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三章 龍の花嫁
83 龍の花嫁 sideアナスタシア
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「いーやーなのじゃ! なんで妾が『龍の花嫁』にならなきゃならんのじゃ!」
妾の名前はアナスタシアじゃ。まぁ、家名は長いから省略してるがの。
最近、なにやら兄上や父上が忙しそうにしておる。姉上たちも仕事に忙しいみたいなのじゃ。
妾? 妾は仕事をしなくていいのじゃ。だって、小さい頃から兄上や父上に仕事をしなくていいと言われて育ってきたからの、やらなくていいのじゃ。
「各国の会議の結果と、龍の里の意思で決まったことです。拒否するのは不可能ですよ!」
ぐぬぬ、妾の唯一のお付のものであるバニラが頑なに否定してくるのじゃ。幼馴染だというのだから、妾を助けて欲しいものじゃ。
龍の花嫁なんて嫌じゃ! 妾は一生、城でダラダラして暮らしたいのじゃ。ここにいれば食べ物や飲み物は美味しいし、気を使わなきゃ行けない場面も少ない。
最高じゃ。妾はどこへも行かんぞ!
「わがまま言わないでくださいアナスタシア様。もう成人なさったでしょう? 婚約は王族の務めでもあるのです。ご理解してますよね?」
理解してはいるのじゃ。ただ、そういうのは姉上達の役目だと思う今日この頃。
それに、龍の花嫁と言えば聞こえはいいものの、実際は龍の里から一生出られないとされているし、ここら一体の力の源である龍神を鎮めるための半ば生贄のようなものなのじゃ。
何年かに一度、各国の高貴な生まれの女性が花嫁に選ばれて、龍の里へと行く。それが龍の花嫁という文化じゃ。
「他の娘でいいじゃろ! なんで妾なんじゃ! この国にはたくさんの女子がいるじゃろ!」
「各国の会議で決まったことですから……、断れば王国は非難され、貿易や外交にも大きな影響が出ます。陛下も心苦しい決断でしたが、国のために決定なされたのです」
貿易や外交はよくわからんのじゃ。そういうの、妾の仕事じゃないし。そもそも、妾は仕事なんかしなくていいし! だって、王族じゃからな!
それに、国のためといっても、どうせ国民共は大して龍の花嫁のことを知らんじゃろ。
そうじゃ! 最近話題の……たしか御伽の国? とやらに助けを求めてみようなのじゃ。
帝国や神聖国は助けてくれなさそうじゃが、あの国ならきっと助けてくれるはず! ただ……父上や兄上には内緒じゃ。
「よし、手紙を書くのじゃ……まずは、妾はアナスタシア。お前たちの国に妾を助ける栄誉を授けてや
ろう。これでどうじゃ! 完璧な導入じゃろ!」
「私がその手紙を受け取ったら多分そのまま破り捨てて暖炉で燃やします」
「なんてことを言うんじゃ……この手紙はそんなにだめか?」
高圧的すぎると言われてしまった。別にいいじゃろ……最近できた国なんて戦争も出来なければ経済的にも弱いんじゃろ?
大丈夫じゃ。いざとなれば妾に与えられてる父様私設の騎士団がいるのじゃ。それに、王族には軍の指揮権もある。
武力で脅せば……ぐふふ。
「勇者と軍がそろいもそろってボコボコにされた話を忘れるとは。お嬢様の頭は空っぽですか?」
「わ、忘れてなんてないのじゃ。それに言い過ぎじゃろバニラ!」
「お嬢様のためです。話を戻しますが、やはり手紙がいいかと。いいですか書き出しはもっと腰を低く、あぁ、家名なんて書かなくていいですよ。あんなものただの見栄でしょう」
「……バニラお前、いつか不敬罪で処刑されるじゃろ?」
「その時は助けてくださいね、幼馴染の王女様」
ぐぬぬ、その時はもちろん助けてやるのじゃ。だからといって最近妾に厳しすぎる気がするのじゃが……。
まぁ今は龍の花嫁を回避しなければならないのじゃ!
