22 / 28
貴女のいる時間の中で
⑤
しおりを挟む
またこの人の下で一緒に仕事ができるかもしれない…。そんなことをこの時は考えていた。
「はい。承知しました。成田さん。その時はどうぞよろしくお願いします。でも、常務の教え子であれば、しっかりされてる方でしょうから、心強いですね。」
「四位くん。そんなにヨイショしなくていいぞ。調子に乗るから。じゃあ成田くん。また連絡するから、履歴書と職務経歴書を書いておいてくれるか?で出来たら先に見せなさい。添削してあげるから。頼んだよ。」
「はい。承知しました。ありがとうございます。」
「まぁまぁ、コーヒー待ってきてくれたから、ゆっくり飲んで行ったらいいじゃないか。四位くん。コーヒーありがとうね。」
「いえいえ。ごゆっくりどうぞ。失礼いたしました。」
そこから、以前の時と同じ蒼井さんが目の前にいたのも鮮明に覚えているが、その時の面接の日に、一緒に廊下で待ったのが千葉だった。初対面の時、少し軽そうでチャラいイメージがあった。会釈して挨拶をぼくの方からしたが、髪も少し茶髪だったこともあり、この人が最終面接まで残ったのだと思っていた。今では考えられないが、おそらく当時は人事の職員が足らなかったのか、当時のルーティンの流れだったのか、その時だけだったのか、わからないが普通一人ずつ面接するときに、時間がブッキングして待合いでら一緒になることはない。ぼくが時間を間違えてしまったのかと思ってしまったくらいであった。
千葉の後に面接であったのか、先に千葉が案内されて、部屋に入っていった。ぼくは、そのあと間も無く四位さんに案内された。
「成田さん。リラックスしてください。いつも通りの成田さんで挑めば大丈夫です。
と、蒼井常務がおっしゃってました。頑張ってください」
その時の、グーのポーズに勇気づけられたっけね。森田常務の面接に挑んだが、終始圧倒されつつも、四位さんのグーのポーズと、蒼井さんの励ましのお声のおかげで乗り切れた。
その後、面接を終えた後に、ビルのエントランスで待ってたのが千葉だった。何気に声をかけてきたのだ。最初のイメージ通り、軽い男なのかと、会釈だけしてその場を去ろうとしたが、出て駅前に、スタバがあったのでそこでラテを奢るから、少し情報交換しませんか?と言われたので動じることにしたのだ。終わったらカフェラテを飲もうと思っていたので…。奢ってくれるって言ってたし。
これが、千葉との最初のファーストコンタクトであった。
あの頃のことをふと思い出すと、あれがなかったらこんなにお互い切磋琢磨して、こんなに信頼し合える関係にはなってなかっただろう。
そこで話したことで、軽いヤツではなく、熱くて周りに気を遣いすぎる良いヤツであったことがわかったのだから…。
「すみません。お呼びだてしてしまって。なんか同じ匂いがしましたので、良かったゆっくりと話でもしたいなぁって思いまして。初対面でびっくりされたですよね?」
「そりゃもちろんそうですよ。全く知らない人ですからね。」
「千葉潤三郎です。改めまして。よろしくお願いします。」
「成田遥人です。千葉さん。年齢は幾つですか?ぼくは43歳ですが…。」
「ホントですか?同じ歳ですね。奇遇です。やっぱり僕の勘は冴えてますね。」
「ホント同じ歳なんですね。僕より若いと思ってました。」
そういいながら、握手して互いに褒めちぎりながら、話を進めていくが、ぼくも、千葉もまた声が大きい方なので、ついつい大きな声で話してしまう癖がある。この時からその兆候がでていた。
「千葉さん。声が大きいですよ。ここはカフェですし。声のトーンを落としましょう」
「成田さん。ぼくね、声が大きいってよく言われるんですよ。申し訳ありません。」
「いえいえ、そんな僕もまた、声が大きいってよく言われて、嫁からももう少し小さい声で話してとよく怒られるんです。」
「ホントですか?そんなところもまたよく似てますね。」
千葉は笑い声もまた大きい。でもそこは、大きい声の持ち主だったら仕方ない事だと思っていたが、これほどまでに大きいとは中々なヤツである。
また、ぼくは人差し指を唇の前で立てた。
「今日の面接どうでしたか?成田さんは。蒼井常務って方が、僕の面接官だったんですけど。ほんわかとして優しそうな上司でした。あんな上司の下で働きたいですね。全信頼を持って、頑張れそうで…。」
