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貴女のいる時間の中で
④
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デスクで、課長と顔を合わすと早々に声をかけてきた。つかつかと詰め寄ってきた課長は、笑顔で僕の肩をポンポンと叩いて握手を求めてきた。
「成田くん。常務からさっき電話があって聞いたよ。なかなかな人財が先週の土曜日面接があったようだね。この後、朝礼が終わったらすぐに常務の部屋まで一緒に行こうか。ほぼ採用らしいじゃないの。ふぅーん。成田くんにもいよいよ部下ができるのかぁ。なるほどなぁ。頑張ってたもんなぁ。周りはちゃんと見てくれてたってことだな。良かったね。」
「課長の、君付けなんて、初めて聞きましたよ。成田主任。気をつけてくださいね。普段なら君付けなんてしないんですから。なんかウラがありますよ。ウラが。」
「でしょ?課長。なんか蒼井常務から言われたんですか?」
「なにも言われてないよ。ただ成田が上司になるのかぁって思うと、オレも色々言ってきた甲斐があったなぁって感慨深いんだよ。」
「そうなんですね。なんかありがとうございました。課長頑張りますよ。課長のご期待に添えるようにしなきゃです。でもまぁまだ決まったわけではないでしょうし、とりあえず蒼井常務の部屋にいきましょうよ。」
課長と話していると、総務の同期で主任をしている、千葉潤三郎が近寄ってきた。
「成田。若葉病院の江田看護部長がベタ褒めしてるらしいね。蒼井常務も成田をかなり推してるらしいし。最近絶好調じゃないか。」
「そんなことないよ。いつもカツカツで必死だからさ。スピードに振り落とされないようにしがみつきながらだよ。それはそうと、千葉、そっちこそ評価いいじゃないか。オレら同期ノリになってる?もしかして」
そんなことをヒソヒソと話をしながら拳を突き合わせていた。
「千葉。今日ランチ行かないか?魚陽行こうよ。」
「おー。いいよ。またあとで。」
僕と、千葉は同じ中途採用の、転職組で同じ日に入職した同志で、いつも、調子に乗ると拳を突き合わせる。ぼくは野球はタイガースが好きなので、ジャイアンツの原監督みたいな、グータッチはしたくないが、これをすると良い方向に進んでいるように感じてから、そのアクションをかましている。年齢もぼくと同じ歳なんで、入職日初日から気が合った。
今から7年前、蒼井常務に相談したところから始まった。それ以前に蒼井常務とは面識があったこともあり、この青月会へ挨拶に来たことから始まる。忘れもしない…。ゴールデンウィークを終えた頃であった。
「成田くん。久しぶりだね。元気にしてたの?少し身体つきおおきくなったのではないかい?」
「またまた、蒼井さん。お冗談を。そんなことないですよ。」
「そうかなぁ。でも、もう10年ぶりかな。お子さんたちはどう?」
「はい。おかげさまで元気に過ごしてます。毎年年賀状を送っている感じです。毎年、年賀状などのご挨拶だけで、申し訳ありませんでした。そんな状態でしたのに、急にご連絡してお時間いただきまして。」
「それはいいんだけどね。ずっと気にかけていてね。ぼくの家内もね、成田くん元気にしてるのかなって。久しぶりに連絡きた時は、家内も、とてもはしゃいでいてね。久しぶりだねって。言ってたよ。」
大学を卒業してから、新卒で入社した会社での部署の部長でいたことで、ぼくの当時の直属の上司になったひとである。
当時のぼくは、何もわからないままでの状態でいたこともあり、名刺の渡し方や、目上の人に話す時、身だしなみなど、色々教えてもらった。社会人としてのイロハを学び、今のぼくがいるのは、蒼井常務から成り立っているといっても過言ではない。
「実は、今の会社を退職することになりまして、その報告がしたかったのと、蒼井さんが元気にされているかどうかもずっと気になってまして。それで久しぶりに連絡してみました。」
「そんなことだろうと思ってね。実は、今日会うまでに色々と動いていたんだけどね。うちに来る気はないか?総務人事の部署で、強化を兼ねて、人を増やすことにしたんだけどね。なかなか良い人財が集まらなくてね。総務と、人事と、キーになる人財が欲しいんだよね。成田くんなら素性も知ってるし、ぼくの教え子だから。常務にもプッシュ出来るんだよね。ぼくはね、ここの森田常務の業務をどんどん吸収したくてここに入職してきたんだよ。ここの法人はやりがいあるよ。一応ね、森田常務には話してあるんだ。一気に最終面接受けてみないかい?」
「いいんですか?本来であればぼくの方からお願いをしないといけないんでしょうけど、そんなありがたい展開になっているんですね。宜しくお願いします。」
勢いよくソファーから立ち上がったことで、机の角で膝を思いっきりぶつけてしまった。
「本当に自分そんなところあるよね。以前もそんなことあったよね。そんなところ、憎めないんだよね。」
痛がっている時に、部屋のドアをノックする音が聞こえてきて入ってきた総務の職員はクスクス笑いながらコーヒーを置いてくれたのを今でも覚えている。
「四位くん。この人ね、成田くんっていうんだけど、ぼくの前職の時の部下だったんだよ。以前からいざというところでこんなふうにしていてね。おっちょこちょいなんだよ。でも憎まなくてね。可愛い教え子なんだよね。」
「そんなぁ。失敗した前のこと、蒼井さん。話さなくてもいいじゃないですかぁ。」
