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「お、お姉様?! どうしてここに!」
「どうしてここに? じゃないわよ。そんなことはどうだっていいの。あなた、何してるのわかってる?」
「お、おいアリシア」 
「あなたは黙ってて!」

 今まで出したことないほど大きな声が出る。ライアも驚いたのか、口をパクパクさせて動きを止めた。

「あなた……わかってるの? あなたの、いえ、あなた方のせいで何が起こるか理解してるの?」
「何が起こるか? お姉様が捨てられるの! お姉様こそわかってるの? 捨てられた貴族令嬢がどんな運命を辿るのか」
「家で一人寂しく過ごすんでしょう? それよりも、あなた方になんの制裁もないとでも思ってるのね。いいわ、身をもってわからせてあげる。覚悟しなさい」

 泣いて謝るのなら、まだ許したのかもしれない。誰かを好きになったり、愛したりするのは選べるものじゃないという気持ちもわかるから。ただ、その後のことを何も考えずに行動している妹とライアの馬鹿さ加減には呆れてしまう。だから、身をもって分からせてあげよう。

 さっきまでふらついていた身体になぜか、力が漲る。怒りが悲しみを超えてしまったみたいね。

「絶対に、許さないんだから」

 そこからの行動、自分でも早かったと思う。

「お帰りなさいませお嬢様……どうしたのです?」
「ライアとの婚約破棄を申し込みなさい。証拠はこれよ。あと、お父様と話をさせて」
「こ、婚約破棄ですか?!」

 家宰にライアと妹の恋文を渡し、書斎で仕事をしているお父様に話をしに向かう。

「ん、どうしたんだ? アリシア」
「ライアがメリッサと浮気していたわ。証拠もある」
「ライア君が、メリッサと? ふむ……」

 さすがはお父様、とても冷静ね。お父様は何かと感情を表に出さなくて小さい頃は怖かったけど、とても頭がよくて理性的なだけ。家族のことはとてもよく考えてくれてる。ただ、冷静で理性的だからこそ、敵対した相手には容赦なくて貴族には恐れられてるみたいだけど。

「その話が本当だとして、婚約破棄は間違いないね。それと、報復を行うにしても相手がこの家のものとなれば難しいかもしれない」
「……確かに。私としてはメリッサとはもう家族の縁を切ってもいいと思っているのですけど」

 家族の縁を切る、柔らかく言ってはいるけど、要するに追放するということだ。

「それは少し急ぎすぎだね。アリシアの気持ちはわかる、ただ僕はアリシア、メリッサ両方の父親だからね。そう簡単に話は進められない」
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