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第六十八話
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「すごく疲れましたね……」
「ああ、まったくだな」
帰りの馬車の中でエルネスト先生と僕は共に溜息を吐いた。
後半など彼も僕もほとんど蚊帳の外だったのに、疲労感だけはどっと蓄積された気がする。
彼が送っていくと申し出てくれたので、ありがたく彼の馬車に乗せてもらって帰路についたところであった。
「なんにせよ、すべてが丸く収まったようで良かった」
疲れは見えるが晴れ晴れとした顔で彼は呟いた。
僕は思わずむっとしてしまう。
「まだ『すべて』じゃありませんよ」
「おや、まだ残っていたか? すまない、何だろうか」
「成人祝いの夕食会です、すっかり先延ばしになっちゃってまだやってないじゃないですか!」
僕がほっぺたを膨らませて主張すると、彼は顔を綻ばせる。
「ああ、そのことか。すぐに手配するから近日中に晩餐会をしよう」
彼の言葉に首をふるふると横に振る。
「いいえ、それじゃダメです。積もり積もった利子によって夕食会なんかじゃ我慢できなくなってるんですからね!」
「お祝いをすぐにしなかったら利子がつくとは知らなかったな。じゃあ何をしたい? 何でも叶えよう」
僕の口ぶりに彼はくすりと微笑む。
彼の柔らかな表情に、穏やかで優しい日常の時間が戻ってきたのだと実感する。
「じゃあ、旅行がしたいです!」
この言葉は彼も予想外だったのか、暖かな金色の瞳を丸くさせた。
「旅行? だがそれだと次の冬季休暇までまた先送りになってしまうぞ、いいのか?」
「いいんです、だって僕が成人したから次はただのお出かけじゃなくてちゃんとした『デート』になるんですよね? とびっきりの初デートがしたいです!」
彼は両目を瞬かせると、ふっと笑った。
「そうだな――――"初デート"をしよう。どこに行きたい?」
彼の言葉に、胸が幸福感でぎゅうっと締め付けられるようだった。
思わず笑みが零れる。
「遠い異国の海に行きたいです。最近移動用魔法陣が繋がって旅行に行けるようになった国があるじゃないですか。そこでは季節があべこべなんでしょう?」
季節があべこべ、だから冬に行けばそこは夏真っ盛りのはずなのだ。
真夏の海だ。
「な、何!? だがそこはこの国の言葉は通じないぞ!?」
彼の慌てようを見るに、彼も季節があべこべの国には行ったことがないようだ。彼の初めてを一緒に体験できる、これ以上嬉しいことがあるだろうか。
「向こうの国の言葉は冬休みまでに勉強すればいいんですよ。どっちが上手く喋れるようになるか競争しましょうっ!」
彼は僕の顔を呆気にとられたように見つめる。
最近気づいたことがあるが、僕は結構勉強が好きらしい。
以前趣味がある人が羨ましいと口にしたことがあるが、どうやら僕の趣味は勉強だったようなのだ。
これからは苦しみから逃れるためではなく、楽しむために勉学に勤しみたい。
「……君はずいぶん変わったな」
「え、そうですか?」
彼の言葉にきょとんとする。
「以前は儚い感じでそれはそれで美しかったが、今の君は太陽のように輝く笑顔をしている。とても魅力的だ」
彼の真っ直ぐ過ぎる褒め言葉に勝手に頬が熱くなる。
「照れた表情は特に愛おしいな」
「も、もう! やめてください!」
彼がなおも言い募るので、静止をかける。
情熱的な言葉に、もう大人として扱われているのだなと実感した。
いつか本物の聖女が現れて彼が去っていく、なんて時間制限を心配する必要ももうない。
これからはたっぷりゆっくりと彼と愛を育んでいけるのだ。
ああ、でもどうしよう――――彼の熱い想いを真っ向から受け止めて果たして僕は無事でいられるのだろうか?
「ああ、まったくだな」
帰りの馬車の中でエルネスト先生と僕は共に溜息を吐いた。
後半など彼も僕もほとんど蚊帳の外だったのに、疲労感だけはどっと蓄積された気がする。
彼が送っていくと申し出てくれたので、ありがたく彼の馬車に乗せてもらって帰路についたところであった。
「なんにせよ、すべてが丸く収まったようで良かった」
疲れは見えるが晴れ晴れとした顔で彼は呟いた。
僕は思わずむっとしてしまう。
「まだ『すべて』じゃありませんよ」
「おや、まだ残っていたか? すまない、何だろうか」
「成人祝いの夕食会です、すっかり先延ばしになっちゃってまだやってないじゃないですか!」
僕がほっぺたを膨らませて主張すると、彼は顔を綻ばせる。
「ああ、そのことか。すぐに手配するから近日中に晩餐会をしよう」
彼の言葉に首をふるふると横に振る。
「いいえ、それじゃダメです。積もり積もった利子によって夕食会なんかじゃ我慢できなくなってるんですからね!」
「お祝いをすぐにしなかったら利子がつくとは知らなかったな。じゃあ何をしたい? 何でも叶えよう」
僕の口ぶりに彼はくすりと微笑む。
彼の柔らかな表情に、穏やかで優しい日常の時間が戻ってきたのだと実感する。
「じゃあ、旅行がしたいです!」
この言葉は彼も予想外だったのか、暖かな金色の瞳を丸くさせた。
「旅行? だがそれだと次の冬季休暇までまた先送りになってしまうぞ、いいのか?」
「いいんです、だって僕が成人したから次はただのお出かけじゃなくてちゃんとした『デート』になるんですよね? とびっきりの初デートがしたいです!」
彼は両目を瞬かせると、ふっと笑った。
「そうだな――――"初デート"をしよう。どこに行きたい?」
彼の言葉に、胸が幸福感でぎゅうっと締め付けられるようだった。
思わず笑みが零れる。
「遠い異国の海に行きたいです。最近移動用魔法陣が繋がって旅行に行けるようになった国があるじゃないですか。そこでは季節があべこべなんでしょう?」
季節があべこべ、だから冬に行けばそこは夏真っ盛りのはずなのだ。
真夏の海だ。
「な、何!? だがそこはこの国の言葉は通じないぞ!?」
彼の慌てようを見るに、彼も季節があべこべの国には行ったことがないようだ。彼の初めてを一緒に体験できる、これ以上嬉しいことがあるだろうか。
「向こうの国の言葉は冬休みまでに勉強すればいいんですよ。どっちが上手く喋れるようになるか競争しましょうっ!」
彼は僕の顔を呆気にとられたように見つめる。
最近気づいたことがあるが、僕は結構勉強が好きらしい。
以前趣味がある人が羨ましいと口にしたことがあるが、どうやら僕の趣味は勉強だったようなのだ。
これからは苦しみから逃れるためではなく、楽しむために勉学に勤しみたい。
「……君はずいぶん変わったな」
「え、そうですか?」
彼の言葉にきょとんとする。
「以前は儚い感じでそれはそれで美しかったが、今の君は太陽のように輝く笑顔をしている。とても魅力的だ」
彼の真っ直ぐ過ぎる褒め言葉に勝手に頬が熱くなる。
「照れた表情は特に愛おしいな」
「も、もう! やめてください!」
彼がなおも言い募るので、静止をかける。
情熱的な言葉に、もう大人として扱われているのだなと実感した。
いつか本物の聖女が現れて彼が去っていく、なんて時間制限を心配する必要ももうない。
これからはたっぷりゆっくりと彼と愛を育んでいけるのだ。
ああ、でもどうしよう――――彼の熱い想いを真っ向から受け止めて果たして僕は無事でいられるのだろうか?
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