104 / 171
第二部 セルフィニエ辺境伯領編
第百四話 僕のお祖父ちゃん
しおりを挟む
「失礼します」
そっと入って来たのは茶髪に白髪がちらほらと混ざった五十代後半くらいのおじさんだった。
おじさんは僕がいるのを目にするなり、ぱちぱちと目を瞬かせた。
その瞳がじわじわと大きく見開かれていく。
「僕の、お祖父ちゃん……?」
おそるおそる尋ねる。
「おお、あまりにカレリーナそっくりで思わず驚いてしまいました。カレン殿下、よう南部まで来なすった」
僕のお祖父ちゃんは潤んだ瞳でにこりと微笑んだ。
微笑みに目を細めた瞬間にほろりと煌めくものが眦から零れたような気がした。
お祖父ちゃんのその顔を見た瞬間、僕は初めて南に来て良かったと少し思えた。
「エヴァレット、雑用を言いつけてすまないが殿下を寝室までお送りしてくれないか」
「かしこまりました」
辺境伯の頼みにお祖父ちゃんが頭を下げる。
少しでも僕がお祖父ちゃんと一緒にいられる時間を持てるように辺境伯が配慮してくれたのだろう。優しい人だ。
皇族である僕の部屋とそうではないかかりつけ医のジョンさんの部屋は全然別の場所に用意されているようで、ジョンさんは執事さんに案内されていった。
「さ、参りましょう」
微笑むお祖父ちゃんに僕はにっこりと笑った。
絨毯の道が敷かれた城の廊下を歩きながらお祖父ちゃんを見上げる。
「それにしても殿下は……」
「家族なんだから、僕らしかいない時は『殿下』っていうのやめてカレンって呼んでよ! 敬語もなし!」
お祖父ちゃんが殿下と口にしかけた言葉を遮って頼む。
「よろしいのですか?」
「うん!」
にこりと笑うと、お祖父ちゃんもくすりと微笑んでくれた。
「じゃあ、カレンと呼ぼうかね」
「えへへ」
祖父との距離がぐっと縮まったような気がして、胸の中がほかほかと暖かくなる感じがした。
それから寝室までの距離、祖父と色々な話をした。
体調はどうだとか。今度家に遊びに来てお祖母ちゃんに会って欲しいとか。
どんなことを勉強してるとか。
「ああ、そういえば」
話が祖父の仕事について及んだ時のことだった。
お祖父ちゃんは何かを思い出したかのように呟いた。
「明日も中央から来る予定の人がいての」
「へー」
南部の人は僕が来た首都がある辺りの地域のことを中央と呼んでいるらしい。
「それが公爵家の嫡男で、将来領土を治める時の為に勉強をしにわざわざ此処まで来てセルフィニエ様の元で見習いとして働くというらしい。見上げた若者もいたものだ」
「へえー」
うんうんと頷く。
「私がその教育係を任されたんだよ」
「すごいねお祖父ちゃん!」
「それでその子がどんな子が聞いたんだよ。何でもまだ十三歳でね」
十三歳。奇しくもお兄ちゃんと同い年だ。
この間に誕生日を迎えお兄ちゃんは十二から十三歳になっていた。
「目鼻の整った顔立ちをしている黒髪の子で」
黒髪のイケメン。これもお兄ちゃんと同じだ。
「それで、何ととっても頭のいい子らしい!」
頭もいい! まるでお兄ちゃんそのものだ!
そんなにお兄ちゃんそっくりな人が公爵家にいるなんて知らなかったなぁ。
明日ここに来るならその人にも会えるかな。
そっと入って来たのは茶髪に白髪がちらほらと混ざった五十代後半くらいのおじさんだった。
おじさんは僕がいるのを目にするなり、ぱちぱちと目を瞬かせた。
その瞳がじわじわと大きく見開かれていく。
「僕の、お祖父ちゃん……?」
おそるおそる尋ねる。
「おお、あまりにカレリーナそっくりで思わず驚いてしまいました。カレン殿下、よう南部まで来なすった」
僕のお祖父ちゃんは潤んだ瞳でにこりと微笑んだ。
微笑みに目を細めた瞬間にほろりと煌めくものが眦から零れたような気がした。
お祖父ちゃんのその顔を見た瞬間、僕は初めて南に来て良かったと少し思えた。
「エヴァレット、雑用を言いつけてすまないが殿下を寝室までお送りしてくれないか」
「かしこまりました」
辺境伯の頼みにお祖父ちゃんが頭を下げる。
少しでも僕がお祖父ちゃんと一緒にいられる時間を持てるように辺境伯が配慮してくれたのだろう。優しい人だ。
皇族である僕の部屋とそうではないかかりつけ医のジョンさんの部屋は全然別の場所に用意されているようで、ジョンさんは執事さんに案内されていった。
「さ、参りましょう」
微笑むお祖父ちゃんに僕はにっこりと笑った。
絨毯の道が敷かれた城の廊下を歩きながらお祖父ちゃんを見上げる。
「それにしても殿下は……」
「家族なんだから、僕らしかいない時は『殿下』っていうのやめてカレンって呼んでよ! 敬語もなし!」
お祖父ちゃんが殿下と口にしかけた言葉を遮って頼む。
「よろしいのですか?」
「うん!」
にこりと笑うと、お祖父ちゃんもくすりと微笑んでくれた。
「じゃあ、カレンと呼ぼうかね」
「えへへ」
祖父との距離がぐっと縮まったような気がして、胸の中がほかほかと暖かくなる感じがした。
それから寝室までの距離、祖父と色々な話をした。
体調はどうだとか。今度家に遊びに来てお祖母ちゃんに会って欲しいとか。
どんなことを勉強してるとか。
「ああ、そういえば」
話が祖父の仕事について及んだ時のことだった。
お祖父ちゃんは何かを思い出したかのように呟いた。
「明日も中央から来る予定の人がいての」
「へー」
南部の人は僕が来た首都がある辺りの地域のことを中央と呼んでいるらしい。
「それが公爵家の嫡男で、将来領土を治める時の為に勉強をしにわざわざ此処まで来てセルフィニエ様の元で見習いとして働くというらしい。見上げた若者もいたものだ」
「へえー」
うんうんと頷く。
「私がその教育係を任されたんだよ」
「すごいねお祖父ちゃん!」
「それでその子がどんな子が聞いたんだよ。何でもまだ十三歳でね」
十三歳。奇しくもお兄ちゃんと同い年だ。
この間に誕生日を迎えお兄ちゃんは十二から十三歳になっていた。
「目鼻の整った顔立ちをしている黒髪の子で」
黒髪のイケメン。これもお兄ちゃんと同じだ。
「それで、何ととっても頭のいい子らしい!」
頭もいい! まるでお兄ちゃんそのものだ!
そんなにお兄ちゃんそっくりな人が公爵家にいるなんて知らなかったなぁ。
明日ここに来るならその人にも会えるかな。
60
あなたにおすすめの小説
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
拾った異世界の子どもがどタイプ男子に育つなんて聞いてない。
おまめ
BL
召喚に巻き込まれ異世界から来た少年、ハルを流れで引き取ることになった男、ソラ。立派に親代わりを務めようとしていたのに、一緒に暮らしていくうちに少年がどタイプ男子になっちゃって困ってます。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい
御堂あゆこ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。
生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。
地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。
転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。
※含まれる要素
異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛
※小説家になろうに重複投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる