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三章 龍の花嫁
93 龍の里
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しばらくの間息を潜めていると、勇者たちと思われる気配が近づいてきました。
「……マーガレットよ。龍の里に入る前に取り押さえてしまえばいいのではないか?」
「それも考えましたが、勇者がアナスタシアさんを使って龍の里で何をしようと狙っているのか気になります」
ただ単に、アナスタシアさんを龍の花嫁として龍の里に引き渡すだけではないでしょう。
それだけの理由なら、わざわざ勇者という犯罪者に誘拐をさせるよりも前に、王国や、龍の花嫁という仕組みを支援してる国からアナスタシアさんを説得する使者かなんかを送ってくるはずです。
「……勇者の裏にいるものが気になるのか」
「そうですね。ただ単にアナスタシアさんを取り返し、魔道具を破壊して魔力を取り戻したとしても、狙いや正体がわからないと脅威はなくなりません」
「今後のことも考えて、ということか。……意外と考えてるんだな、マーガレット」
私はいつもちゃんと国のことを考えてますよ、アーさん。
「勇者が来ます。みんな、気配を消してください」
そこそこの距離はありますが、魔力の気配を隠しておかないとバレてしまいます。
みんなで気配を消していると、勇者一行がやってきます。
「ここが龍の里だな。よし、突入するぞ」
「あら、潜入するんじゃないの?」
「あの野郎が言ってただろ。気づかれるようにしろって」
「んー!」
「うるせぇぞ。黙ってろガキ」
相変わらず嫌な勇者ですね。ただ、アナスタシアさんの無事は確認できました。
勇者が龍の里の中へと入っていきます。
「よし、みんな、追いかけますよ。勇者が入った後を追いかけます」
狙いはアナスタシアさんを解放したその瞬間です。
勇者が龍の里へと入ったことを確認して、みんなで動き始めます。
龍の里は、勇者が入ってきた瞬間、ピリピリとした空気が流れ始めました。そして勇者を取り囲むようにして何人もの人と龍が合わさったような外見の人たちが現れます。
龍人という種族ですかね。
「……今代の花嫁を離してもらおうか」
「ほらよ」
そういって勇者は縛ったアナスタシアさんを無造作に投げ捨てます。
「貴様……」
「おっと。俺たちの用は済んだからな。さっさといなくなるぜ」
勇者はそのまま後ろを振り返って龍の里の出口へと歩き始めます。すぐ後ろの茂みに私たちは隠れているのでばれるんじゃないかとひやひやします。
立ち去ろうとする勇者の肩を、龍人がつかみます。
「待て」
「……なんだよ」
「そこに隠れているのは貴様の手のものだろう?」
まずいです。龍人にはばれていたみたいです。みんなに作戦開始の合図を出します。狙いはアナスタシアさんの奪還です。
「はぁ? 何言ってんだおまーー」
「今です!」
「な?!」
みんなで一斉に茂みから飛び出します。勇者とその仲間は驚いているので反応できませんね。龍人たちは元から私たちに気付いていたので、しっかりと武器を構えてアナスタシアさんを守るようにして対応してきます。
その龍人たちはフェンとアーさんが対応してくれます。その間に素早くシラユキがアナスタシアさんを回収して戻ってきます。
いそいで拘束を外して、しゃべれなくするために嵌められた猿轡を外してあげます。
「大丈夫ですか、アナスタシアさん」
「こ、怖かったのじゃぁぁぁぁ!」
「よしよし、怖かったですね。もう大丈夫ですよ」
震えるアナスタシアさんを抱きしめます。よし、これで目標であったアナスタシアさんは奪還できました。私の魔力に関してもどうにかしたいところですが、勇者が魔道具を持ってきている可能性は低そうです。
「ナオキ、転移を!」
「わかってる!」
みんなでナオキの周りに固まります。このまま転移で逃げましょう。
……あれ?
「ナオキ?」
「転移が使えない……!」
まずいです。それはかなりまずいですよ。
「里の中では転移魔法は使えない。おとなしく花嫁を返してもらおう」
「そうだぜ、俺たちとしてもこのまま逃げられるわけにはいかないんでな」
前方には龍人たちが、里の出口の方向には勇者たちがいます。
「どうする? マーガレット」
どうしましょうか。このままだとつかまって終わりです。龍人たちからすれば私たちはただの襲撃者ですし、そのまま殺されるなんてことも考えられます。やるべきことは一つ。逃げることです。
「勇者は僕が」
「じゃあ、女どもは私だな」
ナオキとアラエルが勇者の方へと向かっていきます。
「では、我々は奴らを相手しようか」
フェンとアーさんは龍人たちの相手をしてくれるようです。ルールーとシルフィは戦えない私とアナスタシアさんを守ってくれています。
本当なら、私がみんなの前に立って戦いたいところですが……みんな、頼みます!
「……マーガレットよ。龍の里に入る前に取り押さえてしまえばいいのではないか?」
「それも考えましたが、勇者がアナスタシアさんを使って龍の里で何をしようと狙っているのか気になります」
ただ単に、アナスタシアさんを龍の花嫁として龍の里に引き渡すだけではないでしょう。
それだけの理由なら、わざわざ勇者という犯罪者に誘拐をさせるよりも前に、王国や、龍の花嫁という仕組みを支援してる国からアナスタシアさんを説得する使者かなんかを送ってくるはずです。
「……勇者の裏にいるものが気になるのか」
「そうですね。ただ単にアナスタシアさんを取り返し、魔道具を破壊して魔力を取り戻したとしても、狙いや正体がわからないと脅威はなくなりません」
「今後のことも考えて、ということか。……意外と考えてるんだな、マーガレット」
私はいつもちゃんと国のことを考えてますよ、アーさん。
「勇者が来ます。みんな、気配を消してください」
そこそこの距離はありますが、魔力の気配を隠しておかないとバレてしまいます。
みんなで気配を消していると、勇者一行がやってきます。
「ここが龍の里だな。よし、突入するぞ」
「あら、潜入するんじゃないの?」
「あの野郎が言ってただろ。気づかれるようにしろって」
「んー!」
「うるせぇぞ。黙ってろガキ」
相変わらず嫌な勇者ですね。ただ、アナスタシアさんの無事は確認できました。
勇者が龍の里の中へと入っていきます。
「よし、みんな、追いかけますよ。勇者が入った後を追いかけます」
狙いはアナスタシアさんを解放したその瞬間です。
勇者が龍の里へと入ったことを確認して、みんなで動き始めます。
龍の里は、勇者が入ってきた瞬間、ピリピリとした空気が流れ始めました。そして勇者を取り囲むようにして何人もの人と龍が合わさったような外見の人たちが現れます。
龍人という種族ですかね。
「……今代の花嫁を離してもらおうか」
「ほらよ」
そういって勇者は縛ったアナスタシアさんを無造作に投げ捨てます。
「貴様……」
「おっと。俺たちの用は済んだからな。さっさといなくなるぜ」
勇者はそのまま後ろを振り返って龍の里の出口へと歩き始めます。すぐ後ろの茂みに私たちは隠れているのでばれるんじゃないかとひやひやします。
立ち去ろうとする勇者の肩を、龍人がつかみます。
「待て」
「……なんだよ」
「そこに隠れているのは貴様の手のものだろう?」
まずいです。龍人にはばれていたみたいです。みんなに作戦開始の合図を出します。狙いはアナスタシアさんの奪還です。
「はぁ? 何言ってんだおまーー」
「今です!」
「な?!」
みんなで一斉に茂みから飛び出します。勇者とその仲間は驚いているので反応できませんね。龍人たちは元から私たちに気付いていたので、しっかりと武器を構えてアナスタシアさんを守るようにして対応してきます。
その龍人たちはフェンとアーさんが対応してくれます。その間に素早くシラユキがアナスタシアさんを回収して戻ってきます。
いそいで拘束を外して、しゃべれなくするために嵌められた猿轡を外してあげます。
「大丈夫ですか、アナスタシアさん」
「こ、怖かったのじゃぁぁぁぁ!」
「よしよし、怖かったですね。もう大丈夫ですよ」
震えるアナスタシアさんを抱きしめます。よし、これで目標であったアナスタシアさんは奪還できました。私の魔力に関してもどうにかしたいところですが、勇者が魔道具を持ってきている可能性は低そうです。
「ナオキ、転移を!」
「わかってる!」
みんなでナオキの周りに固まります。このまま転移で逃げましょう。
……あれ?
「ナオキ?」
「転移が使えない……!」
まずいです。それはかなりまずいですよ。
「里の中では転移魔法は使えない。おとなしく花嫁を返してもらおう」
「そうだぜ、俺たちとしてもこのまま逃げられるわけにはいかないんでな」
前方には龍人たちが、里の出口の方向には勇者たちがいます。
「どうする? マーガレット」
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「勇者は僕が」
「じゃあ、女どもは私だな」
ナオキとアラエルが勇者の方へと向かっていきます。
「では、我々は奴らを相手しようか」
フェンとアーさんは龍人たちの相手をしてくれるようです。ルールーとシルフィは戦えない私とアナスタシアさんを守ってくれています。
本当なら、私がみんなの前に立って戦いたいところですが……みんな、頼みます!
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