「膝大丈夫ですか?でも、その机の角でぶつける人結構いますよ。成田さんだけではないですから。」
「四位くんは、優しいよねー。あのね。四位くん。成田くん、うちの面接を受けるらしいから、もしかしたら同僚になるかもしれないから宜しく頼むよ」
「成田くん。常務からさっき電話があって聞いたよ。なかなかな人財が先週の土曜日面接があったようだね。この後、朝礼が終わったらすぐに常務の部屋まで一緒に行こうか。ほぼ採用らしいじゃないの。ふぅーん。成田くんにもいよいよ部下ができるのかぁ。なるほどなぁ。頑張ってたもんなぁ。周りはちゃんと見てくれてたってことだな。良かったね。」
「課長の、君付けなんて、初めて聞きましたよ。成田主任。気をつけてくださいね。普段なら君付けなんてしないんですから。なんかウラがありますよ。ウラが。」
「でしょ?課長。なんか蒼井常務から言われたんですか?」
「なにも言われてないよ。ただ成田が上司になるのかぁって思うと、オレも色々言ってきた甲斐があったなぁって感慨深いんだよ。」
「そうなんですね。なんかありがとうございました。課長頑張りますよ。課長のご期待に添えるようにしなきゃです。でもまぁまだ決まったわけではないでしょうし、とりあえず蒼井常務の部屋にいきましょうよ。」
課長と話していると、総務の同期で主任をしている、千葉潤三郎が近寄ってきた。
「成田。若葉病院の江田看護部長がベタ褒めしてるらしいね。蒼井常務も成田をかなり推してるらしいし。最近絶好調じゃないか。」
「そんなことないよ。いつもカツカツで必死だからさ。スピードに振り落とされないようにしがみつきながらだよ。それはそうと、千葉、そっちこそ評価いいじゃないか。オレら同期ノリになってる?もしかして」
そんなことをヒソヒソと話をしながら拳を突き合わせていた。
「千葉。今日ランチ行かないか?魚陽行こうよ。」
「おー。いいよ。またあとで。」
僕と、千葉は同じ中途採用の、転職組で同じ日に入職した同志で、いつも、調子に乗ると拳を突き合わせる。ぼくは野球はタイガースが好きなので、ジャイアンツの原監督みたいな、グータッチはしたくないが、これをすると良い方向に進んでいるように感じてから、そのアクションをかましている。年齢もぼくと同じ歳なんで、入職日初日から気が合った。
今から7年前、蒼井常務に相談したところから始まった。それ以前に蒼井常務とは面識があったこともあり、この青月会へ挨拶に来たことから始まる。忘れもしない…。ゴールデンウィークを終えた頃であった。
「成田くん。久しぶりだね。元気にしてたの?少し身体つきおおきくなったのではないかい?」
「またまた、蒼井さん。お冗談を。そんなことないですよ。」
「そうかなぁ。でも、もう10年ぶりかな。お子さんたちはどう?」
「はい。おかげさまで元気に過ごしてます。毎年年賀状を送っている感じです。毎年、年賀状などのご挨拶だけで、申し訳ありませんでした。そんな状態でしたのに、急にご連絡してお時間いただきまして。」
「それはいいんだけどね。ずっと気にかけていてね。ぼくの家内もね、成田くん元気にしてるのかなって。久しぶりに連絡きた時は、家内も、とてもはしゃいでいてね。久しぶりだねって。言ってたよ。」
大学を卒業してから、新卒で入社した会社での部署の部長でいたことで、ぼくの当時の直属の上司になったひとである。
当時のぼくは、何もわからないままでの状態でいたこともあり、名刺の渡し方や、目上の人に話す時、身だしなみなど、色々教えてもらった。社会人としてのイロハを学び、今のぼくがいるのは、蒼井常務から成り立っているといっても過言ではない。
「実は、今の会社を退職することになりまして、その報告がしたかったのと、蒼井さんが元気にされているかどうかもずっと気になってまして。それで久しぶりに連絡してみました。」
「そんなことだろうと思ってね。実は、今日会うまでに色々と動いていたんだけどね。うちに来る気はないか?総務人事の部署で、強化を兼ねて、人を増やすことにしたんだけどね。なかなか良い人財が集まらなくてね。総務と、人事と、キーになる人財が欲しいんだよね。成田くんなら素性も知ってるし、ぼくの教え子だから。常務にもプッシュ出来るんだよね。ぼくはね、ここの森田常務の業務をどんどん吸収したくてここに入職してきたんだよ。ここの法人はやりがいあるよ。一応ね、森田常務には話してあるんだ。一気に最終面接受けてみないかい?」
「いいんですか?本来であればぼくの方からお願いをしないといけないんでしょうけど、そんなありがたい展開になっているんですね。宜しくお願いします。」
勢いよくソファーから立ち上がったことで、机の角で膝を思いっきりぶつけてしまった。
「本当に自分そんなところあるよね。以前もそんなことあったよね。そんなところ、憎めないんだよね。」
痛がっている時に、部屋のドアをノックする音が聞こえてきて入ってきた総務の職員はクスクス笑いながらコーヒーを置いてくれたのを今でも覚えている。
「四位くん。この人ね、成田くんっていうんだけど、ぼくの前職の時の部下だったんだよ。以前からいざというところでこんなふうにしていてね。おっちょこちょいなんだよ。でも憎まなくてね。可愛い教え子なんだよね。」
「そんなぁ。失敗した前のこと、蒼井さん。話さなくてもいいじゃないですかぁ。」
「膝大丈夫ですか?でも、その机の角でぶつける人結構いますよ。成田さんだけではないですから。」
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