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第十四話
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「よし、今日の授業は属性の変換についてだ」
「はーい!」
今日は自室でお父さんの魔術の授業だ。
教科書とノート、インクとペンを揃えて準備はバッチリだ。
「まずは復習からだ。魔術の四つの基本属性は何だ?」
「はい、先生!」
僕はハキハキと手を挙げる。
授業中だけはお父さんのことは先生と呼んでいるのだ。執事のツォカティスから算術などを習う時にも先生と呼ぶようにしている。
学校に入った時のための練習らしい。
「火、水、風、土の四つです!」
「よくできたな、じゃあ特殊属性二つは?」
「光と闇です!」
元気たっぷりの僕の答えにお父さんはうんうんと満足げに頷く。
「普通の人は四つの基本属性のうち一つしか持っていない。ごく稀に二つの属性を持っている人がいて、そういう人は二重属性と呼ばれる。三重属性の人はさらに珍しく、百年に一度の逸材とされている」
こくこくと頷きながらノートにメモを取る。
「四重属性の人は歴史上一人しか確認されたことはない。ちなみにその一人とはエルフの賢者、エルネスト様だ」
突如として出てきたエルネストの言葉にチクリと胸が痛む。
僕の表情が曇ったのを察知したのか、お父さんはしまったという顔をした。
「えー……その多重属性持ちの人よりもさらに珍しいのが特殊属性持ちの人だ。光と闇属性持ちの人はとても珍しくて、研究もあまり進んでいない」
お父さんが携帯用の黒板に図を書いていく。
火、水、風、土の方は二つずつ丸で囲んだり三つずつ丸で囲まれたりしているが、光と闇の方は独立している。
「分かっているのは、特殊属性と基本属性はどうやら併存しないということだ。例えば光と水とか、闇と火の二重属性持ちの人は存在しない」
特殊属性と基本属性は混ざらないらしい。
ということは四重属性であるエルネストの持っている属性は必然的に火水風土の四つだということになる。
「光と闇の二重属性は?」
「そんな人がいたら、四重属性よりもさらに珍しいだろうね。残念ながら今のところ確認されたことはない」
お父さんは光と闇を表す単語を丸で囲んでから上からバツを描いた。
「でもルインの質問は鋭いね。理論上は不可能ではないはずだと言われているよ。ただ、光属性も闇属性も希少過ぎるからさらにその二つを合わせた二重属性なんて、猿が適当にタイプライターを叩いて意味のある文章を作り出す確率よりもさらに低いと言われているんだ」
タイプライターとはつい最近開発された機械で、楽に文章を書くためのものらしい。
ピアノのようにたくさんの鍵盤が付いていて、その鍵盤を叩けばセットした紙に文字が打ち込まれるのだ。
新しい物好きのお父さんが嬉々として買ってきて、さっそく使用している。
執事のツォカティスはその様子を見て「ルイン様はあのような奇妙な機械をお使いにならないように、字が下手になりますよ」と顔を顰めていた。
とにかく、光と闇属性の両方を持っている人は存在しないということらしい。
「ちょっと話が脱線しちゃったね。話を属性の変換に戻そう」
そうだ、今日は属性の変換に関する授業だった。
気を取り直して姿勢を正す。ここからが本題だ。
「はーい!」
今日は自室でお父さんの魔術の授業だ。
教科書とノート、インクとペンを揃えて準備はバッチリだ。
「まずは復習からだ。魔術の四つの基本属性は何だ?」
「はい、先生!」
僕はハキハキと手を挙げる。
授業中だけはお父さんのことは先生と呼んでいるのだ。執事のツォカティスから算術などを習う時にも先生と呼ぶようにしている。
学校に入った時のための練習らしい。
「火、水、風、土の四つです!」
「よくできたな、じゃあ特殊属性二つは?」
「光と闇です!」
元気たっぷりの僕の答えにお父さんはうんうんと満足げに頷く。
「普通の人は四つの基本属性のうち一つしか持っていない。ごく稀に二つの属性を持っている人がいて、そういう人は二重属性と呼ばれる。三重属性の人はさらに珍しく、百年に一度の逸材とされている」
こくこくと頷きながらノートにメモを取る。
「四重属性の人は歴史上一人しか確認されたことはない。ちなみにその一人とはエルフの賢者、エルネスト様だ」
突如として出てきたエルネストの言葉にチクリと胸が痛む。
僕の表情が曇ったのを察知したのか、お父さんはしまったという顔をした。
「えー……その多重属性持ちの人よりもさらに珍しいのが特殊属性持ちの人だ。光と闇属性持ちの人はとても珍しくて、研究もあまり進んでいない」
お父さんが携帯用の黒板に図を書いていく。
火、水、風、土の方は二つずつ丸で囲んだり三つずつ丸で囲まれたりしているが、光と闇の方は独立している。
「分かっているのは、特殊属性と基本属性はどうやら併存しないということだ。例えば光と水とか、闇と火の二重属性持ちの人は存在しない」
特殊属性と基本属性は混ざらないらしい。
ということは四重属性であるエルネストの持っている属性は必然的に火水風土の四つだということになる。
「光と闇の二重属性は?」
「そんな人がいたら、四重属性よりもさらに珍しいだろうね。残念ながら今のところ確認されたことはない」
お父さんは光と闇を表す単語を丸で囲んでから上からバツを描いた。
「でもルインの質問は鋭いね。理論上は不可能ではないはずだと言われているよ。ただ、光属性も闇属性も希少過ぎるからさらにその二つを合わせた二重属性なんて、猿が適当にタイプライターを叩いて意味のある文章を作り出す確率よりもさらに低いと言われているんだ」
タイプライターとはつい最近開発された機械で、楽に文章を書くためのものらしい。
ピアノのようにたくさんの鍵盤が付いていて、その鍵盤を叩けばセットした紙に文字が打ち込まれるのだ。
新しい物好きのお父さんが嬉々として買ってきて、さっそく使用している。
執事のツォカティスはその様子を見て「ルイン様はあのような奇妙な機械をお使いにならないように、字が下手になりますよ」と顔を顰めていた。
とにかく、光と闇属性の両方を持っている人は存在しないということらしい。
「ちょっと話が脱線しちゃったね。話を属性の変換に戻そう」
そうだ、今日は属性の変換に関する授業だった。
気を取り直して姿勢を正す。ここからが本題だ。
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