そんな風に蒼井さんのことを話してくれてると、なんだか嬉しくなる。知ってるだけに父親のように慕ってる方だけに、自分の父親が褒められているようで、ニヤけてしまう。自分の父親ではないが…
「そうなんですね。ぼくは、森田常務でしたから、圧倒されてしまいました。うまく自分のことを伝えられたかわからないですね。でも、やり切った感じはするので、あとは朗報を待つだけですね。千葉さんはどうだったんですか?面接の出来は?」
千葉は、先に森田常務の面接であったらしい。後に聞いた話では、森田常務の面接で、ほぼほぼ採用したいことが決まっていたらしい。蒼井さんがやっぱりどんな人か見てみたいと志願面接があったそう。だから、ぼくの逆であったみたいである。
何やら。前職でも、別の医療法人の総務課の仕事をしていたみたいで、経験者で即戦力が欲しかったみたいだ。前職で同僚の失敗を被って責任を取り退職したそう。その、同僚というのが今の奥さんということだから、これもまたなかなかできないことを千葉はやっているということだ。まぁ、そういうことは、その時既に付き合っていて、ようは自分の彼女を守ったということになる。
これもまた後で聞いた話ではあるが…。
そんな千葉の武勇伝をきいていると千葉ワールドに引き込まれてしまう。見かけ以上に、ナイスなオトコなんだ。千葉という男は。
「はい。承知しました。成田さん。その時はどうぞよろしくお願いします。でも、常務の教え子であれば、しっかりされてる方でしょうから、心強いですね。」
「四位くん。そんなにヨイショしなくていいぞ。調子に乗るから。じゃあ成田くん。また連絡するから、履歴書と職務経歴書を書いておいてくれるか?で出来たら先に見せなさい。添削してあげるから。頼んだよ。」
「はい。承知しました。ありがとうございます。」
「まぁまぁ、コーヒー待ってきてくれたから、ゆっくり飲んで行ったらいいじゃないか。四位くん。コーヒーありがとうね。」
「いえいえ。ごゆっくりどうぞ。失礼いたしました。」
そこから、以前の時と同じ蒼井さんが目の前にいたのも鮮明に覚えているが、その時の面接の日に、一緒に廊下で待ったのが千葉だった。初対面の時、少し軽そうでチャラいイメージがあった。会釈して挨拶をぼくの方からしたが、髪も少し茶髪だったこともあり、この人が最終面接まで残ったのだと思っていた。今では考えられないが、おそらく当時は人事の職員が足らなかったのか、当時のルーティンの流れだったのか、その時だけだったのか、わからないが普通一人ずつ面接するときに、時間がブッキングして待合いでら一緒になることはない。ぼくが時間を間違えてしまったのかと思ってしまったくらいであった。
千葉の後に面接であったのか、先に千葉が案内されて、部屋に入っていった。ぼくは、そのあと間も無く四位さんに案内された。
「成田さん。リラックスしてください。いつも通りの成田さんで挑めば大丈夫です。
と、蒼井常務がおっしゃってました。頑張ってください」
その時の、グーのポーズに勇気づけられたっけね。森田常務の面接に挑んだが、終始圧倒されつつも、四位さんのグーのポーズと、蒼井さんの励ましのお声のおかげで乗り切れた。
その後、面接を終えた後に、ビルのエントランスで待ってたのが千葉だった。何気に声をかけてきたのだ。最初のイメージ通り、軽い男なのかと、会釈だけしてその場を去ろうとしたが、出て駅前に、スタバがあったのでそこでラテを奢るから、少し情報交換しませんか?と言われたので動じることにしたのだ。終わったらカフェラテを飲もうと思っていたので…。奢ってくれるって言ってたし。
これが、千葉との最初のファーストコンタクトであった。
あの頃のことをふと思い出すと、あれがなかったらこんなにお互い切磋琢磨して、こんなに信頼し合える関係にはなってなかっただろう。
そこで話したことで、軽いヤツではなく、熱くて周りに気を遣いすぎる良いヤツであったことがわかったのだから…。
「すみません。お呼びだてしてしまって。なんか同じ匂いがしましたので、良かったゆっくりと話でもしたいなぁって思いまして。初対面でびっくりされたですよね?」
