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第53話 使いみちはどこに
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「使いみち・・・使いみち・・・魔導蒸気機関の使いみち・・・」
あたしは腕を組んで、思い切り悩んでいました。
身近な仕事は筋力で解決するのが普通で、機械動力で解決するという習慣がなかったからです。
ただ、同時に土地神様が蒸気の力で人にはできない仕事をあっと言う間に片づけてしまうところも暮らしを通して体感しています。
人の筋力による古い暮らしと、蒸気の力による新しい暮らしの二つの暮らしを知っている彼女に用途開発を任せた聖女様の眼力は、真に慧眼であると言えるかもしれません。
「うーん・・・」
眼前にあるのは四角く小さな箱の魔導蒸気機関だけです。
端っこに水と燃料の投入口があり、動力軸がある、外見はとても単純な形です。
後の技術開発が進んだ時代の人間が見れば、蒸気動力機械よりも電気モーターのようだ、と表現したかもしれません。
「とにかく床に置いておくのは良くないよね」
あたしは土地神様にお願いして、蟲車の台車に小型魔導蒸気機関を載せてもらいました。
これで動力機関を1人の力で持ち運べるようになりました。
「ちょっと重いなあ。たまには砂漠蟲に働いてもらおうっと」
あたしが砂漠蟲が占拠している神殿の部屋に入ると、蟲達はパニックにを起こしました。
二匹の成虫が甲良を丸めて中央の幼虫達を守っています。
「ぷぎゃあぷぎぃいぃ」
「大丈夫大丈夫、今日は卵もとらないし、お肉にしたりもしないから。ちょっと来てね」
怯える砂漠蟲の成虫を一匹だけ引っ張ってきて、台車につなぎます。
「土地神様がお忙しいときに、この機械が代わりになるといいんだけど・・・」
最初に考えたのは、土地神様がしてくれる仕事を肩代わりしてくれないか、ということです。
土地神様はお願いすればどんなことでもしてくれますが、少しだけ申し訳なく思っていたのです。
うんうんうなりながら土地神様にお願いしている仕事を指折り数えます。
「えーと、衣服の洗濯と、絨毯の掃除と、畑の除草と、蒸し料理と・・・」
仕事の殆どが、蒸気を使ったもので動力が必要なものではないことに気がつきます。
「うーん、つまり魔導蒸気機関よりも、蒸気を吹き付ける機関が欲しい、ってことね!」
これも一つの発見ではあります。
「あとは、泥炭池の往復!あれが楽になるといいかなあ」
泥炭池の往復は、未だに聖女様が水を舳先からかけて土地神様が船を縄で岸から引っ張るという原始的な方法に頼っています。
魔導蒸気推進機関を装備できたら、泥炭の輸送は劇的に楽になるかもしれません。
「羊飼いのおじさんも使いたがるかも」
最近の羊飼いのおじさんは、これまでの倍の羊を連れてくるようになったので川下と神殿の放牧地を何往復もしています。
もしも魔導蒸気推進機関が舟につけられたら、劇的に楽になるでしょう。
たまたま放牧に来ていた羊飼いのおじさんにも聞いてみることにしました。
「おじさん、羊飼いの仕事で一番大変な事ってなあに?」
「うーん、羊を肥らせることかなあ。あとは毛刈りだな。一家総出でやるんだ。ぞりぞりっとな。そりゃあもう大変でな」
「へー。ちょっと面白そう」
「まあ、こいつらもメーメー騒いで大変さ。あとは、刈った毛を洗うのがまた力仕事でな」
「そうなの?」
「こう、でかいタライに暑いお湯を沸かしてな、一晩立つと真っ黒になってるのさ!それを捨てて、また沸かして一晩置く。すると、またまた真っ黒になる!それを何回も繰り返すのさ」
「ほうほう。かき混ぜたりはしないの?」
「いやいや!そんなことをしたら、最高級の毛が傷んじまうよ!じっと置いておくのが肝心なんだ」
「へー」
羊飼いのおじさんは、自分の仕事に若い娘さんが関心を示してくれるのが嬉しくて、いつになく饒舌になっています。
「洗濯、大変だものねー」
城で下働きをしていたので、大量の衣類を洗濯する大変さはわかります。
ちびた石鹸で冬に踏み洗いをさせられるのは、とてもキツい仕事の一つでした。
「土地神様みたいに、しゅーっとしながら洗えないかな?」
どうやってるかわかりませんが、土地神様に洗濯をお願いすると、生地が傷まない熱さの蒸気をしゅーっと吹き付けて、衣服でも絨毯でもあっという間に綺麗にしてくれます。
あたしは、刈った大量の羊毛も同じ方法で洗えるのではないか、と考えたのです。
◇ ◇ ◇ ◇
「・・・というのが、あたしが考えた使いみちです、御柱様」
「すごいですね、リリア」
「素晴ラシイ」
「理解シタ」
数日間うなった結果を報告すると、御柱様と聖女様、それとなぜか土地神様も喜んでくれました。
「つまり、魔導蒸気機関の家庭や個人利用は、動力代替よりも熱機関の効率化と蒸気制御の方が必要性が高い、ということですね」
「ええと・・・はい、そんな感じです。普段の仕事を楽にしてくれるなら蒸気で十分なんです」
「新シイ視点デアル」
「羊毛の洗濯は良い視点ですね。これはこの土地の大きなニーズですね」
「・・・そうなんですか?」
「そうですとも。パンを食べない人がいないように、衣服を着ない人もいません。もしも羊毛を大量に洗濯できるようになれば、このあたりは劇的に豊かになりますよ。だって、こんなに羊を飼う土地は広いんですから」
「たしかに!土地は広いんですよね」
羊飼いのおじさんに貸している放牧地は、神殿が管理している土地のせいぜい1000分の1かそこらでしょう。そもそも元は砂漠であったために所有者のいない土地が広すぎて、どこからどこまでが神殿の土地なのかわからないぐらいなのです。
「多くの羊を飼い、羊毛を刈って綺麗に洗って売る。これは競争力のある産業になります」
「・・・ひょっとしてすごくお金になったりします?」
「なるでしょうね。洗浄済みの羊毛と洗浄前の羊毛の価格差が、そのまま利益になります。普通の薪を燃やして湯を沸かすのと、御柱様の造られた魔導蒸気機関では熱効率が勝負になりませんから」
「やりましょう!」
俄然、やる気が出てきました!
「あらあら。リリアも、立派な資本家ですね」
聖女様は苦笑されていますが、あたしは頑張ります。
今度こそポケットを金貨と銀貨でいっぱいにするのですから!
あたしは腕を組んで、思い切り悩んでいました。
身近な仕事は筋力で解決するのが普通で、機械動力で解決するという習慣がなかったからです。
ただ、同時に土地神様が蒸気の力で人にはできない仕事をあっと言う間に片づけてしまうところも暮らしを通して体感しています。
人の筋力による古い暮らしと、蒸気の力による新しい暮らしの二つの暮らしを知っている彼女に用途開発を任せた聖女様の眼力は、真に慧眼であると言えるかもしれません。
「うーん・・・」
眼前にあるのは四角く小さな箱の魔導蒸気機関だけです。
端っこに水と燃料の投入口があり、動力軸がある、外見はとても単純な形です。
後の技術開発が進んだ時代の人間が見れば、蒸気動力機械よりも電気モーターのようだ、と表現したかもしれません。
「とにかく床に置いておくのは良くないよね」
あたしは土地神様にお願いして、蟲車の台車に小型魔導蒸気機関を載せてもらいました。
これで動力機関を1人の力で持ち運べるようになりました。
「ちょっと重いなあ。たまには砂漠蟲に働いてもらおうっと」
あたしが砂漠蟲が占拠している神殿の部屋に入ると、蟲達はパニックにを起こしました。
二匹の成虫が甲良を丸めて中央の幼虫達を守っています。
「ぷぎゃあぷぎぃいぃ」
「大丈夫大丈夫、今日は卵もとらないし、お肉にしたりもしないから。ちょっと来てね」
怯える砂漠蟲の成虫を一匹だけ引っ張ってきて、台車につなぎます。
「土地神様がお忙しいときに、この機械が代わりになるといいんだけど・・・」
最初に考えたのは、土地神様がしてくれる仕事を肩代わりしてくれないか、ということです。
土地神様はお願いすればどんなことでもしてくれますが、少しだけ申し訳なく思っていたのです。
うんうんうなりながら土地神様にお願いしている仕事を指折り数えます。
「えーと、衣服の洗濯と、絨毯の掃除と、畑の除草と、蒸し料理と・・・」
仕事の殆どが、蒸気を使ったもので動力が必要なものではないことに気がつきます。
「うーん、つまり魔導蒸気機関よりも、蒸気を吹き付ける機関が欲しい、ってことね!」
これも一つの発見ではあります。
「あとは、泥炭池の往復!あれが楽になるといいかなあ」
泥炭池の往復は、未だに聖女様が水を舳先からかけて土地神様が船を縄で岸から引っ張るという原始的な方法に頼っています。
魔導蒸気推進機関を装備できたら、泥炭の輸送は劇的に楽になるかもしれません。
「羊飼いのおじさんも使いたがるかも」
最近の羊飼いのおじさんは、これまでの倍の羊を連れてくるようになったので川下と神殿の放牧地を何往復もしています。
もしも魔導蒸気推進機関が舟につけられたら、劇的に楽になるでしょう。
たまたま放牧に来ていた羊飼いのおじさんにも聞いてみることにしました。
「おじさん、羊飼いの仕事で一番大変な事ってなあに?」
「うーん、羊を肥らせることかなあ。あとは毛刈りだな。一家総出でやるんだ。ぞりぞりっとな。そりゃあもう大変でな」
「へー。ちょっと面白そう」
「まあ、こいつらもメーメー騒いで大変さ。あとは、刈った毛を洗うのがまた力仕事でな」
「そうなの?」
「こう、でかいタライに暑いお湯を沸かしてな、一晩立つと真っ黒になってるのさ!それを捨てて、また沸かして一晩置く。すると、またまた真っ黒になる!それを何回も繰り返すのさ」
「ほうほう。かき混ぜたりはしないの?」
「いやいや!そんなことをしたら、最高級の毛が傷んじまうよ!じっと置いておくのが肝心なんだ」
「へー」
羊飼いのおじさんは、自分の仕事に若い娘さんが関心を示してくれるのが嬉しくて、いつになく饒舌になっています。
「洗濯、大変だものねー」
城で下働きをしていたので、大量の衣類を洗濯する大変さはわかります。
ちびた石鹸で冬に踏み洗いをさせられるのは、とてもキツい仕事の一つでした。
「土地神様みたいに、しゅーっとしながら洗えないかな?」
どうやってるかわかりませんが、土地神様に洗濯をお願いすると、生地が傷まない熱さの蒸気をしゅーっと吹き付けて、衣服でも絨毯でもあっという間に綺麗にしてくれます。
あたしは、刈った大量の羊毛も同じ方法で洗えるのではないか、と考えたのです。
◇ ◇ ◇ ◇
「・・・というのが、あたしが考えた使いみちです、御柱様」
「すごいですね、リリア」
「素晴ラシイ」
「理解シタ」
数日間うなった結果を報告すると、御柱様と聖女様、それとなぜか土地神様も喜んでくれました。
「つまり、魔導蒸気機関の家庭や個人利用は、動力代替よりも熱機関の効率化と蒸気制御の方が必要性が高い、ということですね」
「ええと・・・はい、そんな感じです。普段の仕事を楽にしてくれるなら蒸気で十分なんです」
「新シイ視点デアル」
「羊毛の洗濯は良い視点ですね。これはこの土地の大きなニーズですね」
「・・・そうなんですか?」
「そうですとも。パンを食べない人がいないように、衣服を着ない人もいません。もしも羊毛を大量に洗濯できるようになれば、このあたりは劇的に豊かになりますよ。だって、こんなに羊を飼う土地は広いんですから」
「たしかに!土地は広いんですよね」
羊飼いのおじさんに貸している放牧地は、神殿が管理している土地のせいぜい1000分の1かそこらでしょう。そもそも元は砂漠であったために所有者のいない土地が広すぎて、どこからどこまでが神殿の土地なのかわからないぐらいなのです。
「多くの羊を飼い、羊毛を刈って綺麗に洗って売る。これは競争力のある産業になります」
「・・・ひょっとしてすごくお金になったりします?」
「なるでしょうね。洗浄済みの羊毛と洗浄前の羊毛の価格差が、そのまま利益になります。普通の薪を燃やして湯を沸かすのと、御柱様の造られた魔導蒸気機関では熱効率が勝負になりませんから」
「やりましょう!」
俄然、やる気が出てきました!
「あらあら。リリアも、立派な資本家ですね」
聖女様は苦笑されていますが、あたしは頑張ります。
今度こそポケットを金貨と銀貨でいっぱいにするのですから!
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