蒼い月に照らされて 〜この先ずっと愛し続けたい〜

颯斗

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何気ない日々の中で

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「成田さん。どうしたんですか?酔ってます?もしかして。そんな表情で、接近されると、僕も酔ってますから、どうなっても知りませんよ。僕も男ですし。押し倒しても知りませんからね」
「私の色仕掛けで、その気にさせても、成田さんはその気になったらダメですよ。寸止めですからね。私は、白衣の天使ではなくて、デビルかも。」
完全にお酒が入っていて酔っている様子。このお店に入ってから、生ジョッキ3杯、ハイボール2杯、焼酎ロック、地酒、かなりハイピッチで飲んでいた。自分もかなり飲んだが、あまりのハイピッチの飲み方をしていたので、途中でペースを止めた。
「成田さん。デビルじゃないですよ。天使なんですから」
笑いながら続けると、成田淳子は、目の前の席から、隣の席に場所を変えて、
「じゃあブラックエンジェルで。成田さん。淳子のしっぽに注意してくださいね。あ、それと2人の時は、成田さんってのやめにしませんか?2人とも『成田さん』ですし。下の名前でいいですよ。」
「『淳子さん?』ですか?まぁ、成田さんが言うならそれでもいいですが、『淳子さん』ちゃんと言えるかな。ブラックエンジェルさんに。」

成田淳子の手は温かくて、手から優しさが伝ってくるかのようなそんな温もりが感じられてくる。心地よい何かが包み込んだ。もちろんお酒の力もあるだろうが、この感覚は一体なんなんだろう。この感覚は、ここ数年経験した記憶がない。
「成田さん。随分飲みすぎました。いきなり、その場の雰囲気でお誘いしましたが、すごく楽しかったですし、とっても良いお店を紹介してくださいました。今日成田さんをお誘いして間違いありませんでした。色々と新たな成田淳子の部分を見せてしまいましたけどね。久しぶりになんか、こんな気持ちになれたような気がします。すごく心地良くて居心地がいいですね。今日は本当に付き合ってくれてありがとうございました。こんな私ですが、これからも宜しくお願いしますね」
成田淳子は、頭を深々と下げてきた。それは、2人の距離が近かったこともあり、下げた頭が自分の胸の中にすっぽりと収まったかのように止まった。その収まった身体は、なんだか震えているように感じて上に着ていたカッターシャツを掴みながら、身体を擦り寄せてきた。ただ、イヤな感じや、マズイ感じは一切なく、その成田淳子の一連の流れに身を任せていて、それもまた心地よい雰囲気に包まれていた。
「成田さん。どうしたんですか?完全に酔ってますね。あー。今日は色々ありましたし、疲れてるんですね。僕の胸いくらでも貸しますから、ゆっくりとしてください。おっさん臭い匂いがするかとは思いますが、そこは勘弁してくださいね。なんせおじさんなんで…。でも。そろそろ帰りますか?家に帰ってゆっくりしましょうね。」

「すみません。板長呼んでくれませんか?」
そう、アルバイトのスタッフに声をかけて、板長を待っている間に、成田淳子を起こして、帰る用意を促したが、頷きながらも、帰る用意をすることもなく、胸にすっぽりと収まった状態から動こうとはしなかった。
「成田さん。会計済ませますから帰りましょ。ほら。成田さん。立てますか?」
「成田くん。淳子ちゃん大丈夫かい?うちはもう少し居てもらっても構わないよ。まだ、10時30分過ぎたくらいだしね。淳子ちゃん、かなり酔ってそうだし。淳子ちゃん。温かいお茶用意するよ。おーい。あがり二つ用意して。」
「はい。よろこんでー」
「ホントすんません。ごちそうさまでした。板長。『淳子さん』、すごく美味しくていいお店だってベタ褒めしてましたよ。連れてきてよかったです。急遽仕事終わりに飲みに行こうとなりましてね。どこにしようと話した時に、真っ先に思い浮かんだのがこのお店なんです。『魚陽』さすがですね。魚陽ファンがまた1人増えちゃいました。鯛堪能出来ましたし。」
「そんなに喜んでくれたのかぁ。料理人にとっていちばんの幸せな時だな。そんな風に言ってくれるなんて。またおいでよ。淳子ちゃん連れて。」
「はい。また連れてきますよ。」
なんの迷いもなく、素直に板長から成田淳子とおいでよってのに対して返答してる自分が居て、何気に話していたが、成田淳子を『淳子さん』と言ってしまっている自分が居た。
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