコールが鳴り出した。詰所に誰も居なかったことから、成田淳子が対応した。
「成田さん。少し外しますね。それはそうと、成田さん。この後、本部に戻るんですか?」
「決めてませんが、課長からは何も聞いてないですし、このまま帰ろうかどうか悩んでますが…なにか?」
その質問に何も返答することなく、成田淳子は病室に走って行った。それから5分くらいの時間の後、ナースコールをした病室から出てきた。
「点滴の交換でした。成田さん。なんか今日はお酒が飲みたい気分なんです。良ければこの後、お酒飲みに行きませんか?」
後半、ほかのナースにバレないように小声で話してきた。また、距離が近くなっていた。
「成田さん。お酒飲むんですか?もしかして大好きとか?」
「毎日飲んでますよ。家でも飲みますし、看護師メンバーで飲みに行ったりします」
「成田さん。飲みに行きたい気分っておっしゃってましたが、今話したことを聞いたら毎日じゃないんですか?飲みたい気分って」
そう言って、鞄の中から手帳を取り出し、この後のスケジュールを確認した。
「成田さん。少し飲みに行きますか?美味しいお店知ってるんですか?本部の辺りはランチも食べてますからわかりますが…。」
「電車で出るんですよ。少し、カルテをまとめるんで、少し待っててくださいね」
そう言うと、成田淳子は詰所の中へ駆け足で向かい、そそくさと記録をまとめ出した。
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