「そりゃもちろんそうですよ。全く知らない人ですからね。」
「千葉潤三郎です。改めまして。よろしくお願いします。」
「成田遥人です。千葉さん。年齢は幾つですか?ぼくは43歳ですが…。」
「ホントですか?同じ歳ですね。奇遇です。やっぱり僕の勘は冴えてますね。」
「ホント同じ歳なんですね。僕より若いと思ってました。」
そういいながら、握手して互いに褒めちぎりながら、話を進めていくが、ぼくも、千葉もまた声が大きい方なので、ついつい大きな声で話してしまう癖がある。この時からその兆候がでていた。
「千葉さん。声が大きいですよ。ここはカフェですし。声のトーンを落としましょう」
「成田さん。ぼくね、声が大きいってよく言われるんですよ。申し訳ありません。」
「いえいえ、そんな僕もまた、声が大きいってよく言われて、嫁からももう少し小さい声で話してとよく怒られるんです。」
「ホントですか?そんなところもまたよく似てますね。」
千葉は笑い声もまた大きい。でもそこは、大きい声の持ち主だったら仕方ない事だと思っていたが、これほどまでに大きいとは中々なヤツである。
また、ぼくは人差し指を唇の前で立てた。
「今日の面接どうでしたか?成田さんは。蒼井常務って方が、僕の面接官だったんですけど。ほんわかとして優しそうな上司でした。あんな上司の下で働きたいですね。全信頼を持って、頑張れそうで…。」
そんな風に蒼井さんのことを話してくれてると、なんだか嬉しくなる。知ってるだけに父親のように慕ってる方だけに、自分の父親が褒められているようで、ニヤけてしまう。自分の父親ではないが…
「そうなんですね。ぼくは、森田常務でしたから、圧倒されてしまいました。うまく自分のことを伝えられたかわからないですね。でも、やり切った感じはするので、あとは朗報を待つだけですね。千葉さんはどうだったんですか?面接の出来は?」
千葉は、先に森田常務の面接であったらしい。後に聞いた話では、森田常務の面接で、ほぼほぼ採用したいことが決まっていたらしい。蒼井さんがやっぱりどんな人か見てみたいと志願面接があったそう。だから、ぼくの逆であったみたいである。
何やら。前職でも、別の医療法人の総務課の仕事をしていたみたいで、経験者で即戦力が欲しかったみたいだ。前職で同僚の失敗を被って責任を取り退職したそう。その、同僚というのが今の奥さんということだから、これもまたなかなかできないことを千葉はやっているということだ。まぁ、そういうことは、その時既に付き合っていて、ようは自分の彼女を守ったということになる。
これもまた後で聞いた話ではあるが…。
そんな千葉の武勇伝をきいていると千葉ワールドに引き込まれてしまう。見かけ以上に、ナイスなオトコなんだ。千葉という男は。
0
あなたにおすすめの小説
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在
一緒にいるのに 言えない言葉
すれ違い、通り過ぎる二人の想いは
いつか重なるのだろうか…
心に秘めた想いを
いつか伝えてもいいのだろうか…
遠回りする幼馴染二人の恋の行方は?
幼い頃からいつも一緒にいた
幼馴染の朱里と瑛。
瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、
朱里を遠ざけようとする。
そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて…
・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・
栗田 朱里(21歳)… 大学生
桐生 瑛(21歳)… 大学生
桐生ホールディングス 御曹司
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
【完結】結婚式の隣の席
山田森湖
恋愛
親友の結婚式、隣の席に座ったのは——かつて同じ人を想っていた男性だった。
ふとした共感から始まった、ふたりの一夜とその先の関係。
「幸せになってやろう」
過去の想いを超えて、新たな恋に踏み出すラブストーリー。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる