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第二部 セルフィニエ辺境伯領編
第百四十話 初めての魔術の授業 ②
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「これが呪文です」
「ありがとうございます」
呪文の書かれた木札をバスティアンさんが差し出す。
僕は声に出さずに口だけ動かしてそれを読んでみた。
多分正しく読めると思うけれど、自信はない。
「ではまずは私が実演しましょう」
バスティアンさんが火の初級魔術を実践してくれることになった。わーい。
彼は柔らかな微笑みを浮かべ、片方の手の平を上に向ける。
「Srajs Èstraj, rütas mèntir m'èrgou.」
静かな詠唱が終わると、彼の手の平の上には小さな炎が灯っていた。
小さな火が生き物のように音もなく燃えている。
「わぁ……!」
僕は控えめに歓声を上げた。
大きな声を出したら火が消えてしまうような気がしてしまったから。
「成功すればこのようになります。熱くありませんから、恐れる必要はございませんよ」
「はい!」
「ではやってみましょうか。呪文は読めましたか?」
バスティアンさんの問いにこくりと頷く。
彼の見せてくれた実演で、僕の思っている読み方と相違ないことが確認できた。
「ではまず片手の手の平を上に向けて。利き手でも逆の手でも構いません。そちらの方がやりやすいと感じる方の手でお願いします。利き手と魔術が通りやすい手が逆だという人は珍しくありませんから」
何となく右手がいいと思い、右手の手の平を上に向ける。
「そして目を閉じて。慣れれば目を閉じる必要はありませんが、イメージが肝心ですので」
頷き、目を閉じる。
暗闇が広がる。
「手の平の上に不可視の存在がいると想像して下さい。火を司る存在……火の精霊、エストレが貴方の手の平の上で踊っている。そう思って下さい」
バスティアンさんが囁く通りに思い描く。
火で出来た赤い小人が僕の手の平の上にいる。
「では――――詠唱を」
彼の合図を聞いて、僕は唇を動かした。
「Srajs Èstraj, rütas mèntir m'èrgou.」
果たして僕の手の平の上に灯りは灯ったのだろうか。
僕はゆっくりと目を開けた。
そこには、ゆらりと小さな火が揺らめいていた。
「やったー!!!」
僕でも魔術が使えた!
喜びのあまり僕は片手でガッツポーズをしたのだった。
「ありがとうございます」
呪文の書かれた木札をバスティアンさんが差し出す。
僕は声に出さずに口だけ動かしてそれを読んでみた。
多分正しく読めると思うけれど、自信はない。
「ではまずは私が実演しましょう」
バスティアンさんが火の初級魔術を実践してくれることになった。わーい。
彼は柔らかな微笑みを浮かべ、片方の手の平を上に向ける。
「Srajs Èstraj, rütas mèntir m'èrgou.」
静かな詠唱が終わると、彼の手の平の上には小さな炎が灯っていた。
小さな火が生き物のように音もなく燃えている。
「わぁ……!」
僕は控えめに歓声を上げた。
大きな声を出したら火が消えてしまうような気がしてしまったから。
「成功すればこのようになります。熱くありませんから、恐れる必要はございませんよ」
「はい!」
「ではやってみましょうか。呪文は読めましたか?」
バスティアンさんの問いにこくりと頷く。
彼の見せてくれた実演で、僕の思っている読み方と相違ないことが確認できた。
「ではまず片手の手の平を上に向けて。利き手でも逆の手でも構いません。そちらの方がやりやすいと感じる方の手でお願いします。利き手と魔術が通りやすい手が逆だという人は珍しくありませんから」
何となく右手がいいと思い、右手の手の平を上に向ける。
「そして目を閉じて。慣れれば目を閉じる必要はありませんが、イメージが肝心ですので」
頷き、目を閉じる。
暗闇が広がる。
「手の平の上に不可視の存在がいると想像して下さい。火を司る存在……火の精霊、エストレが貴方の手の平の上で踊っている。そう思って下さい」
バスティアンさんが囁く通りに思い描く。
火で出来た赤い小人が僕の手の平の上にいる。
「では――――詠唱を」
彼の合図を聞いて、僕は唇を動かした。
「Srajs Èstraj, rütas mèntir m'èrgou.」
果たして僕の手の平の上に灯りは灯ったのだろうか。
僕はゆっくりと目を開けた。
そこには、ゆらりと小さな火が揺らめいていた。
「やったー!!!」
僕でも魔術が使えた!
喜びのあまり僕は片手でガッツポーズをしたのだった。
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