悪逆第四皇子は僕のお兄ちゃんだぞっ! ~商人になりたいので悪逆皇子の兄と組むことにします~

野良猫のらん

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第二部 セルフィニエ辺境伯領編

第百二話 出発の日 ②

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 乳母のノーラとジルベールと数人のメイドさんたち、そしてもちろんお兄ちゃんが見送りに来てくれた。

「殿下、どうか体調に気を付けて下さいね」

 ノーラが涙ながらに口にする。
 僕が一番命が危うかった時期もお世話してくれたノーラだから、きっと僕のことが心配で堪らないのだろう。
 僕が南部で悪い病にかかりでもしたらこれが今生の別れになるかもしれないとでも思っているのかもしれない。

「カレン」

 お兄ちゃんの声に、彼を見上げる。
 兄はその場に片膝を突いて僕に目線を合わせてくれた。

「大丈夫だ、またすぐに会える。だから少しの間だけ待っててくれないか?」

 お兄ちゃんがこの数ヶ月間忙しく何かをやっていたのは知っている。
 内容は知らないけれど、きっと僕の為にあれこれと回してくれていたのだと思う。
 だから、兄の策が功を奏すことを信じて祈るしかない。

「うん、分かった。僕、待ってるね」

 しっかりとお兄ちゃんの目を見て頷くと、兄は安心したように微笑んだ。

「では、参りましょう」

 白いローブを着た老年の男が僕に話しかける。僕のかかりつけ医のジョンさんだ。
 僕が体調を崩した時の為に南まで付いてきてくれるのだから、もはや専属医師とすら言えるかもしれない。
 この世界の医者である治癒術士は白いローブを羽織ることに決まっている。
 ジョンさんもその決まりに従って白いローブを着ているのだ。

 そういえば専属医師と言えばせっかくシア・ブラックウェルという有能そうな人を見つけたのにお別れすることになっちゃうな。
 南に行くことになったと伝えに一度訪問したら、定期購入しているビタミン剤は辺境伯の城まで送ると言ってくれたからお薬は問題ないけど……。

 色々と残念だ。
 後ろ髪を引かれながらも、僕は馬車に乗り込んだ。

「殿下の体調が急変した時の為に同乗させていただきます。ご了承ください」
「うん……」

 馬車が走り出し、乳母やお兄ちゃんたちの姿が小さくなっていく。
 手を振る彼らの姿が見えなくなるまで、僕はずっと窓から彼らの姿をじっと見つめていた。

 少ししてジョンさんが話しかけてきた。

「ここから辺境伯領まではとてもお時間がかかりますよ殿下。ええと、確か……」
「二頭立て馬車で行くから、大体七日半」

 僕はぽつりと呟いた。
 タソトキで散々行商人プレイをしてきたのだ。
 何処から何処までで大体どれくらい時間がかかるかぐらい暗記している。
 これが普通の旅行ならば、実際にタソトキの世界を馬車で行けることが楽しくて仕方がなかっただろう。でもそんなワクワクとした気分にはなれない。

「おお! その通りです殿下。旅程をしっかりと把握なさっていて流石でございます。もっとも殿下の体調が最優先でございますから、何かございましたらすぐにお申し付けください」

 初めて目の当たりにした魔法を使う人が第一皇子だったせいか魔術師に対して苦手意識があったが、かかりつけ医のジョンさんは親切そうな人だ。
 僕もいい加減機嫌を直さねば……。
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