さぁ、手紙を書くのじゃ!
妾の名前はアナスタシアじゃ。まぁ、家名は長いから省略してるがの。
最近、なにやら兄上や父上が忙しそうにしておる。姉上たちも仕事に忙しいみたいなのじゃ。
妾? 妾は仕事をしなくていいのじゃ。だって、小さい頃から兄上や父上に仕事をしなくていいと言われて育ってきたからの、やらなくていいのじゃ。
「各国の会議の結果と、龍の里の意思で決まったことです。拒否するのは不可能ですよ!」
ぐぬぬ、妾の唯一のお付のものであるバニラが頑なに否定してくるのじゃ。幼馴染だというのだから、妾を助けて欲しいものじゃ。
龍の花嫁なんて嫌じゃ! 妾は一生、城でダラダラして暮らしたいのじゃ。ここにいれば食べ物や飲み物は美味しいし、気を使わなきゃ行けない場面も少ない。
最高じゃ。妾はどこへも行かんぞ!
「わがまま言わないでくださいアナスタシア様。もう成人なさったでしょう? 婚約は王族の務めでもあるのです。ご理解してますよね?」
理解してはいるのじゃ。ただ、そういうのは姉上達の役目だと思う今日この頃。
それに、龍の花嫁と言えば聞こえはいいものの、実際は龍の里から一生出られないとされているし、ここら一体の力の源である龍神を鎮めるための半ば生贄のようなものなのじゃ。
何年かに一度、各国の高貴な生まれの女性が花嫁に選ばれて、龍の里へと行く。それが龍の花嫁という文化じゃ。
「他の娘でいいじゃろ! なんで妾なんじゃ! この国にはたくさんの女子がいるじゃろ!」
「各国の会議で決まったことですから……、断れば王国は非難され、貿易や外交にも大きな影響が出ます。陛下も心苦しい決断でしたが、国のために決定なされたのです」
貿易や外交はよくわからんのじゃ。そういうの、妾の仕事じゃないし。そもそも、妾は仕事なんかしなくていいし! だって、王族じゃからな!
それに、国のためといっても、どうせ国民共は大して龍の花嫁のことを知らんじゃろ。
そうじゃ! 最近話題の……たしか御伽の国? とやらに助けを求めてみようなのじゃ。
帝国や神聖国は助けてくれなさそうじゃが、あの国ならきっと助けてくれるはず! ただ……父上や兄上には内緒じゃ。
「よし、手紙を書くのじゃ……まずは、妾はアナスタシア。お前たちの国に妾を助ける栄誉を授けてや
ろう。これでどうじゃ! 完璧な導入じゃろ!」
「私がその手紙を受け取ったら多分そのまま破り捨てて暖炉で燃やします」
「なんてことを言うんじゃ……この手紙はそんなにだめか?」
高圧的すぎると言われてしまった。別にいいじゃろ……最近できた国なんて戦争も出来なければ経済的にも弱いんじゃろ?
大丈夫じゃ。いざとなれば妾に与えられてる父様私設の騎士団がいるのじゃ。それに、王族には軍の指揮権もある。
武力で脅せば……ぐふふ。
「勇者と軍がそろいもそろってボコボコにされた話を忘れるとは。お嬢様の頭は空っぽですか?」
「わ、忘れてなんてないのじゃ。それに言い過ぎじゃろバニラ!」
「お嬢様のためです。話を戻しますが、やはり手紙がいいかと。いいですか書き出しはもっと腰を低く、あぁ、家名なんて書かなくていいですよ。あんなものただの見栄でしょう」
「……バニラお前、いつか不敬罪で処刑されるじゃろ?」
「その時は助けてくださいね、幼馴染の王女様」
ぐぬぬ、その時はもちろん助けてやるのじゃ。だからといって最近妾に厳しすぎる気がするのじゃが……。
まぁ今は龍の花嫁を回避しなければならないのじゃ!
さぁ、手紙を書くのじゃ!
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